第三話
「酷いよ、先に行くなんて!」
可愛らしく頬を膨らませてどこまでもついてくる幼馴染み
しかも腕を絡めてくる…ぶりっ子の極地!
顔が引き攣りそうになるのを抑えて言う
「ごめん!でも由乃楽しそうだったし…」
さぞかし男子に囲まれて逆ハーライフ満喫してたんじゃないですか?なんて思っても言わないが。
由乃は得意気に、嫌な笑みを浮かべる。
それは私の劣等感を煽るのに十分だった。
由乃は庇護欲をそそるような小柄で華奢な容姿をしているので男子からは好かれているが、女子からは嫌われている。男子の視線を独り占めしているのだから当然だろう。だからといって彼女に反発する者もいない。彼女を敵に回すのは男子から嫌われることと直結するからだ。
「おはよう」
そこで声をかけてきたのは最近私たち…というより、「由乃に」挨拶してくるようになった校内でもイケメンと有名な男子生徒、確か、高野健太という名前だっただろうか。
確かに彼の容姿は群を抜いている。整った顔も、スラッとした長身のお陰でより一層目立つようだ。
「あっ、高野くん!おはよー!」
由乃が勢いよく前に進み出る。その顔はほんのり赤く染まっている。もしかしたら、彼のことが好きなのかもしれない。
由乃と高野くんが並んだら美男美女じゃないか。絵になるな、お似合いだな、なんて思い、二人を眺める。
由乃に彼氏はいない。可愛いし、結構な頻度で告白されてるはずなのに、今まで一度も特定の男子と一緒にいるところを見たことがないし、思えばそういった恋愛話もあまり二人でしたことがなかった。
でも実は高野くんが本命だったりするのかもしれない。
彼は由乃の顔を見て、なぜか一瞬残念そうな顔をする。
「あっ、そういえばさっき吉田くんが高野くんのこと捜してたよ?」
「えっ、本当に?どこ?」
「多分まだ玄関の近くにいると思うけど…」
「そっか、ありがとう」と彼は立ち去る。一瞬私と視線が交わった彼は心無しか何か言いたげな表情をしていたような…




