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8話:我慢の限界

「ねえ遙、噂のことなんだけど……本当なの??」

「え??噂って??」

「遙が彩芽を陰でいじめてるっていう噂……なんだけど……」

 遠くから近づいてくるような大きい音でキーンと耳鳴りがした。そう言って紫苑が指さす方向には、彩芽が何人かのクラスメイトと話をしている。私は嫌な直感が走り、急いで机の間を駆け抜け、話を聞きに行く。

すると彩芽がクラスメイトに自身の腕にある紫になったあざを見せつけながら、こう言った。

「遙が私を、みんなの見えないところでいじめてくるの……」

 私はその時、なぜか一気に動悸が早くなり、呼吸がしにくくなった。それと同時に自身の心から感じ取った感情は恐怖1割、悲しみ1割、そして8割の怒り。私は考えるよりも先に口が動いていた。

「彩芽!!どういうこと!?」

「遙!?や、やめて……お願いだから叩かないで……」

 そう言って彩芽は泣きそうな顔でその場に頭を抱えてしゃがみ込んでしまった。そんな彩芽を見て、クラスメイトたちは小声で「これやばくない??」「先生に言ったほうがいいんじゃ…??」などと言っている。

 そして辺りを見渡すと、同じ教室にいる他のクラスメイトたちも、こちらを見ながら、何やら小声で話をしている。ところどころ「噂」という単語が聞こえるため、おそらく紫音が言っていた例の噂の話をしているのだろう。すると、何かを察した彩芽と話をしていたクラスメイトたちが、声を上げる。

「彩芽ちゃん嫌がってるじゃん!!やめてあげてよ!!」

「遙ちゃんがそんなことする人だとは思わなかった……」

 私は必死に否定するが、クラスメイトたちは彩芽の腕にある紫色のあざを指さす。そして「これが何よりの証拠だよ」と言って、聞く耳を持たない。

 私が助けを求めようと紫苑の方を見ると、目があった瞬間目を逸らされた。彩芽を囲っているクラスメイトたちも彩芽を心配している様子。彩芽は俯きながら、自身を心配してくれているクラスメイトに泣き縋っている。

「怖い……今まで言うなって言われてきたけど……もう、我慢できない……」

 彩芽のその言葉を聞いた瞬間、今まで聞こえたことのない声量で耳鳴りがした。それと同時に私の心の中で何かがプツンと切れた音がした。そして私は拳を強く握り、震えた声でこう言う。

「我慢できないのは、こっちだよ……!!」

 その言葉にどれだけの想いが詰まっていたのか、気がついたら涙が頬を伝っており、私は大声で言葉を続ける。

「私は!!彩芽をいじめてなんかない!!むしろ私は!!来る日も来る日も!!彩芽に嫌なことしかされない!!」

 教室は静まり返って、全員の視線が教室のど真ん中にいる私に集まる。ついさっきまで

教室の方がうるさかったのが、今では廊下の方がうるさくなるのを感じる。そんな中、私は構わず大声で言葉を続ける。

「私が彩芽に何をしたの!?言える!?言えないでしょ!!だって彩芽のそれは嘘だから!!私は何個でも言えるよ!!だって本当に嫌なことをされてたからね!!」

 そして私は彩芽の机を持ち上げ、できる力を振り絞って遠くへ投げる。机が床に落ち、大きな音がした瞬間、クラスメイトが悲鳴をあげる。私はそんなことは気にも止めずに今まで言い止まった言葉を続ける。

「彩芽が私のことを道具として見てるの知ってるんだから!!私が嫌で嫌でしょうがないことも、やめてって言ったのにやめてくれたことなんてなかったし!!本当に!!本当に……」

 そして彩芽の椅子を手に取り、彩芽に向かって投げようとした瞬間、誰かが私の腕を掴んだ。掴んだのは真剣な顔をした担任の先生だった。そして次々と隣の教室にいた先生たちがやってきて、私を取り押さえた。どうやら危険だと思った紫苑が、近くにいた先生を呼んできたらしい。

 その後私は保健室に連行された。私は保健室のベットに座らされ落ち着くように言われた。先生たちは小声で保健室の外で何かを話している。内容はきっと私のことだろう。

正直そんなことはどうでもいい。教室で、大声で怒鳴ってしまった。クラスメイトたちは怖がって、もう私に話しかけてこないだろうか。紫音にも、嫌われてしまっただろうか。そんな罪悪感を抱いていたら、担任の先生が保健室に入ってきて、私が俯いて座っている席の前にしゃがむ。

「遙さん、彩芽さんは遙さんにいじめられていると言ってたけど、本当はどうなの??」

 そう言った声は少し暖かかった。しかし少し顔を上げて先生の顔を見ると、目は真剣な眼差しで私を見つめている。私は泣きそうになるのをグッと堪え、声を振り絞る。

「……私は、彩芽の嫌なことなんてしてないです」

 そう言った私の声は、誰が聞いてもわかるようなか細い声だった。その言葉に担任の先生は静かにうなづき、その場を後にした。本来ならもっと言いたいことがあるが、いざ先生を前にすると恐怖で言葉にできない。この恐怖がどこからくるのか、私にはわからない。

 次の日、私の周りには人が紫苑以外の誰一人として寄らず、静まり返っていた。自分から近寄れば避けられ、話にならない。まあ無理もない。昨日あれだけ教室で暴れ回ったのだから、怖がられて当然だ。だがしかしこれはいいことだとも言える。なぜなら、彩芽も寄ってこないからだ。彩芽は他のクラスメイトたちと話をしている。クラスメイトもよってこないが、同時に彩芽も私に寄ってこないのならそれで別にいい。そっちの方が楽だからだ。

 その日は紫苑と一緒に遊んだ。周りに避けられているのは嫌だが、仲の良い子と遊べる上、邪魔されないというのはとても嬉しい。

「遙、クラスで避けられてるけど大丈夫??」

「うん、正直どうでもいい」

「え??」

「だって、彩芽が寄ってこなければそれでいい、他は何もいらないから」

 紫苑は心配そうな顔で私を見つめる。しかし私は本当にこれでいいのだ。彩芽がよってこないなら、他は何も望まない。望んだら逆に不幸が降りかかりそうだからだ。運命とか、神様とかは信じている。けど私はきっと神様に嫌われているだろう。なぜなら彩芽と出会ってしまったからだ。本当に神様に好かれているのなら、私は彩芽とは出会わなかっただろう。それなのに出会ってしまった。つまり私は神様に嫌われている。そんなことを思いながら、私は心配そうに私を見つめている紫苑に笑いかける。

「私は大丈夫だよ、紫苑。ほら、時間はたっぷりあるんだから、一緒に遊ぼう」

「う、うん」

 なんていい日なのだろうか。彩芽が寄ってこない、それだけでも最高なのに、その上紫苑と遊べる日が来るなんて。不幸中の幸いと解釈する者が多いだろうが、私の中では誕生日プレゼントをもらった日くらいのラッキーだ。そんな幸せな日々を、数日間過ごした。

〜9話の宣伝〜

どもども、ろったりかです♪

いやぁー……遙が心配ですねぇ……彩芽も今後どう動くのでしょうかね?

気になるのなら、次の話へ行くべし!

ぜひその目でご覧ください!

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