第20話:某日、中間地点の駅近く、カフェにて_4
「それでですね、やっぱり具体的にどんなことが起こったのか、気になる人もいると思うんですよね。実際気にしてるよ! って書いてくださったた方もいらっしゃいましたし。なので、今回は匿名希望さんにご連絡して『身バレに配慮してもらえるなら、脚色して話しても良い』という許可を得ました!」
焦らず、順番に話をしていく。
「えーっと『脚色ってどういうこと?』って思われるか方もいるんじゃないかなと。やっぱり、実際に起こったことをそのまま話すと、全体的にかなり個性的な内容なので、話を知ってる人には、わかっちゃう可能性が高いんですよね。だからこう『滑り台の上から落ちた』を『ジャングルジムの上から落ちた』とか『財布を落とした』を『スマホを落とした』くらいには言い換えさせていただこうかと」
完璧に程度が再現できないのはわかっている。
そこはリスナーも目を瞑ってくれるだろう。脚色と言ってしまっているから、話された内容よりも実際には何が起こったのだろうかと想像するに決まっている。
「それであれば良いとのことなので、そこは匿名希望さんの希望に沿いたいと思います。自分の立場に置き換えたら、やっぱり怖いもんね。身バレとか特定って」
私は喋りながら一人で頷くと、なーこさんに許可をもらった内容が書かれている原稿を手に取った。
「それではいきますね」
ふぅー、と深呼吸して、私は第一声を発した。
「全部で、今のところみっつあります。ひとつは、一番最初にお話しした、習い事の件です。それは、ご本人から聞いた話……というか、ダイレクトメッセージそのままなので割愛します。アーカイブを以下略って感じです。それ以外をお話します」
マイクをミュートにしてから咳ばらいをひとつして、一口麦茶を飲んでから、私はまたマイクをオンにした。
「ふたつめの話、いきましょう。……不思議ですよね。コミュニティができると、元あるコミュニティを守ろうとするのか、異端者を排除する」
私の話がきちんと伝わることを祈りながら、原稿を順位追っていった。
「皆さんが子どものころって、転校生ってどういう扱いでしたか? 私はよく、転校生が隣の席になったので、男女問わず良く話して授業後も一緒に遊んでましたね。クラスに転校生、毎年来ていた気がします」
ここは、何の変哲もない話だ。
「でもほら、こういう話もありませんでしたか? 『転校生はいじめられる』って。私は神に誓っていじめなどしてませんよ。趣味の合う子も多かったし、小学生のころはアクティブだったから、男子も女子も一緒に公園で遊んだりしてました。そこにはまらない子、いませんでしたか? 人と違う場合、それを排除しようとする。異端者を排除と言いましたが、つまりはそう言うことなんです。転校生は、今ここにいる人と違う。他のクラスで、他の学年であったんですよ。転校生に対するいじめ」
矢継ぎ早に放したが、ここで一回深呼吸する。重たい話だから。
「――匿名希望さんのお子さんは、それに当てはまりました」
私は、今も昔もいじめ反対派だ。
『いじめられる側にも問題がある』という話を聞くが、基本的にそうは思わない。それが当てはまるとするならば『理由なくいじめていた側がいじめられる側に回った』場合だ。
因果応報。
私は、子どものころ『何かウザイ』『何かキモイ』『アイツムカつく』と、喋ったこともない人間から言われる立場だった。ヒソヒソ話の対象で、違うクラスの子からクスクス笑われた。
これをしていた人たちがいじめられたら、絶対に思ってしまうだろう。『いじめられる側にも問題がある』と。
ちなみに、当時友達は別にいたし、いわゆる陽キャと呼ばれるような友達もいた。写真を見ても少なくともキモイ見た目はしていないと思えるし、その人たちに嫌われるようなことをした記憶はない。完全なる言いがかりだが、それを言っていた子たちはもう言っていたことすら、下手したら私がいたという事実すら、忘れてしまっているのだろう。
「自分がそのいじめを受けた子の親だとして、神様に何を祈りますか?」
私はコメントが書かれるのを待った。絶対に、反応をくれる人はいる。
「……うんうん。『いじめっ子への天誅』『子どもがいじめられないことを祈るよ』『呪う、相手の子を』『いじめっ子がいじめられればいいのにって思うかな』『いじめがなくなって楽しく通えますように』……コメントありがとうございます。そうです、そういうことなんです。匿名さんも、それを祈りました。その結果、いじめはなくなりましたし、言い方あってるかな? 相手の子には天誅が下りました」
私の質問に対し、さまざまなコメントが流れていく。
見ていくと『ざまぁ』『いじめ終わって良かった!』『楽しく過ごせますように』といった内容が大半だ。『偶然が過ぎる』『それはそれで急に怖い』といったコメントもあるが、否定的な内容は今のところ見られなかった。
あえて、いじめていた側の子に起きた天誅の内容は話さなかった。何が起こったのか、詳細が実際わかっていないということもあるが、一応相手が子どもであること、噂ででもこの話を知っている人がいる可能性を考慮してだ。話自体、大まかには間違っていない。




