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BLUE in the ガールズバンド  作者: あまだれ24
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第2話 待てど暮らせど


蘭子さんの失踪を知らされた日は待てど暮らせど、凛子さんからの連絡はついに来なかった。


凛子さんから新しいメッセージが届いたのは翌日の夜の事だ。


『やっぱり直接会って説明する。今週の土曜か日曜の昼空けといてくれ』


「えっ、なんだよそれ!」


LINEで教えてくれるんじゃなかったのかよ…


私は色々聞きたいことが渦巻いてたけど「ぐぐぐ…」と歯を食いしばって、仕方なく『わかりました』と返した。


『じゃあ土曜で』と続けて送る。


『じゃあ土曜いつものコメダで。時間はまた連絡する』

『了解です』


「あー!もーっ!」


そう叫んで私はベッドの上でジタバタした。八つ当たりでスマホを投げそうになって、けどギリギリで堪える。


「なんなんだよぉ凛子さんのヤロー!」


この2日で心配と不安が苛立ちに進化して胃がズキズキと痛んだ。でもどこにも気持ちのやり場がなかった。


蘭子さんが突然失踪して大変なのは分かってるけど、凛子さんもマイペースすぎる。


我が道を行くのは凛子さんの魅力だ。そういう所は凄くロックだ。

でも、こういう時ばかりはそのマイペースさが腹立たしくなる。


「春香、なに叫んでるの?もう10時よー」

階段の下からお母さんの声がする。


私はベッドから部屋のドアに向かって、「わかってるよ!」と返した。


荒っぽい言い方になる。これじゃただの八つ当たりだ。17にもなってみっともない。


そんな事は自分でもわかってる。わかってるよ。


でも不安で不安で落ち着かないんだ。


ベッドの縁に座り改めてLINEを開く。


何度確認しても、今朝蘭子さんに送ったメッセージは既読にすらなっていない。


いったいあの蘭子さんに何があったんだろう。


実家が宝塚市の高級住宅街にあって、お金持ちで、お嬢様ぜんとしていて、細く白い手で流麗に鍵盤を操る蘭子さんを思い出す。


クラシックでもロックでも、何でも弾きこなす天才的なキーボーディスト。


私たちのバンドに不可欠のソングライター。


そして、信じられないくらい天然。


それが蘭子さんだ。


その時、LINEの着信音が鳴った。慌てて見る。


するとベースの葵さんからだった。


『知らない』


今朝送った質問への返答だった。蘭子さんの行方を知らないという事だ。


素っ気ない返答だったけど、葵さんは嘘で誤魔化したりしない。

周りが気まずくなるくらい正直に物を言う女性だ。


その葵さんが知らないと言うなら、本当に何も知らないのだろう。


『そうですか。ありがとうございます』


そう返すとすぐに葵さんからショボーンと落ち込んだ猫のイラストのスタンプが届いた。


どうやら葵さんも心配しているみたいだ。


よくサイコ扱いされる葵さんとは言え、2年以上一緒に活動してるメンバーが行方不明なんだ、そりゃ当然か。


スマホをベッドの上に投げ出して目を閉じ、仰向けになってハーッと深いため息を吐いた。


「土曜日かぁ…」


蘭子さんの事は凛子さんに直接会って聞くしかないようだ。明日は金曜日。


明後日までこの不安と苛立ちはどうにもなりそうになかった。


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