.96
リョウさんはまだ思考が現実とリンクしていない。呆然としてる。
[いったんエクスコとアパートへ行く。リョウは部屋から絶対に出ないで]
えっちゃんは、コースケがいつの間にかリョウさんを、呼び捨てで呼んでる事に今更気付いた。
自分もまだ完全に現実とリンクしていない。
呼び捨てや命令な口調は、現実を見れない、見えてない、見たくない相手に有効。指示されると楽だと感じてしまうから。
部屋から二人出る。
[一人にした方が整理出来るからな]
コースケがえっちゃんに言った。
[私達って何なの?]
エレベーターでえっちゃんは質問する。
[俺達は違う世界から来てるんだ。エクスコが思い出せない限り詳しくは言えないけどな。ワケはちゃんとある]
えっちゃんの口も顔も動かなかった。
それ以上会話はなかった。
えっちゃんは自分が他の人と違う事は感じてた。だが信じたくない気持ちが強い。
[利用するのはなんでも利用して解決しよう]
コースケの言葉にえっちゃんはうなづいた。
ホテルの裏口から出てタクシーに乗る。
[付いてきてるね]
[うん]
二人ともすぐ気付いてた。リョウさんに張り付かれるならまだ私の方が。えっちゃんはそう思ってコースケに見張られてる事を言わずタクシーに乗ったのだ。コースケも同じ考えだったと思う。
尾行。白い軽のバン。適度な道に入り降りる。
[エクスコは弱いふりを。わざわざこっちの武器を見せる事はない]
コースケの言葉にうなづく。
スーパーに入りカップ麺と飲料水を買う。レジ会計中に視線を感じた。車から降りて尾行。気付かないフリをする。
そこからアパートまで三十五分間歩いた。尾行は二人。チラリと盗み見るも一人は中年。ヤクザなイメージは無い。もう一人は若かった。革ジャンを着てる。弱い者に強くなれ強い相手に尻尾を振るタイプに見えた。運転手なのかもしれない。
[二人一組の尾行か。金は使ってるんだな]
コースケは小さな声で言った。えっちゃんはコースケは自分と違う目線で見てるんだな。と思った。自分の考えてた事は言わなかった。
コースケは全体的な視野で物事を見ている。私はあの二人の事だけを見ていた事に気付いたから。




