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移動はタクシー。マーロンにミヤビ達の生活費として百万円渡した。お金は湯水のように出ていく。
もし無かったらどうしてただろうか。
そんな考え事をしてるうちにホテル近く。
リョウさんの居るホテル通りの一本裏の道で降ろしてもらった。
自分の気配を消してアンテナを広げる。
注意しながらホテル周りを歩き観察する。逃げる場所。どこから逃げたらいいのか。雑居ビルの通路から更に向こうの裏通りに出る場所を知る。
近くのお店の閉店時間を頭に刻む。
客待ちのタクシーの止まってる場所を記憶する。
そこまでする必要はないかもしれないが、し過ぎても損はしない。
忘れた頃に着信の振動が鳴る。知らない電話番号。無視する。
ミヤビ達からの連絡は必ずライン。
ふと思う。この事をすでにユダは知ってるのか?と。
この事を知ってるのは、リョウさん達と向こうの仕手集団だけだ。ユダが知ってるのは、エクスカリバーとリョウさん、私が絡んでる事。
ひょっとしてユダが絡んでる?
でも絡む理由が分からない。
あり得ない。とえっちゃんは答えを出した。
ホテルのロビーでリョウさんが待っていた。
リョウさんは足早に近付きえっちゃんを抱きしめる。えっちゃんは謝る。リョウさんは、私の方こそ巻きんでごめんなさい。と謝った。
部屋へ戻る。ダージリンティを二人で飲む。
やっと落ち着いた。
リョウさんがバスタブにお湯を入れた。えっちゃんは素直に入る。リョウさんは入ってこなかった。
風呂から出たのは朝方の四時過ぎ。
外はまだ真っ暗。雪がまだチラついて寒そうだが部屋は暖かいどころか暑いくらい。
リョウさんがソファに座り[眠い?眠いなら起きてから話そうか?]と聞いた。えっちゃんに眠気はない。首を横に振る。
[飲む?]
リョウさんは珍しくアルコールを呑むつもりだ。えっちゃんが未成年と分かってるのに聞いた。一緒に呑みたいのかと思い[少しだけ。かなり薄くで]と答えた。
リョウさんはダージリンティに数滴だけ垂らし、自分のコップには適量を注いだ。机に置いたボトルにはブランデーと書いてあった。
リョウさんはコップを少し上げて乾杯をし、半分ほど一気に呑んだ。少し顔を歪ませたのでリョウさんはアルコールは呑めない方だと分かった。
えっちゃんもダージリンティを一口呑む。ブランデーとダージリンの香りが混ざり、より濃厚な香りが鼻腔を刺激した。
リョウさんは残ったブランデーを飲み干した。
[美味しいんだか美味しくないんだか分からないわね。値段だけは高いんだけど]
と冗談を言い、またブランデーを注いだ。




