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リョウさんが目覚まし時計の音で目覚めた。
[眠いわね]と言いながらも、すぐに起き出す。
ルーム電話で何かを注文。着替え始める。
えっちゃんはまだバスローブのまま。
[換えの服無かったわね]
とクローゼットを探り出す。取り出したのは上下の淡黒のスウェット。
[とりあえずこれ着て]
すぐにチャイム。
三人の女性。
浴室の掃除。ベッドメイキング。
机にティーポットやサンドイッチ。新聞の束が置かれる。洗濯物カゴ。ゴミ箱が交換される。
十分かからずに誰も居なくなる。
[今日は部屋で食べましょ]
リョウさんは言って座る。具がたくさん挟んであるサンドイッチ。種類も多い。栄養を考えてあるのだろう。二口サイズのコップにオレンジジュースまである。紅茶カップとタオルは温かった。
新聞を見ながらサンドイッチを口に入れてくリョウさん。ごく自然で当たり前のように。
お金を持ってると出来る生活。
お金が無いと出来ない生活。
食べ終わり新聞を読み終わったリョウさんはパソコンを次々と開く。
えっちゃんは手持ち無沙汰。リョウさんが、電話でもしときなさいよ。と言ってくれて、ミヤビ達に電話する。
ミヤビは変わった事はない。と言った。ケイナやリン、ケンに代わる。誰の口調にも違和感は感じられない。
[なにかあったらいつでもいいから電話するのよ]
と言い携帯電話を置いた。
ホテルの目の前のブティックで下着と服を買う。えっちゃんが払います。と言うのをリョウさんが止める。
[値段高いのよ。その代わり私が選んでいい?]
リョウさんは微笑んだ。
一目で暖かいと分かるニットのセーターとお揃いのニット帽。ネイビー色のデニムパンツ。痩せ過ぎてるから、とロールアップ。靴もそれだと合わないからとハイカットのスニーカー。リョウさんは買った。ついでにこれも似合うわ。とバッグまで。試着を二、三回してそのまま着る事に。
えっちゃんはファションとは無縁。
安く目立たないような服であればなんでとよかった。
リョウさんが満足げに微笑む。
[素敵よ。とても]
えっちゃんは感謝の言葉しか返せなかった。
タクシーでスタジオへ。その道中に、もう少ししたら私の服が届くからそれ全部あげるわ。とリョウさんは言った。お金払います。の言葉に、サンプルや試着用とかのだから気にしないで。と言われて何も言い返せない。
段ボールでくるから住所教えて。と言われる。持って帰りますの返事に、四箱はあるわ。と言われる。好意を無下にも出来ず教えてしまう。
リョウさんは何でもオープンにしてる。私だけ隠すのは悪い気がした。
住所を教える後ろめたさを自分に、そう納得させた。




