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何かあれば、コースケに連絡を。とえっちゃんはケイナ達に言い、コースケと出かける。
帽子を深く被りマフラーをアゴあたりまであてる。
マフラーするには早いが、寒さに弱い。と周りは思ってくれるだろうし、ファッションの一つとして捉えてもくれる。
久しぶりの電車。成人してるコースケの存在はやはり強い。スーツ姿で真面目なサラリーマンに見える。
[身分証とかあるの?]
[偽物だけどね。あるよ]
周りに気付かれないようコースケは小声で答えた。
[やっぱり高い?]
[高いけど俺はタダ同然]
[私達のも作れる?]
[未成年は親の身分証が必要だからな。作っても親が居ないんじゃ無意味だね]
えっちゃんは何も言えなくて黙る。
電車の窓からビルやマンション、家屋の景色が次々と流れ去る。
大きなマンションのベランダ。その一つ一つに人が居て生活してる。様々な色の家の屋根の下にも。その中の一つにえっちゃん達が暮らしている。学校にも行かず、外にもあまり出ず、隠れるように。
[降りるよ]
コースケの声でえっちゃんは我に返る。
悲観しても楽観しても現実は変わらない。
着いた先は住宅街の中の一軒家。ありふれた玄関。築も旧いせいか他の住宅に馴染んでる。
玄関にサイズの違う複数の靴。何人かが居る事にえっちゃんは気付く。
[皆、お金は持ってる]
コースケが靴を脱ぎなから言った。
部屋には四人の男達。
[リョウさんは?]
[買い物。もう帰って来る]
二部屋の仕切りを外した奥の方の部屋にモニターがいくつか。床には何本もの電気コードが這ってある。手前の部屋には机とソファー。
[エクスコたんだ]
[すげー]
三人の男はえっちゃんを見てそれぞれ感嘆の声を出す。
[ニル、オルカ、カラクリだ。奥にいるのがマトン。もう一人居るけど今日は居ない。本名は内緒なんだ]
コースケは一人ずつ紹介する。えっちゃんは一人ずつに頭を下げてく。
[これならいけるね]
男の声に二人が賛同する。
[マトンも来いよ]
パソコンの前に座ってた巨体な男が立ち上がる。チラリとえっちゃんを見て目を逸らす。
[うまくいくだろ?]
ニルがマトンに声をかける。マトンは何度もうなづく。
[ちゃんと見ろよ]
オルカがマトンをからかう。
[み、見たよ]
巨体に似合わず小さな声で言ったマトンの様子に皆が笑う。全員の仲は良さそうだ。それにお人好しっぽい。えっちゃんは安心する。




