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えっちゃんは願ったが願いは叶わず。ケイナとリンは車の中に居た。
マーロンはケイナとリンを連れて来ていた。
[さて、これはどう言う事かしら]
女は言った。スーツ姿の男達が剣呑な空気を醸し出す。
えっちゃんはマーロンを見る。マーロンの目にはアザ。口に血。何回か殴られたのだろう。
えっちゃんは唇を噛む。予定変更する。
迷ってる暇はない。
[私の仲間なんです。心配してついて来たんです]
真剣な眼差しで女に訴える。女は思案してる。ケンに言う。
[本当に?嘘ついたらどうなるか分かるでしょ]
冷たい声だった。ケンに全てがかかってる。
[ケイナとリン…皆仲間だよ]
ケンは言った。女が口を開く前にリンがケンの名前を呼び、ケンがリン。と呼びあった。
その声は真実の声。あとは女の心に届くかどうか。女が口を開く。
[まぁいいわ。この事は何も無かった事。どこかで聞いたら]
女はそこで口を閉ざす。充分過ぎる程、効果的な言い方。その後は話さない方がいい。恐怖が勝手に想像を肥大させていく。
もし話したらどうなるのか。殺される想像は容易。そこから飛躍する。どう殺されるのか。拷問されながらなのか。畏怖の妄想は止まらない。熱湯をかけられるのか。皮膚を削られながら殺されるのか。と。
えっちゃんもマーロンも強くうなづく。
バンに乗っていたマーロンの仲間とケイナとリンが降ろされる。
女もスーツ姿の男も振り返もせず車に乗り去って行く。
いつの間にかセミの声が止んでいた。




