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コースケとミヤビはアパート。えっちゃんはケンと出向く。ケンと手を繋いだまま。片方の手にはスーツケース。中にユダから預かった小箱。ダイヤの指輪。
トンネルの向こうには誰も居ない。がマーロンは必ずどこかに隠れているはずだ。
高架線の下の空き地の入り口で待つ。
時計は一時三十分。そろそろだ。
ケンは一言も言わない。えっちゃんも話さない。二人手を繋いだまま。
陽射しが暑い。電車が来て去って行く音。遠くからかすかに踏切の音。蝉の声。
黒いバンがゆっくり静かに近づく。えっちゃんは空き地へ入る。その入り口を塞ぐようにバンが止まる。少しして中から黒いスーツ姿の男が二人。辺りを探る。一人が右手をあげるとバンから女性が一人出てきた。
三十代前半。ボスの嫁か愛人か娘か。
タイトなミニスカートを履いた女は草むらが細く白い足にまとわりつくのもかまわずにえっちゃんの方へやって来る。ケンが強くえっちゃんの手を握る。えっちゃんは握り返す。
[大丈夫。渡すだけだから]小声で励ます。
[渡したい物があるって]
女は言った。えっちゃんは、はい。と答える。が女は少し顔を横に振った。
[名前は?]
女はケンを見て言う。えっちゃんではなくケンと話をするのだろう。
より幼い方が嘘を見抜きやすい。
[カワシタケンジ]
ケンは言った。
[本当の名前は?]
ケンは中国名を名乗った。女はしゃがみこむ。ケンと同じ目線。
[福建?]
ケンは質問に一瞬たじろぐもうなづく。
女はケンの顔に近づけケンの耳元で小声で何かを言った。それからケンの頭をなでた。
[出して]
感情のこもらない声で女は言う。えっちゃんはケンにスーツケースを渡す。ケンが中から小箱を渡す。
[誰から渡された?]
ケンはえっちゃんの顔を見る。女がえっちゃんの顔を見る。
[チェンロウって言う人。中国に帰る前にと]
ユダに言われた通りに言う。
[もう出たのかしら]
女の問いに首をかしげる。分からない。聞いてない。
[どんな人だった]
真実かどうかの確認。
[かなりやつれてました。首に龍と丸い水晶のネックレスを付けてました]
さも思い出すような言い方でえっちゃんは答えた。
女は無言だがそれ以上聞かなかった。合格。
もう一台同じ黒塗りのバンが、止まってたバンの横に止まる。中からマーロンが乱暴に降ろされる。隠れてたのを見つかり捕まったみたいだ。
ここまでは、えっちゃんの予定通りだった。
ケイナとリンは居ないで。
えっちゃんは祈った。




