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えっちゃんは、あらゆる想定を考えながら仕事するが、どちらの仕事も忙しかったので考える時間がなかった。暇だと悪い事ばかり考えてしまうかもしれなかった。もし現れなかったら。もしリン達が酷い事されてたら。もしケンが拐われていたら。もし。。
仕事帰りの朝方、ユダの店に寄るがドアの鍵は閉まっていた。ミルキークイーンにも寄ったのだが、やはり閉まっている。
何かあれば連絡が来るはずだ。えっちゃんの仕事先は教えてある。アパートの場所も。
アパートから少し離れた車の中で人の動き。見張り。構わずアパートへ。
車からは出てこない。アパートの窓から白いロープ。何も起きてない証。
えっちゃんはホッとする。
部屋。ケンは寝ていたがミヤビは起きた。
[寝れた?]
えっちゃんは言った。ミヤビはあいまいにうなづき、言う。
[姉ちゃんは寝た方がいいよ。起こすからさ]
えっちゃんは横になって目を瞑る。揺らされ起きる。一分くらいと思ってたがもう昼だった。ケンは起きていた。寝た気はしなかったが眠気は酷くなかった。
[表の奴らは居なくなったよ]
ミヤビの声で脳がクリアになった。
[一時過ぎだよね?]
ミヤビが確認の為に言った。えっちゃんはうなづく。
[コースケが部屋にいるよ。起きたら会いたいって]
ミヤビが言う。えっちゃんは考える。が選択の余地は無い。会いに行く事に。
三人でコースケの部屋に。廊下に出た時にコースケのドアが開く。
[待ってたよ]
[ご迷惑かけます]
えっちゃんは丁寧な口調で言った。
部屋にはカップ麺とホカ弁があった。
[皆の分もあるから]
と、コースケはカップ麺にお湯を注ぐ。四個。
今日の出来事は既にミヤビがコースケにほとんど話をしたらしい。
[スーツケースがある]
コースケは言い、ミヤビとケンにホカ弁の入った袋を渡す。二人はえっちゃんを見る。えっちゃんはうなづく。二人は同時に袋から弁当を取り開け出す。どのオカズがいいか品定めを始める。
コースケとえっちゃんは、食べ始めたミヤビとケンからさりげなく離れて話す。
[調べ足りなかったけど、湖南省だ。かなり大きいグループだ。ここまで出向くのは滅多にないぞ]
コースケは声をひそめて言った。
中国マフィアの一グループ。でもえっちゃんは誰であろうが関係ないと思った。
[バレたらヤバい。本当に大丈夫なのか?]
コースケの心配。
えっちゃんはその人達を利用する。騙しきる。筋は通る話。渡すのをマーロンに見せるだけだ。そして出来れば…。
[食べようよ]
ケンの声で食事に加わった。えっちゃんは渡されたホカ弁をミヤビに渡す。カップ麺だけで充分。ミヤビはケンにメインのオカズを渡し、残りを口に放り込み始めた。




