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向こうも馬鹿ではない。目的はお金。搾取だ。プライドとかくだらない事は譲る。
アパートの裏の駐車場。ここなら人目に付きにくい。えっちゃんは男達と向き合う。
[月に30万払いな。無理なら俺が稼がせてやるからよ]
リーダーは即座に本題を言ってきた。
[それで私達には何の見返りが?]
[他の奴から守ってやるぜ]
[警察からも?]
えっちゃんは即座に言い返す。
[なら300万だな]
相手も即答する。守る気などないのが分かる。
沈黙。向こうが口を開く瞬間にえっちゃんは話す事に決めてる。機先を突く。それまで我慢比べ。睨み合い。
リーダーの男の口が開く。
[明日]
えっちゃんは言われる前に素早く一言だけ言った。
[あ?]
怪訝な顔つき。えっちゃんが会話の主導権を取る。
[明日一千万円。それで手をうたない?]
えっちゃんは嘘をつく。
[ほー。大きく出たな。だから怖がってないんだな]
リーダーは納得いったような顔つきで言う。充分信憑性はある。
[二千万だ]
リーダーも負けてはいない。嘘だと思い直す。信じないのは当たり前。もしくはまだ他に何か隠し球があるのかもしれない。と。余計な思考が思い浮かぶ。錯乱させる。考える事が多くなればなるほど一つ一つの思考は浅くなる。
[名前は?]
えっちゃんは聞く。
[チョウサンリシ(張三李四)]
男はにやけて言った。周りの男達がニヤける。おそらく偽名。えっちゃんは表情を崩さない。
[マーロン(馬龍)だ]
リーダーが中国語の発音で名乗る。
[聞いた事ないってか]
呆れた顔でマーロンが言った。裏社会。この界隈では少なくとも有名なのだろう。もしくは親が有名なのかもしれない。
[親の七光り?]
えっちゃんは言ってみる。
[居るわけねぇだろ。馬鹿が]
吐き捨てるようにマーロンは言う。一瞬だけマーロンの瞳の奥が濃くなる。
やはりこの男は残留孤児。
えっちゃんは思うものの、私には関係ない話。
[なぁ明日に一千万入るんだよな?]
不意に威圧な口調を諭すような口調に変えてきた。やはり一千万円の魅力は恐ろしい程効果がある。
[明日ね]
えっちゃんは答える。
[リンてガキが居るだろう。そいつを預かる]
[嫌よ]
マーロンがまだ話してる最中に断る。
[さらってもいいんだぜ]
マーロンの目は冷たい。本気。マーロンも必死なのだ。遊びではない。生活がかかってる。




