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公衆電話からホテルへ遅刻する旨を伝える。休みたかったがこの時間からでは休めなかった。走ってアパートへ向かう。何も良い案が浮かばない。ずっと隠れているわけにもいかない。殺す?殺した遺体はどうする?嫌な考えが頭に浮かぶ。えっちゃんは走るのを辞めた。どうかしてる。何故殺すなんて思考が。そのうえ、処理の事まで考えるなんて。
おそらく現実離れの出来事に思考が飛躍し過ぎてる。無意識に現実逃避をしてる。だから突拍子も無い考えが頭に浮かぶんだわ。
えっちゃんはそう思い込む。理屈は一応合う。
アパートまで遠回りをする。違うアパートの庭へ入り裏口から抜ける。
ようやくアパートへ。辺りを伺う。アンテナを張り巡らす。大丈夫。本当に大丈夫か?何度か自問し、用心に用心を重ねる。不穏な気配は無い。怪しい車もない。
アパートに窓には白いロープがぶら下がってる。あれが無い時は何かが起きた時だ。警察や役所の人が来た時とか。
えっちゃんは安堵した。とりあえず何も起きてはいない。
階段を駆け上がる。アパートの前で深呼吸する。妙案はこれっぽっちも思いつかなかった。
えっちゃんが帰って来た事に皆が驚くも、心の準備はしていたのか、誰も冷静に最後までえっちゃんの話を遮らなかった。えっちゃんはコースケの事は言わなかった。
誰もが逃げようと言った。到底敵わない。でもどこへ。生活の質がかなり下がる。下がっても皆と一緒なら。とミヤビが言う。だが病気になったら全てが破綻する。
殺す。えっちゃんの脳裏にこびりついてる言葉。頭を振る。無理に決まってる。
[誰か相談出来る人は]
ケイナがえっちゃんに言った。相談出来そうな相手。唇を噛む。居ない。居たとしてもお金がかかるだろう。
[とりあえず俺達は逃げる準備をしとくから]
とミヤビはえっちゃんを仕事に行かす。
警察が来た時の逃げ道は確保してある。屋上に隣の非常口階段まで届く板を置いてある。その板にかける手すりも用意してある。隣の非常口階段は下にも屋上にも行ける。逃げ切れた先の待ち合わせ場所も考えてある。
えっちゃん以外の皆は時間だけはたくさんあった。ごっこ遊びの一つとして、たくさん考えた。もしこうだったら。もしこうなったら。と。
まさか現実になるとはその時は信じていなかった。信じたくなかった。




