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前に四人。後ろに二人。
目の前の男の喉ボトケを突いて潰し、片方の手で隣の男の目を潰す。後ろの二人、近づいた方の金的を振り向かずにバックスイングし潰す。後ろの片方の足の指を踵で踏みつけ屈み込んだら肘鉄を食らわす。仰け反るなら鳩尾を蹴る。残った二人が近づいて来たら屈み込み、ズボンの両裾を掴み思い切り持ち上げて頭から倒す。それで残り一人になる。
えっちゃんは瞬時に思いついた。容易に想像できた。
その思考経路に自分が驚く。なんで?そんな事を?
喧嘩はもちろん、争った事は一度もない。ましてや、人数多い相手になど。
[なんで逃げるのかなぁ]
真ん中の男が余裕をかまして言った。リーダーだろう。仲間の前で己の力を誇示している。相手は女一人。余裕も産まれる。
[大声出すわよ]
えっちゃんは相手の器量を探る。
[別に出してもいいけどお前も困るだろ?]
こいつらもおそらく国籍が無い。もしくは警察に目をつけられてる。
[お金なら無いわよ。分かってるでしょ]
[お金は作るもんだよ。お前なら簡単だしなぁ]
売春の強要。逃げ切るまで搾取される。
えっちゃんは黙る。ニヤついてる男の喉ボトケに目が向く。瞬時に喉に手刀。
そんな考え通りにいくわけがない。でも何故か考えはしっかりと頭に思い浮かぶ。簡単に即座に。真ん中の男の喉ボトケ、左の男の金的。肩を捕まれる前に甲の手を取って捻り、体重をかけて折る。
えっちゃんは頭を振った。出来るわけがない。
[ここです。お巡りさん]
えっちゃんが来た方から男の声。五人の逃げ足は素早い。既に走り出してる。
[顔は覚えたからな。逃げられないぜ]
リーダー格の男は走り間際に言った。
えっちゃんも男達の後ろを走る。警察から逃げ出す。絶対に逃げ出してやる。この男達からも警察からも。
[ハハッ、お前も大変だな]
前を走ってる男が笑いながら言う。
えっちゃんは歯噛みする。
[ガリ]と一言だけ背後から声。コースケだ。
走るスピードを落とす。男達の姿が見えなくなる。
後ろからコースケが走って来る。
えっちゃんはコースケに軽く手をあげてから、走り出す。
逃げるフリをしなくては、コースケにも災難が降りかかる。
トンネルから出ると男達は車に乗り走らせる所だった。車からバンバンと音を出したり中指を立ててえっちゃんをからかう。
ナンバーと車種は覚えた。だが友達の友達の知り合いの車とかだろう。
あまり役に立たない。
えっちゃんは走り去る車を見えなくなるまで見つめ、トンネルへ向かう。




