第6話 ロボット教習車をやろう
「ロボット教習車をやろう」
田口先生が言った。
「なんですか、それ?」
「ロボットを動かす練習だ。まずは、基本から始めよう」
先生は、練習内容を説明し始めた。
「直線の橋を渡る。ポールとポールの間を交互に回る。それから、凹凸のある道を走る。最後は、バックで駐車だ」
「バックで駐車……?」
私は思わず聞き返した。
「そうだ。車と同じだよ。ロボットだって、まっすぐ走るだけじゃダメなんだ」
「難しいね。でも、やりがいがある」
私は、これから始まる練習を想像した。
「いいね。じゃあ、箱に入っているロボットとリモコンをつないでくれ。高橋、藤井に教えてやってくれ」
「はい」
高橋くんが短く返事をした。
箱の中には、ロボットが入っていた。
木の板を土台にして、ギアボックスと二つのタイヤが取り付けられている。前には、小さなコロコロとした車輪が一つ付いていた。
見た目は、思っていたよりもシンプルだ。
でも、これが本当に動くのだろうか。
隣には、リモコンが置いてあった。そこからは、8本のコードが伸びている。
「これをつなぐの?」
私はリモコンとロボットを見比べた。
「うん。まずは、ここから」
高橋くんが、コードの先を指さした。
「黒色と黒色、赤色と青色……」
高橋くんに教えてもらいながら、コードをつないでいく。
高橋くんが四本をつなぎ終えると、私も残りの四本をつないだ。
「これでいいの?」
「うん」
高橋くんはリモコンを手に取った。
スイッチを操作すると、ロボットがすいすいと動き始めた。
「すごい……」
まっすぐ進んだかと思うと、くるりと向きを変える。高橋くんは、まるで自分の手足のようにロボットを動かしていた。
「じゃあ、藤井さんもやってみて」
「う、うん」
私はリモコンを受け取った。
スイッチを動かす。
すると、ロボットが回転した。
「あれ? ちょっと待って!」
止めようとしたけれど、今度は反対向きに回り始めた。
「えっ、どうして?」
思ったとおりに動かせない。
高橋くんは、隣で黙ってロボットを見ていた。
「……難しいね」
「最初は、そんなものだよ」
高橋くんは短く答えた。
「高橋、もう少し詳しく教えてやってくれ。藤井、ちょっと覚えるのが早すぎるかな?」
田口先生が言った。
「えっ、私が?」
思わず聞き返した。
「そうだ。いきなりうまく動かせるわけがないだろう。まずは、どう操作すればロボットが動くのか、そこから覚えていこう」
「……はい」
私はリモコンを見つめた。
どうやら、ロボットを思いどおりに動かすには、まだまだ練習が必要らしい。
「じゃあ、理科室に戻るからな。何かあったら、理科室に来て」
田口先生が言った。
「そうなんですか? 私たち二人でやるんですか?」
私は思わず聞き返した。
「そうだぞ。高橋がいるから、いろいろ教えてもらうといい」
「……はい」
田口先生はそう言い残すと、理科室へ戻っていった。
私は隣にいる高橋くんを見た。
いろいろ教えてもらうといい、って先生は言っていたけれど……。
高橋くんは、あまり詳しく教えてくれない。
なんだか、よくわからない人だな。
私はリモコンを持って、もう一度ロボットを操作した。
けれど、やっぱりその場でくるくると回ってしまう。
どうして、まっすぐ進まないんだろう。
すると、高橋くんがロボットの背面をのぞき込んだ。
「右のモーターが逆についてるから」
「逆に?」
そういえば、技術のテストで習った気がする。
モーターは、プラスとマイナスを逆につなぐと、回転する方向も逆になる。
「あっ、そうなんだ。わかった!」
「よかった」
「……」
高橋くんは、ちゃんとヒントをくれたんだ。
そうか、そうか。
私はさっそく、モーターのコードをつなぎ直そうとした。
「モーターをコードに……」
「待って!」
「へっ!?」
突然止められて、私は手を止めた。
「リモコンのコードを、黄色とオレンジ色に付け替えるほうが早い」
「……」
私は、手元のコードを見た。
そんな方法があったんだ。
自分で考えて直そうとしていたのに、あっという間に別の方法を教えられてしまった。
高橋くんって、やっぱりよくわからない。
でも……。
ちゃんと教えてくれる人なのかもしれない。




