表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マジカルロマンス詐欺師  作者: 朝霧


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/4

そうぐう!! マジカルロマンスさぎし!!

 魔法使いという生物がいる。

 この魔法使いという生物の説明をするためには人間とそれから神様という生物が存在することも明言しなければならない。

 まず、魔法使いというのは文字通り魔法と呼ばれる超常の力を使う者達のことである。

 そういう力を持つが見てくれは人間と同じ、人間よりも全体数は圧倒的に少ない。

 魔法使いと人間はよく似ているけれど全く違う生物、なので当然両種族間で争いが起こった。

 神様はそんな争いを嘆き悲しんだ、らしい。

 神様が嘆き悲しんだ当時、強い力を持つ魔法使いが圧倒的有利で、人間は絶滅寸前まで追い込まれていた。

 だから神様は、両種族が争わぬよう、共に歩めるようにと魔法使いと人間を無理矢理つがいにした。

 簡単にいうと、魔法使い同士で次世代を作れなくしたのだ。

 人間は人間同士でいくらでも増える状態のまま、魔法使いとその魔法使いのつがいにされた人間だけ、つがいと決められた相手としか子供を作れなくなった。

 そうして魔法使いという生物の存続には人間が必要不可欠になった。

 それを厭った、人間を心の底から憎んだ魔法使いは次を残さず滅び、人間を受け入れるか受け入れるフリが上手い狡猾な魔法使いだけが次を残した。

 人間は人間同士で増えつつ、魔法使いを滅ぼすか共存するか議論を続け、時には同種同士で争いつつ、最終的に魔法使いという便利な力を持つ強者との和解を図った。

 そういうわけで、現代において人間と魔法使いはそこそこ上手く共存できている。

 魔法使いと人間は基本的に別の場所に住まい、その時が来たら自分のつがいを探しに行くようになった。

 一昔前は魔法使いが人間のつがいを攫いに人間界に来ることが多かったが、ここ数十年はつがいがいるかもわからない人間達がつがい探し兼観光で魔法界を訪れることが多い。

 魔法使いには絶対に人間のつがいがいる、一目見ればそれだと分かり、その瞬間に愛さずにはいられなくなる存在が必ず一人だけいる。

 けれども、魔法使いと比べて圧倒的に数が多い人間はそうではない。

 魔法使いのつがいがいる人間は不思議とどんな人間にも恋もせず恋もされないようになっている、神様がそういうふうに運命というやつを捻じ曲げているそうだ。

 けれども、魔法使いのつがいがいない人間でも普通に恋もしないし恋されないいわゆる非モテという人間は大量に存在する。

 そしてそんな人間がいるからこそ、最近魔法使いによるよからぬ犯罪が発生するようになった。

 人間にはつがいがいるかわからない、だからそんな人間相手に魔法使い達が詐欺行為を働くようになったのである。

 いかにも非モテな見た目の人間に魅了魔法をかけて、自分こそがあなたのつがいだと甘言を弄して金銭を巻き上げる。

 近年マジカルロマンス詐欺と呼ばれるこれらの犯罪行為は人間だけでなく魔法使いさん達の間でも深刻な問題となっている。

 やっとつがいに出会えたと思ったのに、真っ先にマジカルロマンス詐欺を疑われるのだから、普通の魔法使いさん達も災難だ。

 本当に嫌な犯罪だと思う、そんな犯罪者本人しか幸せになれない犯罪、さっさとなくなってくれるといいのだけど。

 そして、そんなことを考える今現在の私の頭上に、おそらくそのマジカルロマンス詐欺師がいる。


 昼食を食べにファミレスに向かう途中だった。

 ふと、衝動的に上を見上げたくなったのである。

 見なければならないと思った、そこに自分が求めているものがあると、だから見なければという激情じみた何か。

 上を見上げたい衝動をどうにか抑えて、何も気付かなかったふりをして私はただ足を進めた。

 つがいと遭遇した時に魔法使いだけでなく人間の方もそうだとわかる、という話を聞いたことはあった。

 けれども真っ先に頭をよぎったのはそちらではなく最近流行りのマジカルロマンス詐欺の方だった。

 我が身を顧みると多分これは詐欺だろう。

 あまりにも冴えない容姿、一目で非モテだとわかる見た目をしている。

 絶好のカモと判断されているに違いない。

 なので、上を見なければという衝動は押し殺す。

 絶対に上を見てはならない、気付かないふりをして絶対に上に飛んでいるのであろうそれを目視してはならない。

 気分はまるでオルフェウス、状況はきっと真逆だけど。

 オルフェウスというよりもホラー映画の方がそれっぽいかもしれない。

 気付いた奴の方が気付かなかった奴よりも幽霊やお化けには狙われやすいという話を聞いたことがある、今回のマジカルロマンス詐欺もおそらくその類だろう。

 ターゲットとしてロックオンされているとしても、無視し続ければ『あいつは魔法効きにくいっぽい』と判断し去っていくだろう。

 うえ、上をすごく見たい。

 人生で何よりも大切にすべき何かがそこにある気がしてならない、やばいなマジカルロマンス詐欺師、というか魔法使い。

 別のことを考えよう、最近買ったゲームのこととか。

 ファミレスでサクッと昼食を済ませたら、さっさと帰ってゲームやらねば。

 脳内にゲームの画面を再現、ついでにBGMも再生。

 最近どハマりしているリズムに乗って敵をぶっ倒すゲームをシミュレートする。

 脳内プレイなので全部クリティカルにしてしまえ、多分リズムが微妙に合っていないので実際のクリティカル率は良くて六、七割程度なんだろうけど。

 想定するのは中ボス戦、ファンアートでなんかエッチな感じにされていたお姉さん。

 ひとまず有利な雷で攻める、たまに毒もかける。

 ボコボコに殴り続けて、敵の中ボスの体力ゲージが真ん中くらいになった頃。

 ファミレスまであと五分ちょっとで辿り着く、そんな頃合いだった。

「ねえ」

 上から声が聞こえてきた、気がしたけど多分気のせいだということにしてしまう。

 それのせいでリズムがズレる、本当だったらクリティカルに雷が決まるところだったのに失敗してしまった。

 そして雷打った直後に華麗に避けるはずだった向こうの攻撃も受けてしまった。

 慌てて回復をかける、脳内ゲームで慌てることで上からの声を一旦無視することに成功した。

 気のせい気のせい、全部気のせい。

 あるいは声をかけた対象が私じゃないとかそういうやつに違いない。

 だって周りにいっぱい人がいるし、私ではなくここら辺にいる誰かに声をかけたに違いない。

 脳内ゲームのリズムはズレたが歩調は特に変わらず、わかりやすいリアクションも見せなかったので単純に聞こえなかったと思ってもらえるだろう。

 回復し切ったので攻撃に転じる、まずはすでに効果が切れてしまった毒を向こうにかけるところから。

 脳内ゲームのBGMに合わせて足を動かす、軽やかに極々自然に。

 相手をしてはいけない、詐欺られる暇もなければ金もねぇのである。

 これで私が金持ちの道楽者だったら、気まぐれに詐欺に乗ってやってもいいかもとか思ったかもだけど。

 まあどうでもいいやマジカルロマンス詐欺師のことなんて。

 脳内ゲームの中ボスの体力もかなり削れてきた。

 もう一撃クリティカルを叩き込めば終わりである。

 リズムに乗ってコマンド入力をして、運良く最大レベルまで上がったという設定の雷攻撃を中ボスにぶち込んだその瞬間だった。

 リアル私の目の前に、雷が落ちてきたのは。


 人間は驚きすぎると声が出てこないものらしい。

 あと一歩くらい先に進んでいたら直撃だった、立ち止まったまま少し焦げた地面を見る。

 割とすごい音と光が目の前でドカンと、脳内の雷コマンドに合わせて、ドッカーンと。

 当然私は魔法使いでもなんでもないただの人間である、私が異世界ファンタジーモノの登場人物だったら冴えない女子大生がある日特別な力を、みたいな感じになるのだろうけど。

 けれどもここは現実だし私はただの人間である。

 というわけで状況確認。

 前方に見える空は雲ひとつない青、嵐の前触れも何もなさそう。

 と、いうことは。

「青天の霹靂……建物に、避難……!!」

 前方を確認、都合よくコンビニがあったのでそこに向かって駆け込んだ。

 雷が落ちた時はひとまず建物の中に避難しといた方がいいのだ。

 それが自然的に起こったものかそれとも人為的に起こされたものか判断するよりも先に。

 ひとまず避難に成功したので、少しの間留まろう。

 外はまだ危ないかもしれないので。

 店内を彷徨いて、グミを手に取ってレジに。

 ひとまず十分くらい彷徨いたけど、大きな音も聞こえなかったし、雨に濡れた人々がコンビニ内に駆け込んでくるということもなかった。

 多分もう大丈夫なんだろうと思う、本当に青天の霹靂だったのかもしれない。

 現実から目を背けつつ無理矢理そう考えた。

 時間を稼ぐのもそろそろ限界だろう、というか普通にお腹すいた。

 元々買うつもりのなかったグミを持ってレジに並ぶ、いっそ昼食もここで買って済ませてしまおうかとも思ったけど、それはやめておく。

 お会計を終えて、出口に向かう。

 出口横に何かがいるのはずっとわかっていた。

 あからさまに何かがいる、見ていないのに何故かそこにいるのがわかる、怖い。

 マジカルロマンス詐欺師、怖い。もう諦めて別の人のところに行ってほしい。

 引っかからないからな私は。

 私はさっさとお昼ご飯を食べて、帰ってゲームするんだ。

 視線はまっすぐ前に向ける、決して目を彷徨かせてはならない。

 自動ドアが開いた、横に意識は向けずにただ『お腹すいたな』とだけ考える。

 気付いてはならない、気付いたことに気付かれてはならない。

 気分はホラー映画の主人公、一番なりたくない役柄だ。

 一歩前に。

 二歩目も成功。

 三歩も無事。

 さあファミレスに向かって突き進め、と足を早める。

 どうやら待ち構えられてはいたものの、特に向こうから接触されるようなこともなかった。

 よっしゃこのままいなくなれ。

 そういうわけで今日はマジカルロマンス詐欺師に目をつけられかけたけど、気付いていないふりを続けた結果どうにかなった。

 お昼ご飯も普通に食べて、なんのトラブルもなく家に帰って、ゲームして風呂入って寝た。

 それで本日は何事もなく平穏無事におしまい、めでたしめでたし。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ