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真理郷(セオクラ)滅亡~桃源郷、兄妹の誓い。03

真理郷(セオクラ)滅亡~桃源郷、兄妹の誓い。03




ロイヤル三世、治世暦、三年【AB-03】






テラ大陸の北に位置する暗黒山ゴルドバの麓ふもとにある小さな村落。






二年の平穏な日々が続いた或る日こと。







《真理郷セオクラ》






《《ゴオーーーー》》




空を漆黒の翼で染める三束鴉の群れ。




言葉帝国ロゴスエンパィヤーの巨大空母プロパガンダから、飛び立った帝国直接掩護機ていこくちょくせつえんごきの編隊である。



真実の海セオクラルの岸辺で、いつものように小舟を浮かべて魚を捕るローズリンメル。



真実の海セオクラルの沖合いに停泊している帝国の巨大空母プロパガンダの姿が彼女の目に飛び込んで来た。



その時、三束鴉からミサイルがリンメルの頭上、空高くに白線を引いて真理郷セオクラへ放たれた。



その白線の先を目で追うリンメルの表情が凍り付く。



真理郷セオクラに轟音が鳴り響き真っ赤な火の手が上がり黒煙が立ち上る。



リンメルは、義姉カサブランカと同士モンテニュー、そして郷の民の安否を確かめるため、一目散に(いちもくさん)に真理郷セオクラを目指した。



肩で息をするほどに、走りに走ったリンメルの目前には、変わり果てた真理郷セオクラの砦姿とりですがたがあった。



防備柵と櫓は焼け落ちていた。



郷の母屋おもやも民家も跡形もなく燃え上がり、紅蓮の炎を上げている。



逃げ惑う人々の群れに、三束鴉から容赦のない機銃掃射の弾丸が飛ぶ。



《《ババババーーー》》



追い討ちを掛けるように空から大鷹ゴルドバロンの爆弾が降り注ぐ。



《《ドドドドドドーーーン》》




真理郷セオクラは、圧倒的な帝国の軍事力の前に、成す術もなく崩れ去った。



リンメルは、降り注ぐ爆弾や、三束鴉からの機銃掃射を避けながら



義姉カサブランカの姿を探すが、彼女の姿は、どこにも見当たらなかった。



塵灰じんはいと化した真理郷セオクラの上空を蒼燕ブルースワローが旋回した。


その窓から、高笑いをして下を見下ろす紅の魔導師ルージュリアン。



大木の影に隠れて蒼燕ブルースワローに乗るルージュリアンを睨むリンメル。



帝国への復讐を胸に誓い、森の中へと姿を消した。



真理郷セオクラは滅んだ。



時に、【AB-03】




真理郷セオクラを葬ったルージュリアンは、帝国空母プロパガンダへと帰艦した。



着艦した蒼燕ブルースワローから空母プロパガンダの広い甲板に降り立ったルージュリアンは兵士ボトムソルダの前に立ち叫んだ。



『エマールへの道は開けた!』



『これより、王都を攻めて、我らの宿願を果たす!!』



『我らは、これより、真理の言葉ロゴス帝国エンパィヤーを名乗るのだーー!!』



《《おーーーー!!》》



兵士達の間から、勝利の雄叫びが上がる。




その頃、各々に新たな拠り所を求めて、目的地へ向かう三人の姿。



蒼天の槍ストーム.スピアのカサブランカ。



ゴルドバ山の巨人、モンテニュー。



疾風の山猫、ローズ.リンメル



互いの安否も、分からぬまま、己の信念を信じ、未来へ向かう。







……………………………………………………☆








遥かに南の空の下。




戦いとは無縁の楽園。






《桃源郷》






車椅子を押す少女……


彼女の名前は花ミニヨン。


五歳年上の兄、翔ブァンは生まれつき足が不自由で、外出には妹が必ず付き添っていた。



『ミニヨン…いつも、ありがとう。』


『少し、休んでいく?』


兄が妹を気遣い声を掛けた。


『大丈夫だよ~お兄ちゃん♪』


ミニヨンは笑顔で明るく答えた。


山裾にある愛マナ湖の畔ほとり。


そこにある光の教会から伸びる細い一本道は小高い桃源の丘へと続いていた。


道の途中でブァンがポッリと呟いた。


『ドローンチェアーがあったら、ミニヨンに、こんな苦労を掛けずに済むのに……』


ミニヨンは車椅子を止めて、兄の顔を覗き込んだ。


『わたしは、この車椅子が気に入ってるのー、お父さんの手作りだし、お兄ちゃんと一緒にお出掛けできるから~♪』


ミニヨンの屈託のない笑顔が眩しい。


妹の透き通るような青い目


そして、明るい表情


ブァンは兄妹きょうだいの枠を越えた、何かを感じていた。


ミニヨンは、再び車椅子を押して、道なりに咲いている桃の花を楽しそうに見ている。


しばらく進むと、桃源の丘へ登りついた。


丘の中央には、ひときわ目をひく、大きな桃の木があり、四方に枝を伸ばしてその優美な姿を見せていた。


この大きな桃の木がある郷。


人々は、ここを『桃源郷』と呼び聖地として崇めていた。


聖桃木の下は、ウサギやリスといった小動物が憩う長閑のどかな場所である一方


この地で救世主かが降臨されたという伝説から、近隣の街や村々から巡礼者が訪れ祈りを捧げることも、度々(たびたび)あった。


ミニヨンは、車椅子を聖桃木の根元まで押して行くと、その場にペタンと座り込んだ。


ブァンは、額の汗を、頻しきりにハンカチで拭き取る妹の仕草を見て、手持ちの水筒を彼女に手渡した。


『だいぶ汗をかいたね、喉が乾いたろう』


ミニヨンは、渡された水筒の水を、ゴクゴクと美味しそうに飲み干した。


空になった水筒を頻りに振り残量を確認するミニヨン。


ブァンは、笑いながらに呟いた。


『もう、水はないようだね…』


ミニヨンは何を思ったのか、水筒をグルグルと回し始めた。


その様子を見ていた、ブァンの表情が次第に変化していった。


空になったはずの水筒に水が沸き出してきたのである。


更にミニヨンは、もう一本の空になった、水筒を取り出して二つをパーンとぶっけて見せた。


すると二本の水筒が三本になった。


ブァンは、その光景を見て自分の目を疑った。


ミニヨンはキョトンとしている兄の表情を見て無邪気に話し掛けた。


『お兄ちゃん!わたし、すごーいでしょ♪』


『これ、あげるー!』


ミニヨンは何事もなかったかのように振る舞い、水が満たされた水筒をブァンに手渡した。


ブァンはミニヨンに、優しく方語り掛けた。


『ミニヨンは、光の神様から、とても祝福されているんだね。』


しばらく、間を置いて兄は再び口を開いた。


『ミニヨンは、この不思議な力を、他の誰かに見せたことがあるのかい?』


妹は笑顔で兄に答えた。


『お兄ちゃんに見せたのが始めてだよー♪』


ブァンはミニヨンの頭を撫なでながら 言った。


『この不思議な力は、僕とミニヨンだけの秘密にしておこうね……』


ミニヨンは明るい声で『わかった~♪』と答えた。


ブァンはミニヨンの額に、優しくキスをして、そのあと、両手で彼女の顔の頬の辺りを丁寧に包み込み、誓いの言葉を述べた。


《《《僕の永遠の女神様が、ここにいる》》》


ミニヨンは青い瞳をキラキラと輝かせ呟いた。


『わたし、お兄ちゃんのこと、だぁーい好き!』


見つめ会う二人に、時は永遠に止まったかのように思えた。



桃源郷での、兄妹の誓い。


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