脱出!!
この施設を脱出する時に見た光景は悲惨だった。
羽を折られたピクシー、手足をもがれ芋虫のようになったゴブリン、毛皮を剥がされた犬の顔を持つコボルト。極めつけは、牢屋に入れられた、かろうじて人の形を保っている肉、肉、肉、肉、肉・・・・・。
大量だった・・。腐っているものもあった・・・。実験のためにいったい何人が犠牲になったか分からない、数え切れないくらいの肉塊たち。俺は吐きそうになるのを押さえ込み牢獄の廊下を走る。生きていている生き物なんてほとんどいない・・・。
その中でゴブ太はふと足を止める。・・そこには無残にもバラバラにされた、小さな花妖精[フラワーピクシー]がいた。
「ハナチャン・・・」
連れて行かれた友達はこのフラワーピクシーだったのだろう。ゴブ太は声を押し殺してつぶやいた。・・ふとフラワーピクシーの死体をみると、花のところに小さな種を見つけた。
俺はなんともやるせない気持ちで種を拾い、ゴブ太に渡す。
「・・今ハ生キ残ルコトヲ考エロ!生キ残ッテ、友達ノ残シタモノヲ育テテヤレ・・・。」
ゴブ太は、今にも泣き出しそうな顔をしながらコックリと深く頷いた。
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それから俺達は、白服に見つからないように移動した。今の俺たちではLevelが低すぎてすぐやられてしまう。(さっき白服のステータスを‘ミ’ようとしたが分からなかった・・。)
どうやら白服たちは大慌てのようで、逃げるなら混乱している今のうちだろう。
ずいぶんと進んだ。そして・・・白服に見つかった!!
俺達はとっさに近くの部屋に滑り込み扉を塞いだ。その部屋は、俺が合成実験をされたのにそっくりだが、俺が寝させられていた寝台のところが異様な門になった部屋だった。
「・・コレハ、時空門ダゴブ!モウ一個アル同ジ形ノ門ト繋ガッテイルンダゴブ。・・潜レバココカラ脱出デキルカモ知レナイゴブ!!」
門は青白く光る。・・・ゴブ太はそういうが、正直得体の知れない物に飛び込みたくはない。しかし、扉がミシミシと悲鳴を上げている。破られるまで時間がなさそうだ。
(行くしかない・・・か。)
俺は覚悟を決め門を潜る。俺達が門を潜ったのと扉が破られたのはほぼ同時だった。
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門を潜るとなんともいえない浮遊感に襲われ、気が付くと地面に倒れていた。俺は、すぐに門を壊すために立ち上がり、スキル:鉄頭[アイアンヘッド]を発動させた。
「オラ!!」
“ドゴン“という音とともに門の片方の柱が抉れる。門は青白い光を離散させ沈黙した・・・。
(これでしばらくは安全・・か?それにしてもここは・・)
俺はあたりを見回す。周りには無数の岩、トンネルのようになっている土の壁。どうやら洞窟のようだ。
よく見ると一筋の光が見える。俺はその光を頼りに洞窟の外を目指した。
(・・・まぶしい。)
外に出ると太陽が目にしみた。この世界に来てはじめて日の光をあび、生きていることを実感する。
しばらくすると、目も慣れてきてまわりが見えるようになる。
洞窟を中心に小さな公園くらいの広場が広がり、そのまわりを見渡す限りの木が覆っている・・・。と、いうより森の中に切り開かれた広場があるといっていいだろう。
(・・どうやら森の中のようだ。もしかすると回りに人がいるかもしれないな・・・。)
今の俺にとって人は敵でなかったとしても味方になることはありえない。
(・・・探索が必要・・か。しかし・・・)
今の俺には保護しなければいけないやつがいる。そう思い俺の後ろにおっかなびっくり付いてきていたゴブ太に目を向けた。
初めは利用するきで連れてきて、最終的に食ってスキルをえようと思っていたが、どうにも情が湧いてしまった・・・。
「ゴブ太、少シノ間洞窟ニ隠レテイテクレ・・・。俺ハマワリの様子ヲ調ベテ来ル。」
ゴブ太はしぶしぶ頷き、洞窟に入っていった。
(さて・・。)
俺は手早く探索を終わらせるために駆け出した・・。
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結果を言えば人っ子一人いなかった。森にはステータスを見ることの出来ない、あきらかに俺より強いであろうモンスターが徘徊していたが、そいつらの目を掻い潜りだだっ広い森を抜けるのにおそらく数時間かかっただろう。
森を抜けた先はこれまただだっ広い草原が視界いっぱいに広がっていた。
(どうやら人の気配はないらしい。・・・食い物でも持って帰ってやるか。)
俺は木の陰に身を潜め獲物を待つ。すると一匹のウサギに角の付いた生き物が通りかかった。・・・俺は集中する。
種族:一角兎[ホーンラビット]
Level:2
ステータス:STR 8
DEX 10
LUK 5
INT 0
どうやら俺より弱いらしい。ただ、あの尖った角は危険だ。そう思い後ろから近づく。
ホーンラビットの顔から生えている髭が“ピクッ”と動きこちらに顔を向ける。
(気づかれた!!)
ホーンラビットは角を突き出しこちらに突進してくる。俺はそれを寸でのところでかわし、ホーンラビットの横腹を思いっきり殴りつけた。
ホーンラビットは短い悲鳴を上げ絶命する。しかし、さっき避けたときに掠ってしまったのか、脇腹のところに血が滲んでいた。
(Level 2の小型モンスターで命掛けか・・・。)
俺は自然の厳しさを体感しつつ。次の獲物を待つ。
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最終的にホーンラビット5匹が取れた。その内2匹を食らい3匹を洞窟に持って帰る。
最初の一匹を食らったことでステータスが上がったようで、あとの4匹は比較的楽に倒すことが出来た。
洞窟に帰ると、初めは警戒されていたが俺だとわかるとゴブ太がよってきた。
「オ帰リナサイゴブ!!」
ゴブ太はひどくいい笑顔で(ゴブリンなので少し怖い)迎えてくれた。
それから1匹と1ゴブでとってきた肉を食べ、その日は固まって眠った。
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Name:■■■■■
種族:合成魔獣[キメラ]
Level:なし
ステータス:
STR 13
DEX 13
LUK 10
INT 0
ス キ ル:
★魔食[モンスターイート]
悪魔の目[デビルズアイ]
硬いイシ、
NEW角壊[ホーンクラッシュ]
装 備:
なし
角壊[ホーンクラッシュ]
・角を持つ敵に対してダメージ補正 中