「黒百合が咲いた日」
「力が欲しいか?ラングリよ」
闇の中で声が響いた。
声にはなんの特徴もない。男のようで女のようでもあり、子供か、はたまた老人かもしれない。
――若干の親しみを感じたが、気のせいだろう。
声はどこから聞こえてきたわけでもない。俺の頭の中にただ反響している。
「力?」
問い掛けるよりも呟くように、ただ独り言のようにそう言った。何せ相手が見えない。
いや、それ以外の何もかもがだ。この声の主は誰なのか、ここはどこなのか、そもそも俺は何故こんな場所にいるのか、その一切が分からない。
周囲を見回してみるが、そこには果てしなく暗闇が広がるばかりで視界には何も映らない。
これは夢だ。俺はそう結論づけることにした。
冷静に考えればおかしなことばかりだ。服装も家にいた時とは変わっている。それに頭の中の声も、現実ではおかしな話だ。
まあ夢だというのなら、この「声」に付き合ってやるのも一興かもしれない。
「その力ってのは、どういうものだ?」
初めの一言以降「声」は聞こえてこなかったし返事が聞こえてくるかは多少疑問だったが、杞憂であった。
「破壊の力。貴様が望む殺戮を実現させるための力。我々の恩讐の果てに咲いた、黒く美しい呪いの百合。もう一度聞く、力が欲しいか?」
「心外だな。俺はそんな力望んじゃいない。中立都市の市長として、都市を――世界を守るための力。それ以外は必要ない」
「声」に対し、俺は力強く言い放つ。初めとは違い、今度は相手に対しての言葉。明確な反論、反抗の言葉だ。
「今はそうでも必ず必要な時が来る。貴様は必ずこの力を受け取る。この我の力を。ハハハハハ!」
笑い声が、頭の中で幾度も重なる。反論は許されない。口を開くどころか、思考することすらもこの笑い声が邪魔をする。まるで何かに支配されたかのように、俺はただ呆然とこの声を聞き続けた。
――――――――――
「ラングリ、起きてください。寝坊ですよー?」
声が聞こえる。今、彼女はなんと言っていたんだったか。
頭痛がひどい。思考がまとまらない。割れているかのように絶え間ない痛みが俺の頭を殴り続けている。
それに、
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