親友との再会
「麗子ちゃん」
見知らぬ美少女に名前を呼ばれ、レイコは驚いた。
けれど、とても懐かしい感じがする。
どこかで会った?
そんなはずは無い。
レイコが目覚めてから出会ったこの国の人々は数が知れている。
ああ、彼に似ているんだわ、と気付く。
ソックリじゃない。
双子なのかしら。
でも、女の子よね?
「やだなあ、そりゃあ顔も姿も変わっているけど。
リーン様が私の身体に入ったから私はリーン様の高スペックな体を貰っちゃう事になったのよ。
年齢だって15歳だし」
「え?え、ええええーーーーー!!」
レイコは驚き口をパクパクさせた。
「鈴香なの!?」
「そう、鈴香なの」
鈴香はニコリと微笑んだ。
「わたし、麗子ちゃんに謝ろうと思って、ずっと待ってたの。
ゴメン、麗子ちゃん。
私がバカだったの。あんな屑みたいな男にころりと騙されそうになって、それを阻止しようとしてくれた麗子ちゃんを恨んだりして。
こっちに飛ばされて、すべての事を教えられて、凄く後悔したの。
麗子ちゃんに謝らなきゃって」
「もう、ずいぶん昔の事じゃない」レイコは苦笑した。
確かに、目の前の美少女は鈴香に違いなかった。
なぜ、リーンの事を鈴香だと思い込もうとしていたのか今となってはなんて頑固だったんだろうと思う。
一目で彼女が鈴香だと判ったのに、姿形が鈴香だからと言ってあきらかに男性のリーンの事を鈴香だと・・・・あれ?
美少女、よね。
出るところは出て、細い腰に華奢な肩、、体に沿うようなラインのロングドレスの腰回りは間違いなく女性の物だ。
「リーンって、女の子だったの?私が会ったリーンは男性だったわよね?」
ちょっと混乱。
「あのね、麗子ちゃん。
ここは麗子ちゃんや私が生まれ育った時代より一万年以上未来なんですって。
それまでに大拡散って言う宇宙へ人類が次々飛び出して行く時代があって、結局この地球にしか人類が人類のままに生きて行ける星は無いと悟って、大帰還と呼ばれる時代があったの。
戻って来た人たちはそれぞれ地球の人類とは違う変化させられた遺伝子を齎す事になったわ。
そして、この一族に齎されたのはアースル星の遺伝子。
男女完全体と言う遺伝子は、この一族の中で魂の在り様で変化する身体と言う形になったの。
この一族に男が多く生まれるのはその魂が男として、戦士である事を望むからだと言われているわ。
だから、私は女になったのよ。
せっかくリーン様がきちんと鍛え上げた身体を女の子にしちゃうのは勿体なかったんだけど、止めようが無いの。
それに、アルスが女の子で居てくれって」鈴香はポッと頬を染めた。
「じゃあ、リンちゃんは?リンちゃんの身体は?」
鈴香がリーンの身体に宿ったままならば、リーンが戻って来た時の身体はどうなったのだろう?
「スペアがあったの」
鈴香はケロリとしてレイコの混乱に輪を掛ける様なことを言った。
「スペアって・・・」
「これは必然だったと、アースル様やニーケ様が仰ったわ。
そのために、リーン様が生まれたその時にスペアになる身体も一緒に産み落とされたのだと。
そのせいか、リーン様のお母様は亡くなられてしまったのだそうだけど、リーン様と同時に生まれたもう一人には魂が宿って無くて、それをアースル様がポッドで育てたのだそうよ。
リーン様とシンクロさせてあったので、リーン様の魂は間違いなくその身体に帰還したの。
アルスは最後まで魂が元の身体の方に帰還して私が元の時代に返されるのじゃないかって、凄く心配して、ずっと抱きしめていてくれたのよ」
鈴香はとても幸せそうに微笑んだ。
大量の情報を与えられて、レイコは混乱の極みに会ったが、ここに親友が居て、死んでしまったと思っていた愛する人が生きて近くに居るのだという事だけは理解していた。
「ポッドって、ここにはそんな科学技術があるの?
凄く中世的な佇まいなんだけど」
レイコは重厚な石造りの部屋の中を見回した。
「ここは中世よ。
水道や、地熱でのセントラルヒーティングなんて物もあるらしいけれど、ここは中世的な生活をしているわね。
クリスタルの姫様のお部屋には科学文明が詰まっていたでしょう?
場所によっては麗子ちゃんの居た時代よりも遥かに発達した科学文明のある場所もあるの。
麗子ちゃんが中世が嫌なら、そんな場所を生活する場所として選ぶ事も出来るわ。
私が、リーン様がポッドから目覚めるのを待ったのもクリスタルシティーと言う未来都市だったし。
でも、麗子ちゃんはリーン様と一緒に居たいでしょ?
多分リーン様はこのたびの功績で陛下の側近になられるでしょうから、あまり外に出られる事は無いと思うわ。
そうすれば、ずっと傍に居られるわね」




