3話 魔界戦争
目の前に急に現れた男は、私が想像していた悪魔とはほど遠い見た目をしていた。いや、まずこいつは本当に悪魔なのだろうか?悪魔にしては、完全に人にしか見えないような見た目してるし……。
「どうしたんだい、そんなにジロジロと私を見て」
「自分のことを悪魔って言うのはいいかもしれませんが、できるだけ一人の時がいいと思いますよ?……その、周りから見ると恥ずかしいっていうか」
「私は痛い人間じゃない!!」
男はその笑顔を崩し、私に向かって怒りの声をあげる。だがそこまでこれは大きくなく、体は小刻みに震えているので、多分必死で怒りを抑えてるんだろう……。
「私は本当に悪魔なんだ……7大悪魔のアスモデウス。それが私の名前だ。それよりだ、ここにいると他のやつに狙われるかもしれん、一度君の家に案内してくれるか?」
「ナンパはやめてください」
男はニッコリと笑顔に戻った。多分本当にキレているんだろう。
「ならば君に信じさせるしかないね……。じゃあ、あそこの木を破壊しようか」
そう言うと男は右手の人差し指を前に突き出す。するとそこからピンクの光線が放たれ、木が木っ端微塵に爆散したのだった。
私はあまりの衝撃に腰を抜かし、その場にドテッと尻もちをついてしまった。
「これで信じてくれるかな?」
男がそう言うと、私は何度も首を縦に振る。ここまでされて信じないほうがおかしい、だって隣に跳んできた爆散した木の破片は、確かに熱かった。
マジックだとかそんな次元じゃない……こいつは、本当に悪魔なんだ。
「驚いた顔をしているね、どうだい?面白いだろう?これが悪魔の力だ」
「いや、驚いてるは驚いてるけど……その木公共のものだから壊したら損害賠償とか来るんじゃ」
「さっさと君の家に招待してくれ」
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結局私はこのアスモデウスと名乗る男を私の部屋に入れることにした。もし逆らえば、いつあの木っ端微塵にされた木のようになるかわからない。
「で?あなたが悪魔ってのは信じることにするけど、魔界戦争って何なのよ。依代とか色々言ってるけど、私何もわからないよ」
アスモデウスは部屋にあった椅子に座る。
「魔界戦争について何も知らないか、さっき記憶がところどころ抜けているって言っていたね。なら忘れたかもしれない君に、魔界戦争が何か教えてやろう」
アスモデウスの目つきが変わり、真剣に話を始めた。
「語れば長くなるんだが、時は約300年前にさかのぼる。昔、人々は神に絶望し、悪魔を呼び出して殺し合わせ、最後にのこった悪魔を神に捧げることで神に願いを叶えてもらおうとした。一度目、世界中の魔術師たちの力により、儀式は成功し悪魔たちが13体召喚される。だが悪魔たちの戦いは人間の文明力では太刀打ちできるようなものではなくあらゆる街が消滅し、死者は3億人もでた。そこでこれ以上無駄な死者を出さないためにも、またもや世界中の魔術師が集まり、地球の奥深くに国を作った。それがディアンズフィールだ」
「ちょ、ちょっと待って!地球の下の方って確かすごい熱いんじゃあ……」
「だから言ったろ魔術師が集まって作ったんだ。地球の奥深くに国を作り、そこから出るときは地表へ出るように魔術を張ったんだ。」
魔術師!?悪魔もいるっていうのに、魔術師もいるの?それにこの国を作ったのも魔術師!?
「何なら悪魔を召喚するには儀式の前に悪魔の依代として最適な13人の魔術師が選ばれるんだ」
ということは、私も記憶がなくなる前は魔術師だったの?だめだ。色々わからないことが多すぎて頭がこんがらがってきた。
私は頭を抱えるがそれを気にも留めずにアスモデウスは話の続きを喋り始めた。
「そしてこの国に人を呼び込み、その者たちに魔力を込めさせ、次第に街に魔力を充満させていった。そうすることでより強い悪魔を呼び寄せ、より大きな願いをかなえようとしたんだ。だがその儀式は突如終わりを迎えることになるんだ。悪魔の呼び過ぎで、地球に変化が現れた。魔力が充満しきらずに何度も儀式を繰り返したせいで地表の自然からも魔力は失われ、地表の色々な生命は消滅していった……そして。二百年の時が経ち、魔力が満ち、あまりにも魔力が溢れ過ぎたこの地で、再び魔界戦争は始まったんだ」
色々と理解できないところはあったけど、それでも結構ヤバいことが起きてることはわかった。……ん?
「ねぇ……私って貴方の依代に選ばれたんだよね」
アスモデウスは首を一度縦に振る。
「殺し合いに、参加させられるんだよね?」
またもやアスモデウスは縦に首を振る。
「私、もしかしたら殺されるの?あんたと出会ったせいで!?」
「まぁそう言うことになるな」
嘘だ、信じたくない。こいつが勝手に現れただけなのに、なんで私がコイツラの戦いに巻き込まれなくちゃならないの!?
だがアスモデウスは悩む私をそっちのけで一人頭を抱えていた。
「なんで貴方が頭抱えてるの?」
「いや、さっき公園にいたときに言ったが、君の体には魔法陣が埋め込まれてるんだ」
確か頭の中で声が響いていた時に言っていたあれのことか。確か悪魔は魔法陣とその悪魔に関係するものを持ち、呪文を唱えることで召喚するんだけ?そう私が思い出していると、アスモデウスはブツブツと独り言を呟いている。
「何言ってるの?」
「いや、人間の体に魔法陣を埋め込むなんて……そんなの『魔術的不可』に引っかかるはずと思っていて」
「魔術的不可?」
まーた知らない単語が出て来た〜、少し頭を休む時間がほしい……。
「普通、人間の身体に普通埋め込むことの出来ない魔術を無理やり埋め込むと、魔術的不可に引っ掛かって肉体が爆散するんだ。それは魔法陣とかも該当するんだが、君の中には私を呼ぶようにだけ作られたかと錯覚するほどに特殊な魔法陣が埋め込まれていたんだ……」
爆散する?でも私は今体を持っているし……。爆散もしていない。
「結局何が言いたいの?」
アスモデウスは、深刻な顔で私に衝撃的な言葉を告げた。
「君は人間じゃない可能性がある……」




