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Lil'in of raison d'être/リルイン・オブ・レゾンデートル  作者: 沙原吏凜
第一章 夭折の叛逆/Chapter.1“Rebellion”
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ep.1:悪魔の末裔

俺が生きてる意味を知らない。

こいつらが生きてる意味を知らない。

どうやって生まれたのかは、知ってる。

|[#1-悪魔の末裔]


この世界に織り成す動植物による生態系の流れは、劣る事を知らない。


それ故に個体それぞれが様々な進化の分岐を探し求めて、進化を遂げる。果てしない進化の果てに見えるのは、“死”へと終局する身体の破壊。体内で働く細胞が脳での信号を、全て外部へ行動化させている。それに耐え切れなくなった動植物は、土に還る。

多くの生命がそれを繰り返し、世界の生命エネルギーの均衡は保たれつつあった。そんな中でも異端な存在として、自然進化と人工的な進化を絶えず行う生命種がいる。


人間。

地球上に存在する他の生物とは一線を画す生命体。他の生命体とは異なる感情の表現が可能で、言語能力という特異な性質を持つ。古くから地球に住み着いている人間は様々な進化を経て現代まで生きてきた。

その生存本能は《極》に達してると言えよう。人は生きる為に罪を犯してまで、生存し続ける。

執拗な迄に生存に固執している。それが人間の使命なのだ。次の時代…また次の時代へと、確実な一歩を踏んでいく。だがその一歩というのがいつの日か、過ちを選択する事項が多くなってしまう事にもなる。

それはいつしか、人と人の戦争にまで発展。同じ個体生命の形であるにしろ、縄張り争いは避けられない。


【敵対】というのは恐ろしい。


戦いの果てに待つ結果というのは、案外予測できない事では無い。勝つか負けるか…。

その二つ以外は有り得ないのだが、結局は両者がゴミのように次々と人を散らせてゆく姿を想像すれば、最早勝敗を決めるのが目的では無いのかもしれない…と思ってもしまう。

血が流れない時代など無い。

人が持つ力には限界がある。「人に限界は無い」という名言じみた事を言う者も存在するが、そんなのは勝手な人生の結論に過ぎない。

個々の生命にはリミットが必ずある。

だが、その限界を超越した“異分子”が存在する。


《セカンドステージチルドレン》略してSSC。


彼等は人の姿をした悪魔と言われている。

人智を超えた完全生命体。

彼等はSSC遺伝子という、特殊な血と細胞を有している。それにより赤子の時から恐るべく能力を誇っていた。身体的にも学術的にも人間の如何なるステータス内外問わず、人の域を超えた天頂の力を持つ。

人は、《神の子》として信仰する者もいる。

SSC遺伝子を持つ者は、先天性の能力覚醒者が多数。だが、人間というのは非情な生き物。

大人達の身勝手な行動は、子供の人生を容赦無く奪う事になる。《SSC能力ワクチン強制投与》により、子の意見もなく後天性のセカンドステージチルドレン化をされる…というケースは珍しい事では無い。

何故、大人はセカンドステージチルドレンを勧めているのか。それは考えるまでも無い。【金になる】からだ。


近年の世界情勢は最悪と言っていいレベルに達している。国際的にも協力関係は徐々に悪化していき、戦争にまで行かざるを得ない所まで来ている。


実際に国が今でも、一つ二つと消えていく情報も世界に流れている。経済もそうだ。貧困層が増加している。生活を確保するため、食糧の困窮と安息の地の確保が人類には適切な生存競争の選択なのだ。そんな選択すらも与えられないのが、戦争に大敗した国。目も当てられない地獄のような光景がネットワークを通じて全世界で確認する事ができる。



最早、生きている事が苦痛なのかもしれない。サバイバルの礎を叩き込まれた人類にとって、“進化した人類”はこの上無い、サバイバルの道具となる。

“天才”を欲する親の身勝手な都合と判断で、能力覚醒を強いられる事により、セカンドステージチルドレン化を遂げた子もいる。

セカンドステージチルドレンには、その比類なき力の代償で生命力は極端に短く、20歳という若さで生涯を終える。

この事象が真実と実証された昨今では、SSCワクチン強制投与は【殺人罪】として扱わなければならないのでは無いか…という学識研究者も現れた。今、世界ではこのワクチン強制投与は罪に問われる対象の刑事罰として、国際法で指定された。


だが、現在では若くしてこの世を去る若者が多く、その全ては能力に長けた人間であったことがパーソナルデータに記録されている。法に背いた者が、今でもワクチン強制投与を行っているという、人の穢れた思考を垣間見る事ができる一つの事象。


SSCワクチンは、闇市場ダーティーマネーにて取引されている。勿論、これは警察が取り締まらなければならない案件ではあるが、一向に解決への糸口が導き出せずにいる。何か大きな組織が関係している事は明白であった。


セカンドステージチルドレンとして生きる者には、“思い出”が無い。先程書き記したような内容だと崇め奉られるような存在を空想できさえするが、現実は甘くない。「あの家には悪魔がいる…」と罵られ、親から虐待を受けるとそれに対して、子からの暴力で家庭崩壊。能力者は人の域を超えた存在。感情の臨界点も軽々と超えてくる。自身では制御が効かない程まで、力を相手に加えてしまう。


その結果、セカンドステージチルドレン達の末路は悪夢だ。

記憶を辿っても、プラスな方向に繋がるようなものが無い。追憶という行為そのものが不愉快極まりない。それは皆一緒の事実。


先天性も後天性も関係無い。

セカンドステージチルドレン達は、各々に“覚悟”がある。社会の闇に身を潜め、己の力を行使する事で裏社会の支配者になった者。自警団のように反社会勢力を警察の影で取り締まる正義の旗を掲げる者もいる。

前者は勿論、後者もこれは公にする事は出来ない。

この事実がどうであれ、能力者の居所が発覚するとそれぞれの自国が統制する強化人間隔離施設【ニゼロアルカナ】へ連行される。四肢拘束、飲まず食わず、人体再生能力の可否を確認する部位の切断…人の様々な限界値を求められる人体実験。それを繰り返される最悪の日々が待っている。

そんな隔離施設に囚われの身となった一人の男児サリューラス・アルシオンが送られる。

サリューラスは血塗られた過去と決別すると共に、この監獄からの脱出を図る。


サリューラスの忌まわしき過去…。

それは、アルシオン家の血統が全ての始まりである。絶望し、憂鬱になり、別離を迫られ、隔離され、再会を遂げ、寵愛と出会い、絶愛する。


主な舞台はこの世界に点在する四つの大陸の中で最大の規模を誇り、当然ながら比例するように人口も最多数を有する《ラティナパルルガ大陸》。

当大陸を中心に、生物達による価値を模索する物語が始まる。

俺を殺す?

お前達が?


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