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幻の花コトコリカ64



「許して…頂けますか?」

捨てられた子犬の様な目を浮かべてこちらを見るカトレア。顔が良い人って本当に罪だな。

「……紅の瞳の差別 (私達)を思っての事なのでしょう?良いですよ、今回は。私も共犯になります。兄さん達には内緒ですよ」


同じ、紅の瞳の差別を無くそうの同志ですからね。

実際、効果は抜群そうですし。


「ありがとうございます、キリア」

一瞬、パァっと明るい笑顔を浮かべたが、カトレアは直ぐに、表情を曇らせた。

「ただ……ユーリが、貴女のお兄さんであった事は、本当に知りませんでした」

「!」


そうでしょうね。私の出生については何も明かしてませんし。ラナン家は私をいなかった者扱いしてましたからね。


「キリアを傷付けると知っていれば、こんな事には巻き込みませんでした」

「あ、そっちの方が駄目です…!

キリアは慌てて否定した。

「除け者はごめんです。……傷付いたりしちゃって、面倒だとは思うんですけど、私も……その、一緒に行動させて下さい」


私は紅の魔法使いの一員で有り、紅の瞳の差別を無くそうの同士です。


「分かりました」

カトレアはこくりと、頷いた。



*****


時刻は夕暮れーーー。

もうそろそろ、幻の花コトコリカ探索のタイムアップが近付いてきた。

「見付かりませんね」

「うん…」


探せど探せど、紅い実のついた花は無い。

数百年見付かっていない幻の花なのだから、見付からないのが当然っちゃあ当然なんだけどーー。


「ありがとうございますキリア。これだけ探索して頂ければ、もう、充分です」

茂みを探索していた手を止め、立ち上がると、カトレアは笑顔をキリアに向けた。

「もう戻りましょう。クラとジュンが心配しますよ」

「…うん」

少しでも待ち合わせ時間に遅れたら、烈火のごとく怒りそうだ。カトレアを。

キリアもまた、探索していた手を止め、立ち上がった。


「…あ」

立ち上がった先には、虹の(ふもと)が見えて、キリアはその場に近寄った。

「綺麗…」

虹の(ふもと)なんて、見た事も無ければ、辿り着いた事も無い、神秘的なもので、キリアは、虹の光の中に、体を入れた。


(見付けたかったな…)

キリアは目を瞑りながら、物思いに耽った。


幻の花コトコリカ。

紅い実のなる、ピンク色の花。その赤い実は、万病を治すと言われている。


(紅…)

紅い宝石にせよ、紅い実にせよ、紅いーー瞳を宿した、私達もーーこの世界で呪われてる色には、強い力があると思ってしまう。思いたい。


(カトレアがこの花を自由研究に選んだのも、紅だから……なのかもしれない)


少しでも、紅の印象を良くする為にーーー。


(私も、何か、力になりたかったな…)


きっと、私がコトコリカを発見しても、何も出来ない。でも、きっとカトレアなら、紅い色の印象を少しでも好意的なものにし、紅の瞳の差別を無くす糧にするだろう。

(同じ同志なのに…私、何も力になれてない…)


虹の光が、徐々に消え行くのを、ゆっくり目を開けながら、確認する。

もうこれ以上は探せない。

諦めて、カトレアの方に足を進めようと、1歩踏み出そうとした所で、先程まで気付かなかった、1本の花が咲いているのを見付けた。


ピンクの花弁をした、まだ蕾の一輪の花。

(あれ…?あんな所に花なんて咲いてたっけ…?)

キリアはゆっくりと、その花に近付くと、しゃがみこみ、花弁に触れた。


「ピンク色の花弁…!カ、カトレア!」

「!」

キリアに呼ばれ、花を見たカトレアは、目を見開いて驚いた。

「コトコリカ…?そんな、まさか本当に見つかるなんてーー」

「これ、コトコリカなの?本当?ちゃんと発見出来たんだね!」

驚愕のカトレアと、無邪気に歓喜するキリア。

カトレアは、持っていたショルダーバッグから、透明の丸い風船のような物を取り出すと、花に向かって放り投げた。

風船の中に土ごと綺麗に入る花。

「何それ…」

「水魔法と土魔法が施された魔道具です。ケイの空間魔法の鞄と同じ様に、魔法の力が掛かった物です」


冒険の時に私達が良く使う鞄は、ケイ先生の空間魔法が施された、自由自在に色々な物が詰め込めるとても便利な道具として、愛用してる。

この風船みたいなのは、魔法の花瓶みたいな物なのかな?浮くし、土も水も潤って、凄く質の良い花瓶って感じがする。


カトレアは浮いた魔法の花瓶を引き寄せると、そのまま、花をじっくりと観察した。


「ーー文献でしか見た事有りませんが、特徴も一致しています。幻の花コトコリカである可能性が高いです。最も確かなのは、蕾が咲き、紅い実を確認する事ですが……」

生憎、花はまだ蕾のまま。

「咲けばハッキリするんだね」


何の成果も無いより、可能性がある方がよっぽど良い。これが本当に幻の花コトコリカで、少しでもカトレアの力になれたなら、本当に嬉しい!


「自由研究の役に立つ?」

「……」


無邪気にカトレアに尋ねるが、当のカトレアは何かを考え込んでいるような神妙な面持ちで、何も返事を返してくれなかった。

「カトレア?」

「!あ、はい。そうですね…」

キリアとは違い、コトコリカかもしれない花が見付かっても、カトレアは喜んでいるようには見えなかった。




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