口下手59
気付くと、ラット含む騎士団員全員が、私達の前に立ち並んでいた。
(え、何?怖い…!)
威圧感が凄くて、思わずビビっていると、騎士団員達は、揃って頭を下げ出した。
「ありがとうございました!」
「貴女達は命の恩人です!」
「素晴らしい力でした!」
次々に感謝と賛辞を送られる。
「え?え?え?」
「「……」」
私だけで無く、無言で無表情だったけど、クラ兄さんやジュン兄さんも戸惑っているのが分かる。
そうだよね。国の騎士団が、呪われてるとされる私達、紅い瞳の持ち主に頭を下げて、お礼を言われて、褒められる!凄い事だよね!
「……俺からも改めて感謝する。我が騎士団を救ってくれ、本当にありがとう」
この国の第3王子であるラットも、膝をつき、頭を下げながら、私達に礼を述べた。
「ラット兄様達を助けて下さって、本当にありがとうございます、キリア、クラ、ジュン」
カトレアも、継いで丁寧に頭を下げる。
「カ、カトレア!ちょっと!」
キリアは、そんなカトレアの服を引っ張ると、こちらに引き寄せた。
「止めさせてよ!王子様が私達に頭を下げるなんて、どうすればいいの?私達!」
「えっと……普通に感謝の気持ちを受け取れば良いのではーー?」
「王子がんな簡単に頭下げていーのかよ!」
「命を救われているので、簡単では無いかと…」
「後で不敬罪とかに問われないんだろうね?」
「問いませんよ」
キリア、ジュン、クラ。それぞれに言葉を投げ掛けられ、答えて行くカトレア。
彼もまた第7王子なのだが、3人はもうすっかりカトレアに対して気楽に接していて、王子とゆう枠組みから除外している。
4人で仲良く輪になって話しているのを、ラットはジーと見つめた。
「取り敢えず、魔物の数もそれなりに落ち着いた頃合ではあった。我が騎士団は、一旦、海辺の街コムタに戻り、体制を立て直す」
キリアが怪我人を全て治したとは言え、土砂の中に埋もれ、死の恐怖を味わった人もいる。
更には、連日の魔物との戦闘や、雨の中、迫る土砂から逃げた事による体力の消耗は激しく、心身共に回復する為、騎士団は近くの街で休息を取る事にしたらしい。
ラットの指揮により街へ向かう騎士団。
そんな中、1人、ラットは、紅の魔法使いの元に来ると、無表情で、ポツリと呟いた。
「ーーどうする?」
「へ?」
いきなり、どうする?と言われても、何て答えて良いのか分からない。どうする?何を?
「皆さんは、一緒に海辺の街コムタに来るか?っと聞いています。暗くなってきましたしね」
カトレアがラットの隣から、追加するように言葉を述べる。
午前中から活動していたが、もう日が沈み、周りが黒く染まっている。
「手配しよう」
「て、手配?何をでしょう…?」
「宿の手配なら、騎士団がすると言ってくれています。とてもお世話になったのだから、当然だとー」
「ちょっと待て!そんなんこいつ一言も言ってねーだろーふがっ!」
ジュンの口を、慌ててクラとキリアが塞いだ。
第3王子相手だろうが、礼儀も何も無いジュンは、タメ語にこいつ呼びを平気でする。
「良い」
「タメ語でも気にしていないので大丈夫だそうですよ」
淡々と、短い文章を無表情で話すラットに、まるで通訳のように話すカトレア。
「……ねぇ、カトレア。君のお兄さんは、もしかして、凄ーーーく、口下手だったりするの?」
そんな2人を見て感じた疑問の答えを、クラはカトレアに尋ねた。
「僕はそう思った事は有りませんが……父様や母様は、ラット兄様の事をそう評価されますね」
(まさかの口下手ーーー!!!)
流石に騎士団長として、隊に指示を出す時は問題無いみたいだけど、プライベート系では完全にこうらしい。
もしかして最初に会った時も、全く邪険に思ってなくて、カトレアが言った通り、本当に歓迎してくれたって事?分かりにく過ぎじゃない?!
「討伐作戦中なので、気を付けて自由研究をするように。と。後は、僕の顔を久しぶりに見れて嬉しいし、お友達にも会えて嬉しいと言ってくれてました」
「嘘でしょう?!」
あの、『邪魔をするな』の一文に、そんな単語いっぱい乗せられてました?それが事実だとして、カトレアが優秀過ぎじゃない?!最早ラット様専属の通訳だよ!
「……有難い話だけど、僕達は紅い瞳だから、街へは行けない」
驚愕の初対面の真相に驚いているキリアを他所に、クラが本題に戻した。
紅い瞳は呪われている。
兄さん達は、瞳の色を戻せるけど、それでも、どんなタイミングで紅い瞳に戻るか分からないからと、仕事や買い物等、必要な時に短時間しか、人が多くいる街には行かない。
だから、どれだけ冒険を重ねても、私達は街で泊まったりした事は無い。基本、外で野宿。
そもそも私は、紅い瞳を変えれないし。
「無い」
「無い?」
「問題無い。騎士団隊長で有り、第3王子である俺の命を救った恩人達に不埒な扱いをする輩は、俺が許さない。と、ラット兄様は言っています」
表情1つ変化無いが、真っ直ぐに、ラットはクラを見つめていた。




