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ストッパー27





《僕を紅の魔法使いが殺したと見せ掛けて、殺す気でいます》


即ち、カトレアが相手の思惑通り死んでしまえば、紅の魔法使いが殺したと、風評される事になる。

そんな事になれば、依頼が来たとしても、犯罪紛いの物ばかりになるのは目に見えてる。


「ある意味、僕達の所に持ち込んでくれて良かったのかも知れない」

知らない間に殺されてしまってたら、手の打ちようが無かった。

「そうそう。それに、いいの?俺達に罪を擦り付けようとする愚かな人間を野放しにして。俺はそっちの馬鹿貴族息子の方がよっぽど許せないけどなぁー」

「ーー確かにっ!その男、ぜってぇ許さねぇ!」

ケイの台詞に乗っかかって、上手い事矛先が貴族の馬鹿息子に移る。


「では、引き受けて下さいますか?」

「元より、先生が1度引き受けたなら、本当は僕達に拒否権なんて無いし」

「そのムカつく糞息子の好きにさせねー為に仕方ねーから、護ってやる!」

2人の返答に、カトレアはホッと、安堵の表情を浮かべた。


皆の話を聞きつつ、出来上がった夕飯を食卓に並べていると、隣に来たカトレアが、料理の乗ったお盆を受け取った。

「お手伝いします」

「…あ……ありが……とう…」

「どういたしまして」

今度はちゃんとお礼を言えた。嬉しくて、頬を赤らめていると、ガンッ!と、ジュンがコップが壊れかねない音を鳴らして、机にコップを置いた。

「ジュン兄さん??」

「……力加減を間違えただけだ!いちいちこっち見んな!」


力加減を間違えた?ジュン兄さんって、そんなに筋力馬鹿でしたっけ?ジュン兄さん私と同じ魔法使いだよね?


不思議がっていると、今度はクラが、残りのお皿を持って来て、テーブルに並べた。

「これで夕食の支度終わったよね?キリア、一緒に食べよう」

「?う、うん」

クラに誘導され、クラとジュンの間に座る。


「……こんな事言いたく無いけどさ、器ちっちゃく無い?もっと広い心を持てないの?」

一部始終を見ていたケイは、日本酒をお猪口に注ぎながら、呆れたように2人に声をかけた。

「放っておいて下さい」

「?何の事だ?」

器の小ささにおいて、クラは自覚があるようだが、ジュンは無意識なのだろう。妹を大切に思う2人は、カトレアがキリアに近寄ると複雑な感情が産まれるようだ。


「わぁ!凄い美味しいですね!こんなに美味しい料理、初めて食べました!」

敵意剥き出しが1人、無関心が1人、怖がってるのが1人、面白がってるのが1人。濃い面子に囲まれているのだが、当の本人であるカトレアは、至ってのほほんとキリアの作った食事を召し上がっていた。



(こんな人間も……いるんだ……)

キリアは、呪われたとされる紅の瞳に囲まれても、平然と食事をし、笑顔を浮かべるカトレアを、じっと見つめた。




*****


翌朝ーーー。


「キリアちゃん、護衛、一緒に行ってくれる?」


珍しく朝早くから起きているケイに、キリアは開口1番、依頼の同行を求められた。

時刻は8時。まだキリアに、依頼主であるカトレア、そしてケイしか起きていないリビングで、それぞれがキリアが用意してくれた朝食を食べていた。


「わーー私、依頼に行ってもいいの?」

この4年間、1度も依頼に行かせてくれなかったのに、急に許可が出た事に、キリアは食べていたパンを思わず落としてしまった。

「いーよー。てか、あの2人だけだと、カトレア君に何かしでかしそーで怖く無い?キリアちゃんとゆーストッパーが必要かな☆って思って☆」

「す、ストッパー??」

訳が分からず困惑しているキリアを傍目に、ケイはフォークで目玉焼きを刺した。

「まーそれは本気として置いといて、もう1つの理由は、やっぱり護衛だから、回復魔法を使える人が傍にいたほーが良いかなって思って☆」

「ストッパーも本気で言ってるんだ…」


普通は、冗談として置いといての所を、本気。とわざわざ言い換える辺り、ケイ先生が私に何を期待してるのか分からない……私が兄さん達のストッパーになれると思う?絶対あの2人の方が私より強いよ?てか、何要因なの私は。ストッパー兼回復要員?普通にただの回復要員でよくない?


「キリアもご一緒してくれるのですか?嬉しいです」

「えっーーと、私……依頼を受けるの、殆ど初めてでーー上手くお役に立てるか分からないけど」


何せ4年前のリク以来。あの時は完全な見学要員だったし。


「いて下さるだけで心強いです」

「…っ」


人間にこんなに、好意的に話されるのが産まれて初めてで、凄く戸惑ってしまう。実の家族にすら冷遇されていたのに…。


「ただ、キリアちゃんは紅の瞳の色を元には戻せないから、基本的に移動は夜間になるけど、大丈夫?」

紅の瞳の差別は根強い。紅い瞳を宿すキリアが表立って姿を晒せば、面倒事になるのは分かりきっている。


「問題有りません。王都の者に、夜に着くと手紙を出しておきます」

「OKー!てか王都かぁー随分久しぶりに聞く名前だなぁ」

「ケイは以前王都に行った事があるのですか?」

「大昔ねー」





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