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コルオーネ=アクア=カトレア 22




キリアは慌てて、少年と距離をとり、紅い瞳を手で隠した。


「…君の…紅の瞳…」

呼吸も落ち着き、ゆっくりと起き上がると、少年はキリアを見つめた。


(ヤバい!怖がられるーー!それとも、罵倒される?まさかの攻撃とかされる?!)

ギュッ目を閉じて、念の為に杖をかざし、キリアは身構えた。


「ーーー綺麗」

「ーーえ?」


少年から出て来た言葉は、予想だにしないもので、キリアは惚けた声を出してしまった。


綺麗?私が?私の、紅い瞳が?


勿論、そんな風に言われた事なんて今まで1度も無い。元・家族は当然、他の人間にも。……他の人間と言っても、元・家の使用人とかだけど。元の家でも、この家でも、他の人間と関わる機会が全く無い。


「助けてくれてありがとうございます。僕の名前はコルオーネ=アクア=カトレアと言います。カトレアとお呼び下さい」

惚けていると、少年は頭を下げ、丁寧にお礼を述べた。


「カトレア…さ、ん」

「キリア、貴女は僕の命の恩人です」

「そんーーなー」


助けておいてあれだが、こんなにストレートに感謝されるなんて思っていなかった。

久々に人間に会ったけど、あれ?もしかして、紅の瞳の差別、知らない間に無くなった?いや、でも兄さん達、たまに依頼断って帰って来た時とかブチ切れてるし、無くなって無いはず。


「あのーー」

「!」


まだ何か言って来そうなカトレアを警戒し、キリアは風の魔法を使い、もっと距離をとった。

(ヤバい?ヤバい?私1人で人間と深く関わるのは駄目?)


何せ今の家族以外と関わるのも、4年ぶり!産まれて12年!ケイ先生達からこの世界の事を学んだと言っても、実際、経験はしていない。

(人間は紅の瞳を差別してる)

これは絶対。確定事項。

(駄目だ!他人と話す事がそもそも久しぶり過ぎて、何を話してどう接すれば正解なのかも分かんない!)

最後に人間と接したのは、最初で最後の依頼となった依頼主であるリクが最後。でも、リクもまた、私の紅い瞳を見て、怯えていた。

紅い瞳の差別を少しでも無くしたいと思ってる。思ってるけど、実際、人間と会うのが、こんなに怖くなってる!

(また、罵倒されるの?また……怯えられるの?)


キリアは混乱した頭で必死に考え、決断した。


(よし、逃げよう)


風の魔法を唱えると、そのまま、キリアはカトレアを残して、その場から去った。





「はぁっはぁっ」

ヒュンヒュンッと、風を切り、キリアは一直線で家まで戻った。急ぎ過ぎて、息が荒くなる。

「キリアちゃん、お帰りー。どうしたの?何かあった?」

庭先でお酒片手に昼飲みをしていたらしいケイは、普段と様子の違うキリアを見て、3回程瞬きを繰り返した。


「に」

「に?」

「人間がいました!」


取り敢えず要点だけ簡潔に伝える。

「へぇーそーなんだ。珍しいねー」

キリアにとっては一大事なのだが、ケイは特段焦った様子も無く、また新しい酒缶の蓋を開けた。

「呑気ですね?!人間ですよ?!人間!」

「えーだって、俺達を人身売買目的で捕えに来たりとかで、たまに人間来るし。そぉーんなに、珍しく無いよね?」


確かにそんな不埒な人間がたまに来てるらしい!私は会った事無いまま、先生の空間魔法で対処されてるから、先生には珍しく無いのかも知れないけど!


「で、でも!不埒じゃ無かったです!魔物に襲われてて、私がそれを助けてーー」

「人間助けたの?いやー偉いねー。これがクラ君とジュン君ならガン無視だよー」

「そしたら!お礼言われたんです!貴女は私の命の恩人だ!って!」

「ーーお礼?ここに来た人間が?紅の瞳の持ち主に?」


お礼の言葉に、初めてケイが反応した。それ程、呪われてる紅の瞳に礼を述べる人間が珍しいのだろう。


「ふむ。何の用かな?依頼の話は来てないけど」

依頼の申し込みは、虹色の蝶が来て教えてくれるようになっているが、来ていない。

「まさかただの観光?それなら凄い面白い人間だよねー。呪われた森と称される紅の森に観光に来るんだから」

紅の魔法使いが住む紅の森は、別名、呪われた森とも言われている。勿論、悪い意味で。


「前々から思ってたんだけど、依頼の申し込みってどうするのが正解なの?」

虹色の蝶が、依頼があったと教えてくれるのは知っているけど、依頼主がどうすれば申し込み出来るのかは知らない。


「んー?何ヶ所かの街に、紅の魔法使いのポストみたいなの設置してるから、そこに手紙を入れてもらって、採用されたら、この森までの空間移動の魔法をかけた手紙を送り届けてるよ」

「空間移動の魔法?」


どうやら、直接この森にやって来る人はおらず、空間魔法で、指定の場合まで連れて来ているらしい。

4年前の謎が解けました。そうですよね。あの幼いリクが1人、魔物も蔓延るこの紅の森によく来れたなとずっと疑問に思っていたんです。ケイ先生の空間魔法で来たんですね。


「ポストの事知らずに来ちゃったんじゃないですか?」

「わざわざ?紅の魔法使いに依頼しに?こんな森の中まで?」


分からないけど、最後、カトレアさんは、私に何か言いたそうにしてた。聞かずに帰って来てしまったけど。


「……真面目そうで、優しそうな人間でした」

紅の瞳の持ち主に、お礼を言える人。

「ふーん。好意的な人間は嫌いじゃ無いよ。寧ろ歓迎。てか、そんな人間会った事無いから、俺も会ってみたくなっちゃった」






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