49 ステータス
いつも通り授業を受けていたつもりだった。
ホシラ国の歴史の授業。
心なしかビャクロク先生の目線が冷たい気がする。
厳しい表情だけど、優しく質問に答えてくれる先生だったはずなのに。
返答がぎこちない……?
ビャクロク先生だけじゃない。
時折廊下ですれ違う先生たちからも注目されている……。
「ライム?なんだかね、ライムといると学園の先生とよく目が合う気がするんだけど、気のせいかしら?」
「……わかんない、なんでかなぁ」
「やっぱりライムの凄さに気付いちゃったのかしら!!」
「ほんとにそうだったら、私多分生きていないと思うわ」
「ちょっと、なんてこと言うのよ!」
たわいもないピアノとの会話。
事実だからしょうがない。
それとね、その日以来些細ないじめもパタリとなくなったの。
絶対何かあったのよね。
思い出せないけど。
そう。アレスさんと特別学習室で紅茶を頂いてからの記憶がない。
確か旧魔法科学室での幻影を見た話をして……そして。
どうやって帰ったんだっけ?
え、ちょっ、まさか、私……。
変なことしてないよね?!?!///
……変なことって何よ?!?
むむむと考えても考えても思い出せないし、心当たりもない……。
いや、あるとしたら、奇妙な本が笑いかけてくる夢を見るようになったくらいかしら?
旧魔法科学室で見た幻影は脳裏にへばりついて離れない。
それくらい強烈な出来事だった。
「…………」
学食で夜ご飯を食べて、ふらっと図書館で勉強して、ピアノたちとわいわいシャワーを浴びて……。
ゴロンとありきたりなベッドに寝転がる。
何故か紅茶で染みていた白い手袋はもう新しくなっている。
ちなみにシャワーを浴びる時は、指先が透けているのがバレないように『隠蔽魔法』をかけている。
クラスの高い人じゃないと見破られない程度の魔法だけど、ここではそれで十分だ。
いつも首から下げている黒のプレートを手に取って、ぼーっと見上げる。
『ステータス開示』
そう口にすると、ぼぅと蒼白くプレートが光る。
ステータスを見るのは久しぶりだ。
なんか怖くて見れなかったのよね。
自分が人とは違う何かのような気がして。
目の前に蒼い文字がつらつらと浮かび上がり、眠気まなこで読んでいった。
《偽名:アズベルト・ライム
年齢:15歳
職業:神になりし者
特殊:測定不能
魔法アビリティ:測定不能
備考:感情度に左右されたアビリティが発現しています。現在の感情度は以下の通りです。
幸福度:80/100……『イメージ化魔法』
絶望感:30/200……『空間破壊魔法(弱)』
不快度:30/100……『魔法抹殺(弱)』
知的好奇心度:60/100……『叡智魔法』
性的好奇心度:40/100……『誘惑魔法』》
んんんんんっーー?!?!
ちょっ、ちょっと待って……!!
目が覚めたわ。かんぺきに。
呼吸が薄くなったように感じ、胸がつかえる。
苦しい。
ふぅーひぃー……一つずつ、落ち着いて見ていくことにするわ。
まず、私の名前が偽名って……私は、ライムよ!!!
偽名なんかじゃないわ!
間違ってる!!
ステータス画面は絶対だ。
そんなことはわかっているけれど、今までずっとこの名前だったのだ。
否定したくもなる。
そして、やっぱり職業は『神になりし者』なのね。
……ここはもう諦めた。
測定不能っていうのも………まぁ薄々気付いていたわ。
そっかぁ、感情度……?
私の今の気持ちってことかしら……。
幸福度、絶望度、は……そうね。
小さい頃の苦い記憶はいつも頭の中にあるから絶望度。
学園の生活はなんとなく楽しいから幸福度ってとこかしら?
不快度は……?手袋が汚れたから??
わかんないや。
知的好奇心度はさっき勉強してきたからで……。
…………。
…………?
せ………?
せいてきこうきしんど?
!?!?!
ライムは混乱した。
何それ何それ!?わからないわからない。
自分でもよくわからないけれど、その表示を見た瞬間急いでステータス画面を閉じた。
ステータス画面なんて開くんじゃなかったと心から後悔した。
その日の夜は言うまでもなく、寝付けなかった。




