第二話 すべてのりゆう
「ちょっと待った、地球が滅ぶ?」
男の腕を掴んでホテルまで連れてきちゃう女の子だし、多少は変なんだろうと思ってたけど、バックから凶器を出して殺してくれの後は、地球滅亡?
「ちょっと黙って聞いてて!」
いつのまにか僕はベッドの上で正座をしており、ナイフやら凶器を挟んだ僕の向かいで彼女も正座していた。何だか母親に説教されているような気分だ。
「私の頭の中に宇宙人が爆弾を入れたの、それでね、そいつらの話し全部聞いたんだけど、時間が来て爆弾が私の中で成長したら、ドカーンで地球が滅亡だって…」
真剣な顔で小学生も騙せそうにない空想話をよく言えますね、と突っ込みたい衝動をなんとか抑えた。彼女は話を進める。
「でね、その爆弾を止める、唯一の方法が、私が死んで成長を止めることなの、だから殺して欲しいの」
…そんなこと言われても、(わかりました。では地球のために殺します)などと言える訳がない。頭の中は疑問だらけだ。僕はまず一番の疑問をぶつけた。
「その…なら、自殺すればいいじゃないか」
普通の人にこんなセリフ言ったら、七割五分こぶしが飛んでくるんじゃないだろうか…
彼女はその最低なセリフを聞くとナイフを手に取った。
…まさか怒った?
彼女はナイフを右手に持ち、険しい表情のまま動かない。
「ごめん…その…」
僕がそう言いかけると、彼女はそれを遮り言った。
「見て、私、自分を刺そうとしてるの、でも腕が動かない」
彼女が固く握っていた右の拳を緩めるとナイフは金属音を立て床に落ちた。
「さっきも車に飛び込もうとした…でも、そうすると体が動かなくなるの…」
そう言った彼女の眼から涙が流れていた。
…これがもし演技なら、女って凄い。いやいや、そんなこといってる場合じゃない。
彼女は泣きながら僕の腕を掴むと、それをだんだんと自分の首に近づけていく。
「ほら、やっぱり、殺されることは出来るんだと思う…」
僕の指先は彼女の細い首を流れる管の動きを感じていた。
何というか、彼女がもし笑いながら今聞いた事を語っていたら、僕は信じるはずがないだろうし、現実に彼女の話のようなことが起こってるなんて今も信じてはいない。だけど、彼女の涙は本物だ…
「もうわかったでしょ、早く殺して」
彼女の瞳は赤く染まっていたが、涙はもう流れていない、そしてその瞳は強く、覚悟は出来ていると語るかのように真っ直ぐと僕に向けられていた。僕は彼女に触れていた指を離し、立ち上がり彼女のほうを振り向き言った。
「その…事情はなんとなく解ったよ…けど、なんで僕?」
彼女はそれを聞くと、しかめっ面をし面倒くさそうに早口で話はじめた。
「偶然よ偶然、私ねさっきまで宇宙人に誘拐されてて何処かわからない場所にいたの、そこから隙をついて逃げ出して、イロイロ考えてたら、なんとなく単純そうなあなたが通り過ぎたの…早くしないと、あいつら追ってくるかもしれないの」
単純そう…って、この娘、宇宙人に追われてるのかよ…
「誘拐?もうよくわかんないけど、警察に行けばいいじゃないか」
「警察がこんな話、信じると思う?」
そりゃそうだろう、下手したら薬物検査とかされそうだ。
「なら、友達に助けてもらえば…」
「ここが何処かわからなかったし、お金だって一円も無かったのよ、それにあいつら絶対私を捜してる。時間が無いの」
へぇ…無一文で…
「じゃあ、そこの凶器はどうやって?」
「全部、盗んだ」
彼女の話に穴はない、質問の答えはすぐに返ってくる。
「ねえ!あいつらがいつ来るかわからないの!お願い、早くして!」
こんなカワイイ子のお願いなら、普段の僕は何でもするだろう…
でも、さすがの僕も、頭に爆弾があって宇宙人に追われてるから殺してくれなんて、そんなお願いは…そんな風に考え首を傾げていると、いつの間にか僕はナイフを手にしていた。
「はい!えっと…あんまり痛いのやだから、心臓を一突きでお願い」
彼女は僕の右手にナイフを握らせ、眼を瞑り手を広げると胸を突き出した。
結構デカイな…突き出された胸の膨らみを見て、つい数分前感じたモノが一瞬甦った、だが今はそんな状況ではない…かといってすぐさまエイッと手の中のそれを彼女の胸に突き刺すなんて出来るわけがないだろう、まだ解らない事だらけだ。
「待って!もう一つだけ、教えて、君の言ってる事、全部本当なの?自殺が怖いから、殺してもらおうとか…そんなのじゃないよね?」
彼女は眼を開け今度は呆れ顔で怒鳴るように言った。
「私の目の前でお父さんとお母さん!弟も!家族みんな宇宙人に殺されたの!おまけにあいつらは倒れた家族の体を乗っ取って動き出したのよ!それから私を捕まえて何かしたの、その間、意識がはっきりしてなかったけど、あいつらが言っていた事は何となく分かったの、頭の中の爆弾で地球が滅亡するって、私が死んだら爆弾の成長が止まって爆発しないから、成長が終わるまでは生かしておけって」
語り終えた彼女は大粒の涙を流していた。どこぞの大女優でもこんな演技はできないだろう。
「もういい、わかったよ…、でも君が死んで爆弾が止まったとしても、宇宙人達はまだ地球にいるんだろう…」
僕にはもう彼女が嘘をついているとは思えない。
「あいつらが次に何をするかは知らない。でも、爆弾は一つしかないから慎重に扱えって言ってた。」
「OK信じる、だとしても、僕はどうしたらいい?このままじゃ、僕はただの異常殺人者だ」
彼女は僕の顔をじっと見た。
「そうだ!」
彼女は何か思いついたようで、僕の顔に指をさす。
「ねえ、携帯持ってるでしょ?」
僕は右手にナイフをもったまま左のポケットからそれを取り出し彼女に見せる。
「よし、じゃあムービー取って」
言われるまま、携帯のカメラを彼女に向け、僕は撮影開始ボタンを押した。
ほぼ同時に鳴った音を合図に彼女はカメラレンズに向かい喋り出した。
「えっと、私は大沢アヤカです、今は2009年、9月10日…」
彼女はそこでチラッとベッド横のデジタル時計を見た。そういえば今はじめて彼女の名前を知った。
「…10時45分です、信じられないと思いますが私の家族は宇宙人によって殺されました。そして彼らによって、私は頭の中に爆弾を埋め込まれました。それで私は爆弾を止めるために、今これを撮っている、ええと…」
「名前何?」彼女が小声で聞いてきた。
「汐崎幸介」僕は同じように小声で答えた。
「えっとシオザキさんに殺されます。ええと、その証拠に私の死体を解剖して下さい、頭の中に異物があると思います。それを調べてください、宇宙人は本当にいます。皆さん信じてください…」
「あと、シオザキさんを責めないで下さい、これは地球のためで、私の意志です…」
その言葉を最後に彼女は話を止めニ三度首を立てに振って僕に停止の合図を送った。
「OK」
そう言って僕は停止ボタンを押した。
解剖した彼女の頭の中に爆弾がなければ僕は終わりじゃないか……、とか考えたけど、彼女の二度目の涙を眼にしてから、もうすべてが本当に感じたし、地球を救うとかいうありえない使命に高揚感すら沸いてきている。もし逮捕されても僕は地球を救った男なのだから、堂々と!塀の中で生活してやろうじゃないか!
う〜ん、できればそれは避けたい…
頭の中はパニック状態
だが、そんな僕の頭の中を知らない彼女は、ふ〜っと深呼吸をし僕に言った。
「いい?」
ええい!僕は意を決し、静かに頷いた。
(続く)
この2話でジャンルSFの謎が解けたかと…
拙い文章ですが読んで頂いてありがとうございます。
コメント、評価いただけるとありがたいです。




