鱗の護りと竜
2016年からながらく間が空いております。
綺麗に整えたら⋯なんて言っていたら永遠に終わらないので⋯とりあえず完結を目指して細々と更新して⋯
まずは邪神本編を完結させましたので、この勢いでちょっと更新。
眠る番を己の欠片で埋めてゆく
鱗を剥がして、一つ一つ、次こそはツムギに傷ひとつつけないような強固な結界を張っていく。
それと同時に、ミルエディオの元で綺麗に治されて帰って来たツムギの体に竜の気を送り込む。
ツムギに触れた鱗がひとつ溶けるたびにツムギの体はすこしづつ変わっていく。
心と一緒になんて暢気に構えてた自分はただ、愚かなほど浮かれてたんだ。
魔術や呪よりも効率は劣るけれど、古来より使われてきた純粋な守りの力の結晶。
原始的で野蛮と言われようと構わない。
剥がす度にひとつひとつ鱗に丁寧に刻んでいく
ゆっくり、ゆっくりと。
鱗を剥がす度に体はズキズキと痛むけれど、それは不甲斐ない自分への戒めであったが、ゆっくりと番を染める行為は甘美でもあった。
ツムギが剥がれた鱗で埋まるほどに剥がせば流石に剥がした場所から血が流れ始め、あわてて清浄な空気をツムギに送る。
弱った身体に竜の血そのものは毒だから。
人は弱い。
幾度となく死にかけたツムギはもう半分くらい人では無くなってるのかもしれない。
人じゃなくなってしまうことを赦しくれるだろうか。
いいや、許さなくてもいい。
いっそ、憎んでくれていいから。
そのかわり、ツムギの欲しいものはなんでもあげよう。
キラキラの宝石も、黄金も、ツムギのためならなんだって手に入れて捧げよう。
珍しい花も生き物も食べ物も景色もなにもかもすべて手に入れてあげるから…
「きれい…ね…」
まるで鈴花が揺れるかすかな音のように小さなツムギの声が聞こえた。
ふらふらとさ迷うような視線は力無く、まばたきさえ酷くゆっくりで…
少しだけ動く手がゆっくりと、伸ばされた先は何もない虚空で…思わず鱗を放ってその細すぎる手をそっと支えた。
「ツムギ、何か…欲しいものはない?」
なんだってあげるから、あなたが欲しがるものは何だって手に入れてみせるから。
だから願って、あなたの願いを叶えるのは全て私、私しかいないと。そうありたいし、そうなってみせるから。
問いかければそっと繊細で愛らしい睫毛を震わせてふにゃりと笑った。
かわいい。
「手を…繋いでて欲しい…な…」
ズキリと痛いほどに愛しさが胸から全身に広がる。
愚かだ。
ああ、私は愚かだった。
そんなものは願いではないだろう、番の側にいるのは当たり前のことではないか。
番ならばいつだってどこにいても、側にいるというのに。
なのに⋯
後悔が押し寄せる。
こんな当たり前のことを願われる自分は何をしていたのだろう。
すうっと再び眠りに落ちたツムギの小さな手にそっと口づける。
大好きなんだ、愛してる。
同じ思いじゃなくていいから
そっとツムギの額に口づけを落とす。
不甲斐ない自分が君を愛し続けることをどうか許して。




