手紙と世界の関係 1枚目
こうして俺は筆をおいて一息ついた。
「ひさびさに文字を書くと、なかなか苦労するものだ……」
そうして、椅子にうなだれていると、ドアをノックする音が聞こえ、俺は生返事をした。
「お邪魔しまーす……って、黒田くん、スーツケースの中身とかひっくり返った状態でどうかしたの?」
と、白雪さんがお茶の入ったグラスを持ちながら心配そうな顔をしていた。
「あ、これはみっともないところをお見せしてすみません、白雪さん」
そういいながら、俺は椅子から立ち上がり、スーツケースから出しっぱなしにしていた洋服たちをそそくさとクローゼットの中にしまっていった。その横を白雪さんは通り過ぎ、机の上にグラスをおき、
「何か、急ぎですか……? これは手紙ですか?」
と、机の上にある字が綴られている紙をまじまじと眺めていた。その姿を俺は傍目に見ていたところ、彼女は小さな声ですみませんと謝り、紙から目をそらした。
「ええ。手紙を書いてみました。ひさびさに文字を書くと疲れるものですね」
俺は服をしまいながら、彼女と会話を続けた。
「そうですね。文字を書く文化はだいぶ廃れてしまいましたからね。タイピングや音声認識、または思念読み取り装置を使用しての文書作成が主流ですからねー」
と彼女が俺の方にひょこひょこと近づきながら返答した。
俺たちの世界は情報技術の発達に伴い、古代より伝わる文字を綴るという文化がだいぶ廃れていた。といっても、ロボットがはびこり、空を飛ぶ自動車があって、宇宙旅行が実現して、というような完全なSF世界というわけではない。
主要なやり取りはすべて電子媒体で行われ、紙という文化は廃れてはいるが、やはり古来よりある通信手段として、機密性や差出人を特定しづらいという特徴があることから、数は減らしつつあるが、未だに存在している。
また、ロボットははびこりはしないが、買い物では現金という文化が薄れ、電子マネーが主流、学校教育を受ける手段も通信教育が世の中に浸透してきており、一昔前の偏見もだいぶなくなってきた。
「それにしても、なぜ、手紙を書いたのですか?」




