プロローグ
❀小鳥 side❀
私は、何も知らないで生きてきた。
”ほんとうに、たいせつ”を――。
両親を、交通事故で失った。
お父さんとお母さんが亡くなったのは、私が物心つかない頃だ。
親の記憶がない、というのは、幸か不幸か。
そんな私は、実父の兄にあたる伯父さん夫婦に引き取られた。
事実を知らされたのは、十五歳になった時だ。
お姉ちゃん、お兄ちゃんは、本当は小鳥の従姉弟なんだよ、とも。
知らされた時はショックだった。しばらく食事も喉を通らなくなり、1カ月で4㎏も痩せた。
立ち直るのに時間は要したけれど、今は普通に生きている。
だって、本当の家族ではないけれど、皆、優しいから。恵まれているから。幸せだから。
今私は、実の両親の墓標の前に立ち、手を合わせている。
香林小鳥、二十歳になります――。ありがとう。
✱夢大 side✱
昔から身体が弱かった。
入退院を繰り返し、学校でも病院でも自分の居場所がなかった。
どっちも、中途半端だった。
学校では、俺が入院でしばらくいなくなると、すぐに仲のいいグループを強固にして、俺に対してよそよそしくなった。
休み時間のサッカーやドッジボールも、加わろうとすると”発作起こされると困るから”と、ストレートに断られた。
病院で仲良くなった奴もいたけれど、突発的に泊まる俺とは違い、慢性的に入院している奴が多く、そこでもグループができていた。”どうせすぐお前は下界に戻るのだろう”と。
学校、病院。どっちつかずの俺だった。
ただひとつ、救いだったのは病気でうかされている時に、寝てか覚めてか、決まってある娘が夢に出てきた。
”大丈夫だよ”と、にこっと笑い、白いワンピースの裾を翻して去って行く。
目が覚めたら、発作も治まっていたことがよくあった。
渡海夢大。23歳。大学4年生になる。
今日も生きている。
”ほんとうに、たいせつ”を探す日々――ありがとう。




