ランク推薦
「いらっしゃいませ。あ、認定の……スカイ君、ランク認定って転移課でやってくれるんだっけ」
「ああ、はいそうです。変わりますよ……って、アスハさん?」
「どうも、スカイさん」
カウンターの前で微笑むアスハさんは今日も綺麗だった。
また一人みたいだが、騎士団の仕事って言うのは俺達と違って単独が多いのかな。
「あれ、ピアス着けたんですか? 可愛いですね」
アスハさんの右耳にだけ三つほどピアスが輝いていた。青と白の宝石で爽やかだ。
「あ、はい。騎士団で流行ってて……似合ってますか?」
「めちゃめちゃかわいいです」
「ありがとうございます。そうだ、今日は――」
「あら、転移者の。先輩、今日はどういうご用件ですかこの人は」
嵐の令嬢、レイテシア。彼女は最近改心したのか大人しく仕事に励んでした。
ただ、相変わらず異世界転移課にいるってのに転移者に対してアレルギーが健在だ。
今日も初めての仕事だから見学させようと思ったけどどうするかな。
俺はペンをくるくる回して書類の一部をレイテシアに見せた。
「すみません、アスハさん、レイテシアに教えつつ業務しても構いませんか?」
「ええ、私は良いですが……レイテシアさん、転移者だからと言って、いつまでも白い目で見られるのは私としても少し悲しいです」
「では、どうしろと?」
「私とお友達になりましょ?」
突然砕けた様子のアスハさんに、レイテシアは少し驚いた様子だった。
「ふん、庶民がこのわたくしと友などと――」
「ではまずこちらの――」
「先輩! 今はまだわたくしが話している最中です」
「るさいな、仕事だっつってんの。認定なんてめったに見れるもんでもねえし大人しくしてろ」
「認定って、大体なんですの?」
「クエストあるだろ、アレには難易度によってギルドが定めたランクが存在するんだ。採集とか、比較的弱いモンスターの討伐がB、ウォッチ含めた軍隊で対応しなければいけないレベルのモンスター、または災害レベルをA、それ以上のお手上げがSだ」
「アバウトですわね」
「無理もないだろ。俺たちは比較的弱いモンスターにも平気で殺される。ゴブリン見たことあるか? 見た目ひょろいのにくそつええ」
「ありますわ……そいつらに、私の母は……いや、いいです。では、アスハさん? あなたはどのランクの認定を受けますの?」
「良い質問だな。アスハさんは今ランクが付いていないから、どこ受けますか?」
「Aランクです。こちらが、円卓会議代表、アルス・ローエンドの推薦状です」
「いきなり例外のお時間だ、レイテシア。認定は本来、ギルドが用意したテストをクリアする必要があるが、円卓会議がギルドに持つ特権として、会議のメンバーの推薦があればその階級にいきなり上がれる。俺らの仕事はハンコを捺して、こういうだけ。おめでとうございます、認定証発行まで3営業日程お待ちください。以上」
クスクスとアスハさんが笑うが、レイテシアは面白くなさそうだった。
「ありがとうございます。レイテシアちゃんってのも長いわね……シアちゃんって呼んでもいい?」
「馴れ馴れしすぎですわね、何様のつもりですの?」
「残念。じゃあ、スカイさん、今日とかお食事、どうですか?」
「ああ、じゃあ飲み行きます? 丁度友達になりたいとかって、良ければ先輩いって――いった、先輩!?」
「お前、殺すぞ」
「何がっすか!? 別にちょっと雑談するくらいいいでしょ!」
「チゲえよ馬鹿が。すまない、こいつは馬鹿なだけで悪気がある訳じゃないから許してやってくれ」
「はい、もちろん。でも、皆さんと飲みというのも楽しそうなので、よろしければ」
「なんでお前なんかにこんないい子が……まあ良い。今日なら大丈夫だ」
「わたくしも」
「ハイじゃあ決定。午後の仕事も頑張るぞ」
レイテシアも仕事を覚えてきたお陰で、ギルドの仕事もまあまあ捌けるようになっていた。それに、最近は仕事終わりに、先輩の地獄の特訓もあるから充実している。
本当に、しんどいが……思い出したくもない。
洞窟に連れて行かれて、体術の基礎訓練が始まった瞬間ボコボコにされた。その後は俺が使ったことない剣を持っての実践稽古は体中に傷が出来て仕方がない。
ただ、本当にお世辞抜きで先輩は強く、俺では傷をつけられなかった。偉大な背中に頭が上がらない。
ウォッチで培われた力は本当なんだろうし、恐らく俺が受けた傷の何倍もの痛みを受けて先輩は今……お立ち台に立っている。背だけは伸びなかった様だ。
「レンヤ・スカイさん。お久しぶりですね」
「コルネ審問官……ご用件は? 課長なら三秒もしなければ来ますよ」
「今日は決定事項を伝えに来たまでです。セナ・カロ―シアさん。勤務中のところすみませんが、お話があります」
「なにか?」
「ここではなんですので、奥のお部屋で」
コルネ審問官に連れて行かれた先輩。俺たちはどうせろくな事じゃないとは思いつつも業務を粛々とこなしていった。
業務を三つほど終わらせたところで、先輩はいつもと変わらぬ顔で帰ってきた。
「では、よろしく頼みますね」
「はい」
「先輩、どうかしましたか?」
「……次のダンジョン攻略に、ギルドからは私が出ることになった」
思わず耳を疑った。
ダンジョン攻略に、先輩が?
内緒の話しのためか、先輩は声のトーンを落としてひそひそと話し始めた。
「研究者の護衛任務とバランスの目になることが条件だそうだ。ウォッチと転移者からの後ろ盾もないというのにおい待て!」
俺は気づいたら飛び出していた。
まだ、遠くへは行っていないはずだ。急げば文句の一つや二つ程度ならまだ間に合う。
いた。護衛に守られつつ、若干遠い背中に向けて、俺は走り出した。
「審問官!」




