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藍上 おかきの受難 ~それではSANチェックです~  作者: 赤しゃり


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絵にも描けないおぞましさ ⑤

「……誤算でした」


「何が誤算だこのバカがぁ!!」


『殺さないで……あんなの分からないから悪くない……殺さないでぇ……』


 

 私たちはシャコ怪人たちの力を借り、当初の目論見通り城中への潜入に成功した。

 問題があるとすれば、牢の中へ放り込まれて身動きが取れないことぐらいだろう。


『某がついていながらなんたる不覚……くっ、殺せ!』


「ええいさっきからなんだこの声は、どこから聞こえてくる!?」


「すみません、悪いひとではないので気にしないでください。 はぁ……さすがに脱獄は難しそうですね」


 目の前を阻む鉄格子は多少傷みが見受けられるが、私程度の力でどうにかできるものではない。

 陀断丸さんの切れ味なら斬り捨ててしまうことも可能だが、逃げ出そうにも牢の前には監視のシャコが立っている。

 私の力量で陀断丸さんを振り回し、あの監視を倒せるかと言われると自信は全くない。


「そもそもなぜ牢に……私たちにまだ用事があるという事でしょうか、だとすればまだチャンスは……」


「クソッ! こんなことならお前の口車になんて乗るんじゃなかった、このまま私たちはあの怪物どもの馳走になるわけか!」


「今回の失態は私に責任があるので反論できませんが……こうして生かされている以上、すぐに死ぬことはないと思いますよ」


「どうだろうな! 煮込みにするか丸焼きにするか話し合っている最中ではないのか?」


「だとしても今生きているならまだ100%死ぬとは限りません。 私たちも、王子もです」


「…………」


 イオルドの苛立ちは積もりに積もっている、だがその理由は死への恐怖や無能な私への怒りだけではない。

 牢の外や周囲を気にする視線の動きから見て、先に攫われた王子の命が気がかりなのだろう。

 一度はクーデターを企てて王子を殺そうとした人間が、だ。


「今は何もできません、好機が来るまで少し話でもしましょうか。 お茶の時間にでもします」


「貴様と話すことなど……そもそも茶などどこに」


「ギギ……少し待て」


「「いやあるんかい」」


 2人揃ってツッコみをいれて待つこと数分、湯飲みに注がれた緑茶が格子の隙間から差し入れられた。

 水面からは湯気が立ち、潮の匂いに負けない茶葉の香りが漂っている。 日本の緑茶に間違いない。


「ギ……粗茶ですが」


「いただきます」


「おい、何が入ってるかわかったもんじゃないぞ!?」


「まあこうなったのは私の責任ですし、毒見ということで」


 一口すすってみるが期待通りのお茶の味だ、美味い。

 思えば今日はイオルドに拉致されてから海水ぐらいしか口にしていなかった、優しい渋みが喉を潤してくれる。

 

「ふぅ……毒の類はありませんね、飲んでも大丈夫ですよ」


「…………砂糖はないのか」


「監視の人に頼んでください。 監視さん、私たちより先に運び込まれた褐色の子はどこに居ますか?」


「ギギ、別の牢にいる。 場所は教えられない」


「ありがとうございます、生きているとわかっただけ儲けものです。 よかったですね、イオルド」


「……何のことだ、我々の目的は王座の簒奪である。 王子の身などどうでもよい」


「いまさら取り繕っても無駄ですよ、あなたたちクーデター側にも目的はあるのでしょう」


 喉を湿らせたおかげで口が回る様になってきた、今ならちゃんと話ができそうだ。

 イオルドも私との会話から逃げるように湯飲みを口につける……が、すぐに渋い顔をして離してしまった。


「……甘くないのは苦手ですか?」


「毒だろ……これは……!」


「海外じゃ渋いお茶は珍しいですものね、すみませんが砂糖かミルクはあります?」


「ギギ、少し待て」


 備蓄が豊富な城だ、どうやら用意があるらしい。

 しばらく待てば小さなポットに詰められた角砂糖が差し入れられ、無事にイオルドもお茶を嗜むことができた。

 これでお互いに喉の滑りは良好、邪魔をするものは何もない。


「イオルド、あなたの目的はただのクーデターだけではない。 “王子の死”と“本の所持”、この2つの条件が必要だった」


「……何の話か知らんがお前の口車に乗ってやる義理はない」


「なら一人で勝手に喋ってますね。 あなたが揃えようとしていた条件、この2つにはある共通点があります」


 話を続けながら、チラリと横目で看守シャコの様子を確認する。

 こちらの話に興味がないのか、出入り口に警戒の目を向け、牢の中に私たちには背中を見せている。

 その腰には鉄格子の鍵を束ねたリング。 ミカなら盗むのは容易だが、タイミングは見計らなければならない。


「王子……というより、王族が死ぬとヴァルソニアは大規模な過去改変を発生させる。 これがSICKの立てた説ですが、何か反論はあります?」


「勝手な妄想だな」


「まあこの目で確認できるものでもないですし、そうですね。 しかしあなたが所持していた本、こちらは効力を確認済みです」


 飛行機から脱出するため、そしてイオルドたちを助けるために計2回、カフ子を通じて過去改変の能力を行使した。

 なので本の過去改変能力は言い逃れできない事実、イオルドもこれに関しては皮肉も挟まず口を閉ざしている。


「大規模過去改変のトリガー、そして過去改変を操る道具。 この2つを揃えてあなたがなにを実行しようとしていた、ここからは私の想像ですが――――」


「……やめろ」


「あなたは何か、()()()()()()()()()()()()()()()()?」


 ――――その瞬間、激昂したイオルドの手が無礼な小娘わたしの胸倉を掴み上げた。

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なんだ?ミスって王族殺しちまったか?
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