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藍上 おかきの受難 ~それではSANチェックです~  作者: 赤しゃり


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メーデー ②

「……入れ替わり作戦? いやいや、さすがに無理じゃないかな新人ちゃん」


「せやな、いくら背恰好は似てると言っても一目でバレるで」


「そうですよね、背丈からしてかなり差はありますが私には考えがあります」


「自認股下スカイツリーなん?」


 時は少し遡り、SICK地下での会議に戻る。

 事の発端は私が寝起きの王子に爆弾発言をかましてしまい、駆け付けたウカさんたちに正座させられている時だ。


「なるほど、そのために服を交換しようと……おかきちゃん、次から言葉は選ぼうね?」


「はい……ちょっと急ぎ過ぎてました……」


 王子はキューさんの背中に隠れて完全に怯えてしまっている。

 つい自分の中で思考が完結してしまい、説明するための言葉が足りなかった。 場所が場所なら不敬罪で首が飛んでいたかもしれない。

 

「で、だ。 服を交換したところで君たちは髪も目の色も違う。 フードで隠そうにも限界はあるぞ?」


「キューさん、なんでも花火で粉砕された車体のスクラップからホログラムを作って監視の目を誤魔化したと聞きましたが」


「ああ、今ならちゃんとした機材が揃ってるしもっと精度がいいものは作れるけど……それでも至近距離ならさすがにばれると思うな」


「そこは重ね技で誤魔化しましょう、ミカの視界ハックを使います」


「……なるほど、たしかにそれなら敵の目も誤魔化せるだろうけど」


 弱体化してもミカの能力はなおも強力だ、それはこの目で確認してある。

 アーケード街周辺を歩く人間の視界を支配し、一切の混乱を起こさず避難させる荒業に比べれば、イオルドを含むテロリスト数名の目を騙すなどたやすい。


「き、危険デス! イオルドは目的のためなら手段は選ばない、正体がばれたらおかきさんの命も……」


「王子、相手は人質を取っています。 もし確保に手間取ればその隙に本国へ向けて“王を殺せ”と命令が飛ぶかもしれない。 勝負は一瞬で決着をつける必要がある」


「だからおかきちゃんが王子の代わりにイオルドへ接近し、あわよくば本を奪って無力化……という狙いだね?」


「ええ、この役割は私が適任かと」


 ウカさんたちはイオルドの前で超人的な能力を見せている、引き渡しの現場に姿を現さなければ逆に警戒されてしまうかもしれない。

 その点私は王子とともに花火から逃げまどっていただけだ。 イオルドとも直接接触したこともなく、警戒される可能性は低い。


「けどさー新人ちゃん、それかなり危険じゃない?」


「ええ、なので保険の保険として考えてください。 他の作戦が失敗した時の予備です」


「にゃるほどねぇ……わかった、おいらたちも万全を尽くそう。 予備は予備のまま、笑って終われるようにね」


――――――――…………

――――……

――…


「……まあ、こうなってしまったわけですが」


「おい……おい! 誰だこのガキは!? 王子はどこに行った!!」


 エンジン音がうるさい旅客機の中、青筋を立てたイオルドが母国語で叫ぶ。

 一晩だけだが王子からヴァルソニア語を教わっていてよかった、細かいスラングはともかくなんとか彼らの話を聞き取れる。


「やっぱり接触が長いとバレますね、ホロもミカも誤魔化しているのは視覚だけですし」


『お、おい……大丈夫じゃないだろこれは、死ぬぞ……』


 王子に扮した私を乗せた旅客機はすでに上空の遥か高みを飛んでいる、少なくとも生身で堕ちて助かる高度ではない。

 機内には銃で武装した兵士が数名、それと今にも血管が千切れそうなほど顔を赤くしたイオルドが1人。

 つまるところ逃げ場がなければ味方もいない。 一応ミカは憑いているが、怯えている彼女を戦力に数えるのは酷だろう。


「おい貴様、王子はどうした!?」


「まあまあ落ち着いて、私が王子に化けていただけですから。 今頃地上でキューさんたちと一緒にお空を見上げてますよ」


「なんだと貴様……!!」


 イオルドが怒りに任せて私の胸倉に掴みかかる。

 乱暴に引っ張るものだからせっかく王子から借りていたローブが破れ、その下に隠していたペンダントがこぼれ出た。


「王子からの借りものですよ、いいでしょう? チラチラ見ていたその端末で位置情報を確認していたんですか?」


「っ……!!」


 返す言葉もなく、イオルドは力に任せて私の身体を機体の壁へ叩きつける。

 いくらこの身体が軽いからって簡単に振り回してくれる、私より背が高いからって調子に乗らないでほしい。


「ゲホッ……痛いですね、落ち着いて会話くらいできないんですか?」


「うるさいぞガキが!! おい、もういい!! 本国へ連絡しろ、さっさとヴァルト王を殺してしまえ!!」


「おっと、それは困るんですよね」


 これ以上は時間稼ぎも難しい、取り返しがつかなくなる前に私は“秘密兵器”に手をかける。

 バックルにカモフラージュした黒い長方形のピンを引き抜いた瞬間、その場にいた者は皆、全身の毛が逆立つような感覚が走っただろう。

 同時に、今まで順調に飛んでいたはずの機体が突然ガタガタと震え出した。


「な、なんだ!? おいガキ、何をした!?」


「キューさん曰くジャミング装置らしいです、なんでも強力な電磁波で半径数百mの電子機器類はすべてオシャカになるとか。 あまりにも強力なので地上じゃ使えなかったんですよね」


『お、おおおい! それって大丈夫なのか!? 私はよくわからんが、ダメじゃないのか!?』


「ええ、当然オートパイロット含めこの機体の制御装置も一式破壊されたことでしょうね。 ともかくこれで通信機器は使えませんね」


『な、なんてことだ……もう助からないぞ……』


「な、な、な……おま、お前……自分が何をしているのかわかっているのか!?」


「ええ、()()()()()()()()()()()()。 地表までまだ時間がありますから、一筆遺書でも書きます?」

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