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ヴァンゲンハイム家の魔術師  作者:
第11章 贄の魔女 【2】
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11ー7 十代目『贄の魔女』ティアナ 7

 


 学校を卒業した翌春から、私はヴァンゲンハイム邸に住込で弟子に入ることに決まった。


「形は師弟関係をとるが、あくまでも建前だ。お前は働き口が欲しい。俺は他の魔術師に流出させたくない。これは取引だ。無理して師匠扱いはしなくてもいい。俺のことも名前で呼べ」


 彼はノエルに同居してもらうことも承諾してくれた。同居と言っても、基本的にノエルは姿を消していて、呼ぶまで何処にいるか実際私もわからないのだが。


 ハインリヒ様は思ったよりもずっと優しくて真面目な人で、住込の前にはちゃんと自宅に訪れパパとママにご挨拶をしてくださったし、暇があれば実家に帰って親に顔を見せろとも言ってくれた。


 住込になってからも、お部屋を一室用意して下さって足りないものは無いか気にかけてくださるし、魔術についても教本片手に丁寧に教えてくれた。


「集中しろ」

「はいい~っ」

「また陣形が揺らいだぞ?これ、基礎の基礎だからな?」

「が、頑張りますー!」


 魔術というものは、習ってみれば構築式の暗記と精神力の集中があればさほど魔力を必要とはしなかった。


 ただこの暗記と集中というものが、昔から大の苦手である私はどんなに覚えても魔法陣が乱れてしまう。


 私にとっては魔法以上に大変な作業であった。私も彼に魔法を教えてあげた。


「だから、思い出すんですよ。水かぽたぽたーと流れてドバーとなって、バッシャーンってなるんです」

「???すまん、ティアナ。全くわからん」


 私の説明は下手らしく、妖精のように映像として伝えることも出来なくて、実演をして見せるのが一番早かった。


「こうです」


 手のひらから水を出すと、だんだん大きくなって鳥の形になった。ピシャピシャと水飛沫を出しながら彼の周りをぐるぐると羽ばたく水の鳥を、まるで子供のようにキラキラとした瞳で見ていた。


「凄いな魔法は。こんなに自由な魔力の使い方をするんだな」


 嬉しそうに笑ってくれるので、私は何度も魔法を出した。


 16歳の誕生日には濃紺の魔術庁のローブをくださった。胸には魔術庁のエンブレムがあり、弟子の色である白色で縁取られていた。


 夏用の薄手のものと、冬用の厚手のもの、春夏用の三種類のローブがある。他にも魔術庁の指定の女性制服やピカピカのローファー、ハイソックスのような小物まで一式全部用意してくれていた。


「嬉しい······!有り難うございます!」

「内情はともかく、弟子は弟子だからな。あたり前だろ」


 こんな風にちゃんと弟子扱いしてくれたことが嬉しくて私は何度もお礼を言った。


 1ヶ月のヴァンゲンハイム邸での自宅学習した私は、真新しい制服とローブを来て、魔術庁に初めて登庁した。


 大きな正門、重厚な庁舎に胸を踊らせ、馬車から降りゲートをくぐるなり、ワッと女性に囲まれ、登庁早々度肝を抜かれた。


「おはようございますヴァンゲンハイム様!明日宜しかったら私とディナーをしませんこと?」

「ハインリヒ様!私クッキーを焼きました!是非召し上がってください!」

「ヴァンゲンハイム様!珍しい柄のネクタイを手にいれたんです!是非あなたに!」


「結構です」


 表情を変えず淡々と話し、その場を去るハインリヒ様を後ろから見つつ私は彼の後についていった。


「大人気ですね······!弟子申込会を思い出しました」


 彼の執務室に入るなりつい本音を漏らした。屋敷から執事のフォルカーさんに託され持参した紅茶をいれながら、ハインリヒ様の熱烈なファンに驚きを示す。


「言わないでくれ。毎朝アレで不快になる」

「ご結婚されたらいかがですか?少しは静かになると思いますが」

「お前までそんなことを······止めてくれ。己の業をよく知りもしない女に分ける真似なんか出来ない。······おい。この紅茶、ちゃんと蒸らしてから入れたか?薄いぞ」


 紅茶はいつもママがいれてくれていたから、そういえば正しいいれかたなんて知らなかった。あとでフォルカーさんに教えて貰いにいこう。


「下手くそでごめんなさい。練習します。業、ですかあ。ヴァンゲンハイム家の血筋のことでしょうか?よく知り合ってから、ご結婚なされば問題ないのではないですか。デートとかして。いい大人なんですから」

「全くどこでそんな知識を······って、血筋のこと、何でお前がそれを知っている······」

「ノエルから教えてもらいました。ノエルって、なんだかヴァンゲンハイム家のことにやたら詳しいんですよね。屋敷で迷いそうになってたら部屋の配置まで完璧に知ってたし。何でかなあ」


 腕を組んで頭を捻る私に、ちらりと視線だけ寄越してから、ハインリヒ様は味の薄い紅茶に再び口をつけた。


「フン。従順な悪魔だな········何を何処まで聞いた?」

「え?『王家の血筋の魔術師が代々継いでる』って聞きました。他に何かあるんですか?」

「·······いや、聞いてないのなら別に」


「??······あの、同じ屋敷にいるからといって、変にプライバシーを意味もなく暴くつもりはありませんよ。ただ、知っているのに知らない振りをするのは性格上難しいので、その都度お話はしますけど」


「そうか······そう言ってくれて感謝する」

「??········あ、はい」

「さて、まずは弟子としてのいろはを学ばなくてはな。弟子会に行ってこい、ティアナ」

「弟子会?」

「行けばわかる。お前のような弟子達が集まっている勉強の場だ。沢山の弟子と交流がある。ティアナのように若い子には必要な場だと思うぞ」

「わかりました!行ってきます」

「ああ。さっきの······血筋の件は一応箝口令が敷かれている。表立っては口にするなよ」

「わかりました。悪魔に誓って」

「シャレにならんな、それは」



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