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獣帝国ガルシャナ×国王テイル×王の決断……3

 エレステが全力で水の化け物を暴れさせ、空を目指す。その時、天井が存在する事実に気づかされる。


「天井……だと……? まさか!」


 何かに気づいたエレステがセセルに向かって声をあげる。


「炎を弱めて! これは拘束なんかじゃない!」


 しかし、感情に支配され、理性が一時的に消えているセセルに声が届く事はなかった。


 テイルは、歯を食い縛り、覚悟を決めように真っ直ぐと正面に居るセセルを直視する。


「なにアンタ! 邪魔するなら……燃やし尽くすわよ!」


 怒りのままに暴れ、感情を口に出すその姿は、容姿に関係なく醜いモノであった。


「カルバチノ=セセル……悲しいくらいに変わってしまったのだな……君の父君(ちちぎみ)に申し訳なく思うよ……住まない、セセル……」


 多くの感情が心の中を駆け巡り、それは現実に選択しなければならない。


 テイルにとって、セセルは戦死した友人の娘であり、太陽の神【イリョス】に見初められるまで、生活を援助していた娘と言っても過言ではない存在であった。


 そんな、大切な存在が目の前で狂いながら暴れる姿は、悪夢であり、悲しみでしかなかった。


「セセル……すまないな……」


 一方的な会話を終わらせ、セセルに別れを告げる。

 テイルはゆっくりと魔石(アーティファクト)の力を解放する。


 四方に作られた見えない壁が次第に縮まり、エレステと水の化け物を次第に怒り狂うセセルの元へと引き寄せていく。


「や、やめろ……今のセセルに私達が触れたら! 今すぐに此処から出せェェ!」


 エレステが必死に叫ぶ最中、テイルはただ一言「ごめん」と呟くと、手を“グッ”と握り締める。


 見えない四面体は更に縮まると、次第に天井は沈み、地上からも同様に光の床が浮上していく。


 エレステとセセルが一定の距離に近づいた瞬間、高熱の炎と川全てを使った水の化け物がぶつかり合う。


 四面体の内部を凄まじい爆発と靄が一瞬で包み込む。

 そのまま、小さく縮められた四面体を手に、テイルは歯を食い縛ると泣いた。


 小さく縮まった四面体の内部は(よどみ)み掛かった赤黒い色をしており、最終的に、指で摘まめる程のサイズにまで縮小される。


 圧倒的と言える結末だった。


 全てを灼き尽くそうとした太陽の神【イリョス】の巫女、カルバチノ=セセルと水神【コリエンテ】の巫女、エレステ=ティエルが、一人の男により、同時に討ち取られたのだ。


 勢いを取り戻した【獣帝国ガルシャナ】は、サンジュラム=ペリグロッソの指揮で反撃に転じる。


 圧倒的な優位を崩されたリアナ王国軍と聖職者協会は一時的に撤退を余儀無くされるが、逃げようとするも、退路は既に見えない壁と無数のガルシャナ軍により包囲されていた。


 リアナ王国側は、全ては国王の命令であったと語るも、多くの同胞を切り刻んだであろう剣は真っ赤に染まっており、命を繋ぐ者は皆無であった。


 そんな中、最後まで自身の神を信じ、争う少女がいた。


 風神【ウラカーン】の巫女──ダルタ=ミナルである。


 追い詰められる形になったダルタ=ミナルは迫り来るガルシャナ兵に対して荒々しく反撃を開始する。


 ガルシャナ軍を突風が包み込むと、渦の中で獣人達が風の刃に切り刻まれていく。


 しかし、荒々しい戦闘スタイルは、増援を招きいれる事となる。


 嵐のような激しい突風が大地を凪ぎ払い、木々を荒々しく引き飛ばしていく。


 そんな事態に動き出したのは、サンジュラム=ペリグロッソであった。


「往生際が悪過ぎんだよ!」


「お前達が、私の大切な友達を……ころしてやるッ! 化物なんか、皆……殺してやるッ!」


 ペリグロッソとダルタ=ミナルが正面から激突する。


 互いに大切な者を奪った仇として憎しみと憎しみが渦を巻く。


 魔石(アーティファクト)()め込まれた大刀を構えたペリグロッソ、体が次第に真っ赤に染まっていく最中、渾身の力を一振りに込める。


 風が内側から粉砕される。


 更なる風が渦を巻く瞬間、ペリグロッソの豪快な剣が地面を叩き、爆炎と爆風が風を吹き飛ばす。


 爆炎を防ぐようにダルタが風の盾を作り出し、更に暴風が巨大な渦のように真っ直ぐにペリグロッソに向けて撃ち放たれる。


「化物は皆、敵……皆、皆、死ねェェェッ!」


「神だろうが、関係ねぇよ! 吹き飛べッ!」


「「うわあァァァッ!」」

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