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第五の関所×領主の所有物×優しい声……4

 団長命令が下されると、グリムが興奮を露にする。


「皆さん、()()を呼び出すっす!」


 その瞬間、マスクを装着していなかった獣人達が一斉にマスクを装着する。


 空気を揺らすような地鳴りが起こると、地面から紫の泉が出現する。


 ある一定範囲まで広がった紫の泉から、次第に気泡が浮かび上がり、腐乱した死人(ゾンビ)やスケルトンといった見るも(おぞ)ましい、異様の集団が次々に姿を現す。


 泉から同時に浮かび上がる無数の剣や槍といった武具を手に取り(うごめ)く姿に【シスイ】の兵隊達は現実を直視できず、微かに視界を逸らす。しかし、見開いた目を閉じることすら出来なくなっていた。


 漂う異臭と常識から逸脱(いつだつ)した光景が次第に【シスイ】を包み込むように広がっていく。


「さてと、戦力五千って言ってたっすが、此方のアンデッド軍団は一万を軽く越えるっすよ? 頑張って勝ってくださいね……じゃないと、貴方達も仲間入りっすよ?」


 グリムが喋り終わると同時にスケルトンや死人達の眼が真っ赤に輝き、ゆっくりと前進を開始する。


 次から次に紫の泉から涌き出るアンデッド軍団は確りとした隊列を組み【シスイ】を取り囲む内壁を包み込むように広がっていく。


 包囲される前に進行を止めようとシスイ兵がアンデッド軍団に斬り掛かる。


 そんな、シスイ兵の剣を軽く受け流し、弾き飛ばすとアンデッド兵は何事も無かったかのように進行を再開する。


 【シスイ】の半分がアンデッド軍団により包囲されるとキャトルフと他の団員達も戦闘を開始する。


「いくぞ! 降伏した者は殺すな。あくまでも生け捕りだ!」


 一方的な武力が小さき武力を飲み込んでいく。

 シスイ兵にとって、関所を突破された経験など有りはしない。


 総勢五千を越える防衛の関所に軽々と攻め込む者などありはしなかったからだ。


 しかし、黒猫は違っていた。少数精鋭、【戦場の死神】と呼ばれる傭兵である事実を知らしめるように、確実に【シスイ】を落としていく。


 絶望と無情がシスイ兵を包み込み、次第に士気が低下していく最中、キャトルフ達の前に鬼の面を着けた人物が姿を現した。


「ちょっとやり過ぎじゃないかな……流石に困るんだけどねぇ」


 独り言を呟くようにそう語る鬼の面。


 そして、建物の屋根から一筋の閃光が輝き、包囲していたアンデッド兵の集団に放たれる。


“ズッガン”と壁ごと貫かれたアンデッド兵。


 再生できぬ程の損傷を与えられた事実に、所有者であるグリムは苛立ち、鬼の面を(にら)みつける。


「やってくれたっすね、今ので三十体は吹き飛ばされたっすよ! 代わりを補充しないといけなくなったじゃないっすか!」


 グリムがそう語った瞬間、真っ直ぐに閃光が放たれる。


 閃光を弾くように盾を装備したアンデッド兵達がグリムを庇うように壁を作る。


「クッ! ちょっと手癖が悪すぎないっすか、いきなり殺す気でくるとか、流石にムカつくっすね」


 無言で構える鬼の面に対して、グリムも本気と言わんばかりに身構える。


 グリムの周りにアンデッド軍団が集まり、次第に一つの塊に変化すると巨大なアンデッドが形となり動き出す。


「いくっすよ!」


 攻撃を仕掛けようとするグリムに対して、予想外の行動が起こった。


 団長、アルベルム=キャトルフが攻撃中止の合図を空に打ち上げたのだ。


「な、キャトルフ団長!」


 グリムを含め団員達が動揺するも、命令が出された以上、逆らう者はおらず、黒猫の団は優勢を維持したまま、攻撃を中断したのだ。


 その行動に対して、鬼の面を着けた人物が地上に降り立ち歩き出すと、キャトルフと向き合うようにして歩みを止めた。


「遣りすぎだ……何を考えている。アルベルム=キャトルフ……」


「相変わらずだな、その性格も、兵士の管理も……今回はそっちから仕掛けて来た結果だ。まだやる気なら相手になる」

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