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9 JK

胸糞注意


手動ドアが全開になっていて、店内は照明が点いていないので真っ暗だ。


入り口まであと3mほどの距離で、店内にいた感染者が俺に気づいた。

奇声をあげながら俺に走ってくるが、暗くて狭い店内ではゴルフクラブは取り回しが悪いので、自分から来てくれるのはありがたい。


感染者が店内から出てきた瞬間、頭頂部にゴルフクラブを振りかぶる。

グガッと音がして倒れたが、もう1体の感染者が距離を詰めてきたので、一旦下がり下から掬い上げるようにフルスイングする。

ボグッという鈍い音を出しながら、倒れ込んでいった。


地面には、黒い血液らしき物体がポツポツと落ちているのが見える。精神的に、よろしくないので踏まないように店内に入る。


ポケットにあるライトで一瞬、店内を照らして様子を見るが、何もいない。

中は狭いので、ゴルフクラブは入り口の壁に立て掛けておき、着剣済みの89式に持ち替えることにする。



89式に持ち替えたため、両手がふさがりライトが使えないが、ほんの少しだけ外から日光が入ってきているので問題ないだろう。  


この店舗内に感染者がいないか、確認してから物資を調達する。


入り口から入って、左側通路...誰もいない。レジ付近は...いない、さらに奥の通路は...誰か倒れている。多分死体だが、近づいて確認する前にもう1つ奥の通路は...いない。


よし、行こう。

倒れている奴に、89式を構えながらゆっくりと音をたてないよう近づく。ああ、これは死体だとすぐに分かった。仰向けで転がっており、顔にあるはずの目や鼻、頬の肉がまったくない状態だ。


「はぁ」

思わずため息がでる。これから物資を集めて食事をしようというとき、なんてもの見せるんだと。




気を取り直して、感染者がいないか店内を確認する。今俺がいるのは一番奥の通路だから、バックヤードは面積的に後回しで、先に狭いトイレを確認するか。


俺は89式を構え直して、警戒しながらトイレに向かう。

これ、急に感染者が扉から飛び出してきたら心臓に悪いな、などと考えつつトイレスペースの扉正面まできた。

中で、男・女とトイレが分けられているから、2回確認しなければいけない。

ドアガラスから中を伺ってみると、洗面台しか見えない。


よし、行ってみるか。


ドアノブをひねる音が、結構でかく体がビクッてなってしまった。





扉を開けると、......ん?何か中で音がした。


これはいるな。


声をかけて、感染者か確かめるか。

「誰かいませんか?」



......物音がしない、これは感染者じゃないのか。


でも、気配はある。誰かいるのは確実だ。

いつでも撃てるように、銃を構えながら再び声をかける。

「......誰かいませんか?返事してくれないと、勝手に入りますよ」

その声を聞くとすぐに、扉が開き中から人が出てきた。

「たす......けて......」

扉から出てきたのは、涙で顔がすごいことになっている女子高生だった。 



へぇこれはこれは。

年齢は十六歳くらいだろうか? 身長も低く小柄で華奢な身体をしている。

短いスカートから真っ白な肌をした太ももが見える。髪はポニーテールでまとめているようだ。

   


「動くなっ」

女の子は俺が構えている銃を見て、固まった。

「..ぇ....」

「銃だ。動かない方がいいぞ」

俺は銃口を女の子に向けたまま、一歩前に踏み出した。

女の子は両手を上げながら叫ぶ。

「ま、待ってっ。撃たないで!」

「.........」俺は無言のままさらに前に出る。

すると女の子は、腰が抜けたようにぺたんと女の子座りで座り込むと、涙声で訴える。

「お、お願いだから殺さないで......。助けてください」

「...」俺は銃を降ろした。そして女の子の前で、上から見下ろしてその顔を覗き込んだ。


「で、何があったんだ?」

急に態度が変わると、女の子は怯えた表情になった。

「え...えっと......」

「別に取って食おうって訳じゃないから」


まぁ食うんだがな。

そう言いながら、俺は女の子の顔を見る。涙で顔が汚れていなければ、結構かわいいと思う。








バックヤードの壁際にある椅子に深く座り、ペットボトルの緑茶を飲む。本当はアルコール取りたいけど、銃持ってるから止めておく。飲んだ結果、どうなるのか分からんからな。


パイプ椅子に座り、おしぼりで顔を拭いてる女の子が、拭きながらこちらをチラチラと見てくる。しかし、こいついい足してんな。


先ほど、銃を向けたことについて謝り、必死に弁明したら、ある程度気を許してくれた。

現役JK16歳、名前は奈那と名乗った。

話を聞くと、公民館に避難所が設置されて避難していたらしい。避難所が設置された時期は地域によって違うんだろう。

その公民館で内部から感染者が出て、お父さんと車で逃げて来たそうだ。で、その車が事故ってお父さんがなくなってしまったと。自分は無傷だったが、事故の音で感染者に追われて、このコンビニのトイレに逃げ込んだらしい。


その、なくなったお父さん以外は頼れる人がいないんだって。実に俺にとって都合の良い話だな。

ちなみに本人が言うには感染者に噛まれたり、怪我はしてないと言っている。そんなの信用できないから、検査は俺が直々に後ほど実行する予定。落ち着いた場所でな。



「あの...それ本物ですか?」

奈那は銃を指差しながら、不安そうな表情で聞いてきた。

そりゃまあ、普通は本物かどうか気になるよな。

「ああこれか、これは本物だ。落ちていたから拾ったんだ。そんなことより、お前はこれからどうするんだ?」

俺が問いかけると、奈那は1分ぐらい経ってから喋り出した。

「......分かりません...どこに行けばいいのか...何をすればいいのか...分かりません」

奈那は泣き出しそうな声をしながら、小声で言った。


急に家族が死んで、感染者から追いかけられて、頭の中が混乱しているんだろう。


そこに、俺が付け込む。


「そうか。じゃあ、俺と一緒に行動しないか?もちろん、奈那がよければだけど……」

俺は好青年を装い、いい人そうな雰囲気で話しかける。


ここは友好的に振る舞い、後で頂こう。



そう言うと、奈那は驚いた表情をしていた。

そして少し考えた後、俺に向かって答えた。

「分かりました、よろしくお願いします」

奈那は椅子から立ち上がりペコリとお辞儀をした。





俺は、コンビニで使えそうな物資をカゴに入れ、車まで運び込む。この作業が地味に辛い。車まで何往復もするので、腕や足の筋肉が、悲鳴を上げている。

明日は筋肉痛かな、などと考えつつ、横目で奈那を見る。


スカートをひらひら揺らしながら、カゴに物資を入れている姿が見えた。


さっき雑談して分かったことがある。

あの子、人をあまり疑わない。

まぁここ田舎だし、年齢が若いっていうのもあるかも。

その他、自分の意見をあまり言わない、強く言えば折れそうな印象を受けた。

見た目だけは、凛々しい優等生っぽい雰囲気なのにね。

髪の毛がポニーテールだから、弓道やってそうなイメージがある。


多分、俺が足を見てるのも気づいているだろう。分かって見せてるのかそれとも、何かあるのか。一応、後ろから攻撃されないよう警戒しておく。 

 

車に物資がもう載せきれないので、

コンビニから移動して、今夜の寝所を探すことにする。


俺が運転しているとき、奈那が話しかけてきた。

「あの、名前まだ聞いてません」

「あ、そうか」

そう言えばまだ言ってなかったな。

どうする、教えようか?

しかし、本名を名乗るのは何か嫌だ。

そこで嘘を言って誤魔化すことにする。


「あ~そうだな...個人的に付けられた名前が嫌いなんで、言うのは嫌なんだ。あと、ちょっと家族と問題があってな。好きに呼んでくれ」

俺がそう言うと奈那は一瞬、不信な表情をしたが家族と問題があると聞いて納得したような表情になった。


「...嫌いなんですか?」

「ああ」

「...分かりました。では、お兄さんと呼びます」


俺が手を差し出すと、奈那はにっこりと笑いその手を握る。

運転中に危ないが、信用を得るためならやったほうがいいだろう。


そんな話をしている間に今夜の寝所が見つかった。

コンビニから200m程離れたところにある、洋風の家だ。鋳物フェンスに囲まれているから気休め程度だが安心だ。


車が2台停めれる車庫があり、中に1台停まっていた。俺の車も車庫に入れて、手動シャッターを下ろす。シャッターを下ろすとき、結構大きな音がしたので感染者が来ないか警戒したが、来なかったのでおそらく感染者は少ないはずだ。


車庫の横にドアがあるので、そこから荷物を家に運ぶ。奈那にも、もちろん運んでもらう。


荷物を運ぶ前に家の中を確認したが、中には外傷のない死体が3つあった。手早く外の道路に捨てておく。


荷物を車から家に全て運ぶのは、今日中には無理なので、明日運ぶことにする。体がもたないし、面倒だから。

1/3くらいは家に運べたので問題はないはず。 







夜になった。

明かりが漏れないように、窓は家にあった段ボールを分解して塞いでおいた。

 

飯も食い終わったし、あとは寝るだけか。




俺は、ソファの隣で座っている奈那に近づき、肩に手を回して抱き寄せる。

「っ!...そういうのは...」

小声で俺の目を見て言った。



俺はさらに真っ白な肌をした若い体をまさぐり、


「いやっ!」


「悲鳴を上げたら感染者が来るぞ」

奈那は潤んだ瞳で上目遣いでみてくる。

「な、いいだろ」

怒気を強めて言う。


奈那はふるふると頭を振る。 


「じゃあ挟むだけでいいよ」


「...それなら」





「...そこちが...ぁぐ...あ、ぁぁ...やめ、てぇ...やめ......」


肉と肉を叩きつける音がした。


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