第十四話 熱い男の願い
「おめでとう。聖加。」
教皇は優勝した自分の優秀な部下をこれ以上ない喜びの目で見ていた。
二年連続で優勝という栄誉を勝ち取った聖加は国王に対し誇れる存在であった。
「それで?望みはなんだ?」
一方、国王は不快であった。
あと、一歩というところで自分の懐刀が惜しくも届かなかったのだ。
聖加は暫く間を取った。
それは自分の気持ちを落ち着ける時間でもあった。
「この国は現在二極化し、民も苦しんでおります。」
誰も反応しなかった。
いわれなくても周知の事実なのだから。
「私の願いは・・・教皇様のご息女と国王様のご子息の縁組でございます。」
「何と・・・。」
声を上げたのは教皇だった。
よもやこんな願いを言う男だと思ってはいなかった。
これは願いでもなんでもない。
ただの政略ではないのか。
その場に居並ぶ騎士たちも声すら出ずただ教会騎士団長を見つめることしかできなかった。
なおも聖加は続けた。
「お二人が結婚なさった暁には国が一つにまとまるのではないのでしょうか!」
「黙れ!黙れ!黙れえ!」
こらえきれず叫んだのは教皇だった。
温厚な教皇の顔は驚きと怒りで真っ赤になってしまっていた。
「お前がそこまで口出すものではないぞ!暗想、魔宗、こやつを捕らえろ!気が狂ったのかお前は!早く捕らえろ!お前など!即刻団長の任を解く!」
「お待ちを!教皇!これは国のために!」
聖加の言葉はもう教皇の耳には届いてはいなかった。
そして聖加の左右の腕は騎士団長たちに押さえつけられた。
「聞いてくれ!お前たちも!」
「・・・残念だ。」
魔宗はそういうと拘束の魔法をかけ、彼の口をふさいだ。
それでもなおも呻く聖加を暗想が押さえつけ、引きずった。
それは国王側にしてみれば教会側に亀裂があるようにしか見えない姿だった。
遜頌はそのことに気がつくと前へと進みでた。
「教皇様、この場は一度失礼いたしましょう。聖加殿も、興奮なさっているだけでしょうし。」
「そ、そうだな。失礼した。国王。願いの件はまたいずれ。」
教皇が遜頌に支えられながら退室しようとする中で国王は口の端を持ち上げた。
「あれと息女の結婚。それは妙案ではないか。ふん、教皇側にもまともな感覚の主がいたのだな。閣議を開け。」
「は。」