悲鳴と共鳴と汚れた魔剣 19
迫る俺とヨゼフに、恐怖心だけで反応したカイセルが緑色の炎の鳥を召喚。
俺の『気絶散息圧』とヨゼフの『操偲聯鴻宇拘作』がほぼ同時に発動する。
緑色の火炎の正体はおそらくマグネシウムの燃焼反応だ。これによる火炎は水によっては消えにくい特性を持つ。なので酸素を薄くして炎を弱め、砂で覆い尽くして食い止めようとした。だが圧倒的な魔力量に捩じ伏せられた。砂がガラス化し、液体になってこぼれ落ちる。炎の温度が高すぎるのだ。
「IUOAGRNREADFA」
わけのわからない言語が背後から聞こえて、『津裂竜流波』が殺到。砂の裏から膨大な量の水をぶつけて冷却する。水蒸気が視界を覆う。魔王級の悪魔は敵に回すと恐ろしすぎるが、味方だとすっげえ頼もしいな……。
さらに九つの『流臥水』が展開。不規則な軌道を描いて水蒸気の向こうに突き抜けていく。俺は『旋捲風』で水蒸気をカイセルの側に押しやる。
虹色の発動光が蒸気を貫通して映る。
「まじん……、まじんまじんまじん」
呼ばれる前に接近戦に持ち込もうと突進していた俺は、「それ」をもろに食らった。
虹色の光が罅割れて、武器を持った黒い腕が這い出してきた。初めは一本だったものが、割れて数を増やしていく。俺は一つ目を剣で弾き、二つ目を半身になって躱す。三つ目に対して『速離原力』で無理矢理上半身を横に倒す。四つ目が頬を掠めて、俺は『切刺鍼渦断』を発動し、前方を真空刃で薙ぎ払う。ふと左肩に、後ろから衝撃が走った。知らないうちに背後に回っていた腕が、俺の肩を切り落としていた。無論、一つだけのはずがなく刃の群れが俺の全身を掠める。気休め程度に発動した『旋捲風』がわずかに速度を緩めさせ、一瞬遅れてヨゼフの砂が俺の背後の腕を押しつぶす。
カイセルを目前にして、その頭上の空間が罅割れた。また手。だが今度のモノからは、なにか言いようのない威圧感を感じる。なにかを欲するようにその手は空中に指を這わせ、やがて掴んだ。銀塗りの柄が具象化していく。さらにその先に圧倒的なリーチを誇る鎌の刃が虹色の光を撒き散らして伸びる。
俺がカイセルを斬る方が速いと思い、突っ切ろうとした。
瞬間。
亜音速で駆け抜けた鎌に俺の胴体と下半身が切り離された。
視界が暗転する。
そして、俺は。




