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ネトゲの夫の中身がクラスのイケメンとか聞いていない  作者: Crosis
ssストーリー(完結後の日常編)
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昨日の私より3



 そんなこんなで水樹と会話をしながら部屋に荷物を置くと、辺りを散策する事にする。


 と言っても周囲にあるのは山か川かしか無いのだが、それもまた良い思い出になるだろう。


「まさか、水樹と二人でこうして泊まりの旅行に行けるなんて高校時代では想像もできなかったわね。 あの頃は家族と友達同伴で行った旅行を何とか水樹と二人で行ったつもりで妄想しながら楽しんでいたのが懐かしいわね」

「お前、そんな事をしてたのか。 まぁ、なんだかんだで未成年だったわけだしなぁ。 流石に大学生になって、しかも同棲までし始めた訳で、これで二人だけのお泊まり旅行がダメだって言われたら逆にその理由が知りたいわ」

「確かに」


 いつもと変わらない、なんて事はないあり触れた会話。


 しかし、空気は澄んで少し肌寒く、耳を澄ませば川のせせらぎや風で木々が擦れる音とともに土や草の匂いを運んでくる。


 遠くの方では鳥が鳴き、散りかけた桜が道路に散らばっている。


 いつもと変わらない、でもいつもと違う。


 そんな雰囲気がより一層今この瞬間が特別のように感じてくる。


「良い場所ね」


 確かに、観光シーズンではないし、かと言って別段観光地でもない。


「ああ、そうだな」


 でも、だからこそ俗世と離れた空間が存在するのかもしれない。


 水樹も私と同じ気持ちかどうかは分からないのだけれども、おそらく思っている事は同じだろう。


 聞かなくても分かる。


 だって水樹の彼女なんだもの。


「……んっ」


 そして、どちらからともなくキスをする。


 うん。


 良い場所だ。


 そして私達は手を繋ぎ、道路脇の崖下に流れている川を二人で眺める。


 ゆっくりと流れる時間。


 こう言うのがお金で買えない贅沢というものなのかもしれない。


「さて、そろそろ日も落ちてきたし旅館へ帰るか」

「そうね。 少し肌寒くなてきたしね」


 そして旅館に戻り、部屋で少しだけイチャイチャした頃には料理ができたらしく、水樹と一緒に晩御飯を食べに食堂へと向かう。


 そして、私達の名前が書かれたプレートの席に座ると、料理を持ってきてくれる。


 その料理もまた日常では味わえない豪華なもので、そこはかとなく非日常を提供してくれる。


 もちろん味は絶品だ。


 お刺身に、獅子のお鍋に、山菜と海老の天ぷら、茶碗蒸しにお味噌汁とご飯、箸休めの沢庵と、それら全てに舌鼓を打つ。


 そして食事の後は、部屋にある露天風呂で一緒にお風呂に入り、そこからは大人の時間である。


 まだお互いにぎこちないけれども、それがまた愛おしい、今だけ体験できる時間である。


 そしてまた一日、昨日の私より水樹の事を好きになるのであった。

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