誕生日パーティー
「殿下、誕生日パーティーは夕方ですがそれまでどうされますか?」
メノが居なくなったり、アロと契約したりと色々あったが、まだ正午前。フルール公爵家と王城の距離はそう遠くないので、昼食をとりに一度戻っても、夕方には十分に間に合う。
「すまない、今日はもう帰らせて貰うよ。本当は参加したかったのだが、公にはまだ婚約を知らせていないからパーティーには参加できない。公式に発表するまでは控えた方がいいからね。朝早くに訪ねたのもその為だ。それに、そろそろ迎えも来ると思う」
婚約者になったからといって誕生日パーティーに参加するとは言っていなかった。この流れだと来てくれるとばかり思っていた自分が恥ずかしい。
「そうですか。あの、婚約の発表はいつになるのでしょうか?」
まぁ、聞いたところで何も無いと思うが。
「いまのところまだ決まってないが、婚約披露パーティーを多分一ヶ月以内にはすると思う。そのときに発表する形になる」
「そうですか」
質問者にしては簡素な返事をすると、ローザがノックをしてドアを開け、殿下に迎えが来たことを伝える。
馬車の前まで私もついていき、お見送りをする。アロもそれとなくついてきた。
「今日はありがとうございました。お気を付けてお帰りください」
「では、また会おうフルール嬢」
◇◇◇◇
殿下を見送ってから時間は経ち、今は夕方。アロはローザに詳細を説明してから、「今日のところはこれで失礼!」といって何処かへ帰って行った。メノも無事に戻ってきた。メノは本当に木の上にいたそうで、何故そんなことになったのか良くわからなそうだった。後でアロのことを説明しよう。
そして、夕方……それは待ちに待ったケーキの時間。パーティーに来てくださった方々から
おめでとうと言われてケーキを食べる時間。まだ、社交界デビューもしていないから踊らなくてもいいし。
何故こんなにもケーキに執着しているのか。それは、1年前まで太っていたことに関係する。ケーキを毎日食べていたら太ってしまい、特別な日以外は食べることを禁止されたのだ。基本的に茶会もお菓子は少しだけにとどめさせられ、特例で、誕生日だけは食べることを許されている。前世の記憶を思い出してからも、ケーキを好きであることに変わりない。
まだ到着していない人もいるが、パーティーの開始時刻となったので、フルール公爵が挨拶をする。少しすると音楽が鳴り始め、フルール公爵と夫人を筆頭に、大人達が徐々に踊る。
挨拶で「今日は、娘のルファリエラの為に来ていただきありがとう」とか言っていたが、実際に来ている人達はそんなこと思ってないだろう。
「おめでとうございます」を散々聞いたところで、私は料理がある方に歩いていく。
「お、これは!ケーキと同じくらい好きなキッシュじゃない!……これも、私が好きな料理。ケーキは六種類もあるわ!」
嬉しさでぶつぶつと独り言を言いながら料理を取っていく。結局、ケーキは勿論のこと、置いてある料理の全種類を食べた。
このとき、私は誰かにその様子を観察されていたのだが気づくこともなく、私はのんきに「美味しかったー!」とでも呟いていたと思う。