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出来れば、ここにいたいです。  作者: 愬月茉乃
第1章 「ゲーム本編」開始前
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流行りの店

 今日は家庭教師も妃教育もない日。 

 一日中暇なので所謂お忍びで王都にある町に行こうと思う。ウィンドウショッピングを楽しむのと、一番の目的はこの前聞いたフジヤと言うお店に行くことだ。最近ケーキを食べ過ぎな気がするが気にしない。


 悪役令嬢ルファリエラなら着ないであろう質素なドレスに身を包み、長い髪も結んで帽子を被る。メイクで雰囲気も変えているので、私だとは思われないはずだ。

 なにより、痩せてから町には行っていなかったので、お店の人に気づかれることは少ないと思う。


 町に行きたいと両親に話すと、一人では危ないと言われたのでメノも一緒に行くことになった。

 

 二人でいつも乗るものとは違う、家紋の入っていない馬車に乗る。


「お嬢様、楽しみですね! それと、こうして町に行くのは二年ぶりですね」

 

 メノちゃんは私よりわくわくしている。


「ええ、楽しみね!」


 メノと話していたので退屈することもなく、いつの間にか目的地についていた。

 馬車を降りると、服屋や雑貨屋を回りウィンドウショッピングを楽しんだ。まぁ、たまに欲に負けて買っちゃったんけど。


 歩き疲れたところでちょうど"フジヤ"を見つけた。中には併設してカフェがあるようなので、メノにここでお茶をしようと提案する。並んでいる様子では無かったので、中に入った。


 中にお客は多く、落ち着いた内装で日本の喫茶店を思い出す。


「いらっしゃいませ!二名様ですか?」


「はい、二人です」


「こちらのお席にどうぞ」


 色々と種類はあったものの、スフレチーズケーキと紅茶のセットを二人分頼んだ。


「お嬢様、美味しいですね! そうだ、今度、マクドニアに作らせましょう!」


 マクドニアはうちの料理人の一人で、メノと仲がいい。一度食べた料理を再現する能力にたけている人物だ。


 あれ、あの店員さんどこかで見たような。他のお客さんの注文をとっているようで顔は分からないが、後ろ姿が誰かに似ている。

 そう思うと一瞬私の方に振り向いて顔が見える。え、……あの顔は主人公!?


「リリー、新しいの出来たよ」


 厨房から人が出てきて、新しいケーキを主人公に渡している。どうやらリリーと言うらしい。確かに平民だったけど、実家はカフェだったっけ?


 そろそろ迎えの馬車が来る時間なので、店を出ようと思い、お会計をする。


「あ、お会計ですか?」


「はい、お願いします」


 リリーと呼んだ方のお姉さんがレジ前に来て、私は注文表を渡す。


「お会計3000フラワーになります」


 今更だけどこの国の通貨はフラワーと言う名前だ。ほとんど円と価値は変わらないと思う。だから……少し高い気がするような。


 私はお金を払うと、誰があのケーキを考えたのかを聞いてみた。


「スフレチーズケーキ美味しかったです!お姉さんが考えたんですか?」


 厨房から出てきた彼女がケーキを作っている可能性が高いので、普通に考えたら発案者は彼女だろう。


「あぁ、それはあの子が考えたんですよ!我が娘ながら凄いと思います。今ではうちの看板商品ですから」


 え、お母さんだったのか。あの子と言われた視線の先にはリリー。


 つまり、主人公も私と同じように前世の記憶を持っている可能性が高いと言うことになる。


 しかし、そうだとしてもどうやって伝えればいいのか分からない。私も前世の記憶を持っていると白状しないとリリーについて上手く説明出来ない。


 帰りの馬車の中でも考えたものの、これといった説明方法は思い付かなかった。

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