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出来れば、ここにいたいです。  作者: 愬月茉乃
第1章 「ゲーム本編」開始前
10/57

兄の帰宅

 誕生日の次の日の朝。それは帰ってきた。


「ルー、ただいまぁ!」


「お兄様、ノックもしないで部屋に入ってこないでください。」


 満面の笑みで私の部屋にずかずかと入ってくるのは、私の兄であるローガンだ。現在隣国の魔法学園へ留学中の筈だったが、まだ休暇の時期ではない。


「あぁ、ごめん。ルーに会いたくてうっかり。今度は気を付けるよ!」


「気を付けてください。それに、学校はどうしたのですか?」


「あぁ、学校?もう卒業してきたよ。今日はルーの誕生日だから、会いたくて。今年こそは当日に祝ってあげようと思って。」


 いや、お兄様、確かに優秀な生徒は早くに卒業することもあるけど、妹に会うためって。理由がすごい変わっていると思うな。それに、あと一つ聞き間違えたかと思った箇所がある。


「お兄様、誕生日は昨日です」


「そんな、今日は5月11日のはずだ!」


「はい。確かに5月11日です。でも、私の誕生日は5月10日。お兄様は一日間違えて覚えていらっしゃいます」


「そ、そんな……。じゃあ、この沢山のプレゼントはどうすれば……。一日過ぎてしまったけど、貰ってくれる?」


 お兄様は被っていた、いかにも魔法使いと分かるとんがり帽子を脱いだかと思うと、がさがさと手を突っ込んでドレスや宝石を取り出していく。……全部私の好みの色だ。欲しいか欲しくないか聞かれれば、欲しいに決まっている。


「別に、当日でなくとも、私は喜んで貰います!」


「本当か?ルーは優しいんだな!」


 優しいわけでは無いと思う。お兄様には優しくしたこと無いと思うんだけど。何でこんなに兄に好かれているのか分からない。


「お兄様、プレゼントはありがたいのですが、衣装部屋に運ぶのが大変なので一旦元に戻してもらえますか?」


 ドレスが十着はあるため、お兄様に帽子に戻してもらってから衣装部屋で取り出した方が楽だと思ったのだ。


「それなら、衣装部屋に転移させるよ」


 お兄様は帽子から杖を取り出して呪文を唱えると、瞬時にドレスなどが消えた。魔法って便利だなぁ。


「そう言えば!まだお父様とお母様に会っていないから、少し挨拶してくるね。また戻ってくるよ」


 お兄様、普通は両親に真っ先に会うもんじゃないのかな?また戻ってくるのか……。でも、もう話すことも無いから戻ってこなくてもいいですとは流石に言えなかった。


◇◇◇


「ルー!王太子と婚約したって本当?」


 少し時間が経つと、またノックもせずにお兄様が私の部屋に入ってくる。


「はい。」


「ルーは本当にそれでもいいの?妃教育は大変じゃない?」


 き、妃教育。……忘れていた。ルファリエラが主人公いじめてた理由に、妃教育がハードすぎて八つ当たりしてたのもあった。だからっていじめるのは良くないが、私も八つ当たりしたくなったらどうしよう……。いや、ゲームと同じとは決まっていない!


「妃教育はまだ始まって無いので何とも言えませんが、婚約に関しては納得しています」


 ステア殿下がゲームと中身が違うからと言って、主人公に恋をしないとは限らない。今のうちに婚約を無かったことにすることも、発表していない今なら出来そうだが、正直難しいだろう。今までの婚約話は、お父様とお母様にどうするか相談されていたが、今回は王家からと言うことで私がどうしたいか選択する権限はなかった。

ゲームの強制力とかかもしれないが、私はこの婚約に納得していると思う。


「そうか。ルーが幸せなら……」


 この後、「いつでも戻ってきてね!婚約破棄もしたくなったら、いつでも、頑張ったら出来るから言ってね!」とか勝手に言っていたが、無視しておいた方が良さそうだろう。

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