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第十三話「ヘッドさん 粋すぎぃ」


「オラあああアアアアアアアあああ!!!」


拳を握り締め、ヘッドへ殴りかかる。

小細工は無く、ただ真っ直ぐに。


ケンカはファーストコンタクトが物をいう。

先手必勝は愚策じゃない。


 しかし、ヘッドはケンカ慣れしている為か、

そんな攻撃をもろともせず、片手で受け止めた。


 

「いいパンチだな。 西戸崎くん」


「へっ? あ、どうも」


「俺のパンチも褒めてくれると嬉しい」



世界がぶれた気がした。

ボクの腹部にヘッドのパンチがめり込んでいた。


いや、突き刺さったといっても過言ではない。

あー、過言かもしれない。とりあえず吐きそう。


今度はヘッドの振るった拳がボクの頬を打ち抜く。

意識と身体と戦意が飛びそうになる。


あ、身体は飛んでたわ。


「ボテーン」と情けない音を立てながらボクは倒れた。

頬がジンジンする。 すごく熱い。 口の中が鉄の味がする。


数秒遅れて激しい痛みが襲い掛かってきた。

倒れたときに強打した箇所も痛くなってきた。

もう嫌だ。 なんでこんなことになったんだ。 怖い。


その時、声が聞こえた。

最近やっと聞きなれた、ちょっとだけハスキーな声。

でも可愛くて、ドキドキする声。



「西戸崎ぃ! もういい!やめろ!逃げていい!!」



砂尾さんだった。

太田氏が口に巻かれてた布をとったのか。

ムームー言ってるのも可愛かったけど。とりあえず良かった。


そうだ。砂尾さんを連れて帰らなきゃ。

その為に来たんだった。よーし、がんばるぞ。


「ごはっ……ごほっ……」


ガクガクと震える膝に手を付き、なんとか一人で立つ。

ヘッドの方を見ると、こちらを真っ直ぐ見つめていた。


ついさっき殴られた感覚を思い出し、

膝どころか身体全体が震えだす。目から涙も溢れ出す。


怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い


そんなボクをみて、周りのどうもりメンバーは嘲笑する。

「だっせー」だの「はずかしいー」だの「イケメーン」だの。


このときのイケメンは2割の確立で煽りだと思った。8割は本心だと思った。


直後、怒号が響き渡った。



「笑ってんじゃねぇよ!!」



ボクも砂尾さんもどうもりメンバーもポカンとしていた。


太田氏はビクッとしていた。



怒号はヘッドから発されたものだった。



「惚れた女を助ける為に俺に挑めるやつがここにいるか?

お前らは特に俺の怖さを十分に知ってるだろうが」


「………」



全員が押し黙った。

いや、ボクもこんなに怖いってしってたらですね。あの、なんでもないです。



「これは"漢"と"漢"の決闘だ。 邪魔した奴は容赦なくグループから弾く」



どうもりメンバー全員が震えた(ように見えた)

ボクはさっきからノンストップで震えていた。

ぷっちんしたてのプリンの3倍の速度で震えていた。


それでもボクはヘッドに向かって歩を進める。震える足で一歩ずつ。

ヘッドの目の前に来たとき、再度拳を振り上げた。


だが、力強いパンチなんて、もう打てなかった。

ヘロヘロで押し付けるような、胸を叩く程度のパンチを繰り出した。


ヘッドは避けることすらしなかった。

ボクは何度も、何度も、ヘッドの胸を叩いた。



「砂尾さんが告白してくれた時、ボクはウソ告白だと思ったんだ」


「……」


「だから、それに対して何も考えることなく、許してくださいって言った」


「……」


「彼女の決心を勇気を、ボクは踏みにじった。彼女を傷つけた」


「……」


「だからボクは彼女にもう一度、違う意味で許してくださいって言うんだ」


「……」


「次はボクが勇気をだす番なんだ。 お前なんかに邪魔させるもんか」


「お前は本当に、"漢"だな……」


ヘッドはそう言いながらボクの胸を突き放すように押した。

フラフラのボクは簡単にバランスを崩し、尻餅をついた。


もう足が「リミットブレイクしとるで」と言っているが、

それでもなんとか立とうと試みる。

あー無理そ。え?あ、いける? あー無理やわ。

なんてことを繰り返しているとき、こちらへ駆け寄る足音が聞こえた。



「西戸崎ぃぃぃ!!」



駆け寄ってきたのは砂尾さんだった。

ボクを守るように抱きしめてきた。フンワリいい匂いがする。

ボクを抱きしめる腕の手首には鎖の千切れた手錠が付いたままだった。


ドンキ産だからなぁ……。

ネジネジしてたらわりとすぐに鎖は切れちゃうもんね……。



「ヘッド、ごめんなさい。 もうグループを抜けるなんていいません。

だからもう……これ以上、西戸崎を傷付けないでください」


「砂尾さんッ! それは……!」


「……うぅ…っく…さい…ざきぃ……」



砂尾さんは泣きじゃくっていた。

ボクの名前を呼ぼうとしたのか、

それとも、即死系の呪文を唱えたのかは定かではない。


それを聞いたヘッドは砂尾さんに対し、問い詰めるような口調で質問した。



「お前、西戸崎くんの頑張りを無駄にしてグループに戻るって言うんだな?」


「……っ……西戸崎がこれ以上傷付くのは耐えられない」


「そうか。 それじゃあ俺の質問に「ハイ」か「イイエ」で答えろ」



ヘッドはもったいぶるように一呼吸を置いた。

「ァィ(゜ρ゜)ノ」か「ブン((-ω-。)(。-ω-))ブン」で答えろ……か。

個人的には砂尾さんの「ブン((-ω-。)(。-ω-))ブン」がみたい。



「砂尾。 お前は銅仏之杜(ドウブツノモリ)のメンバーだな?」


「……くっ……はい……」


「そうか。 じゃあお前メンバーを首だ」


「……え?」


「邪魔した奴は容赦なくグループから弾くっつっただろうが」


「……ヘッド……」


「……早く西戸崎くんと太田くんを連れて出てけ。 金輪際顔を見せるな」


「……ありが……っざい…ます…ヘッド……」










 こうして砂尾さんはグループを抜けた。

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