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第十四話「赤色と橙」 -最終話-


騒動が終わった明くる日。


「太田氏ー、おはー」


「おおーメガネ氏。 おはようですぞ」



パッと見回したところ、砂尾さんはいないようだった。

昨日が昨日だったからね。今日は来ないかな。


カバンから教科書を取り出し、机の引き出しへ入れようとしたときだった。

可愛いハートのシールで止めてある封筒が机の引き出しに入っていた。


その封筒の表には「西戸崎へ」と丸っこい文字で書かれており、

裏には「砂尾より」と書かれていた。


封を開け中の手紙を丁寧に取り出す。

手紙を開くとそこには、「放火後 屋上に来て下さい まってます」

と書かれた手紙が入っていた。


ボクは不審火を放つつもりは毛頭無い。

え?これ誤字?誤字でいいんだよね?

屋上に行った後に、「ちゃんと焼いた? うぇるだーん!」

とか言われないよね? 誤字じゃない方がレアでしょ。 うぇるだーん。


「太田氏ー! 砂尾さん見なかった?」


「見ましたぞ。というより朝一緒にモンシュトしましたぞ 」


「まじかよ。 うぇるだーん」


「うぇる……? いかがした??」


「妬き加減の話をしたのさー」



結局その日、砂尾さんは授業には出てこなかった。

そしてそのまま放課後になった。

ボクは結局不審火に手を染めることは無かった。



屋上へ向かう階段を登る。

フワフワとしていて、なんだか落ち着かない。

首代のところへ行った時とはまた違う浮遊感。胸の高鳴りが心地よい。

超人気ゲームを買いに並んだ時のようなドキドキ感がボクを包む。



屋上のドアの前についた。

深呼吸を一つ置き、ドアノブに手をかける。

グッと引く。開かない。ググっと引く。開かない。

鍵がかかっているんだろうと思い確認したが、

鍵はかかっていないようだった。 立て付けが悪いのか……。


ドアノブを引きちぎらんとばかりに思い切り引くがビクともしない。

これヤバイやつやわ。潤滑油いるわ。オリーブオイルでいいかな。持ってないわ。


などと思っていたら外側からドアが開いた。

砂尾さんがヒョコっと半分くらいだけ顔を出した。


「西戸崎、このドアは押してあけてくれ」



ボクは超人気ゲームが売り切れたときのような絶望感をひっそりと覚えた。




屋上へ出ると、夕日であたり一面がオレンジに染まっていた。

真っ直ぐ前を見ると砂尾さんがフェンスへもたれかかっていた。

酷く儚げで、幻想的な風景だった。



「西戸崎、来てくれてありがとう」


「ははっ、ボクも話したいことがあるからね」


「そうか……」


ボクがハニカミながらそういうと砂尾さんは「にこっ」とも「にやっ」ともつかない顔で微笑んだ。

不器用笑顔がボクの心にグッとくる。 眼帯つけないかな……。



「その前にお礼を言わせてくれ。

太田には今朝お礼をしたが、西戸崎には出来ていなかったからな」


「いやいやいや、そんなそんな、全然全然。ははっ」


そういいながらボクは照れ隠しをした。

いやいやいや、そんなそんな!!


などとしているとき、砂尾さんは両手をグッと握り締め、

ボクの目をしっかりと見つめながら口を開いた。


「あ、あたしなんかと仲良くしてくれてありがとう。

 アホな女3人に絡まれた時、助けてくれてありがとう。

 ネックとヘッドに絡まれても、あ、あたしのことを考えてくれてありがとう」


砂尾さんは目をうるうるさせながらそう言っていた。

あたりは夕日でオレンジ一色なのに、砂尾さんの顔は真っ赤に見えた。


「好きだよ。西戸崎。大好きだ」



目の前がチカチカしたように感じた。

今回はボクも嘘だと思わない。圧倒的な浮遊感で5cmくらいなら浮けそうだった。


「ボクも……ボクも好きだ。 砂尾さん。

前回は受け止められなくてごめんなさい。

 これからはで受け止められるように全力でがんばるよ」


「ふふっ、よろしくたのむ」


「ははっ、こちらこそ」


「ところで西戸崎」


「どしたの?」


「なんでさっきからミッ○ーのものまねしているんだ?」


「してねーよ」



にまにまする砂尾さんがボクの手を握ってきた。ボクはその手を握り返す。

夕焼けに染まるグランドを数秒見つめたあと、

今度はボクらがお互いに見つめ合い、唇と唇が触れ……る瞬間にドア付近で音がした。


そちらを見ると太田氏がいた。

彼はボクらに見つかったと分かると、顔が段々と引きつっていった。

なぜならば砂尾さんが狩人(ハンター)の様な目をしていたからである。


「太田。いつから見ていた?」


「(見て)ないです」


「もう一度言う。いつから見ていた?」


「い、……一部始終ぅ……」



太田氏がそう言った後、砂尾さんはニコリと笑い拳を振り上げた。









夕日が全てをオレンジに染め上げていく。


空も……。

町も……。

屋上も……。


時を同じくして、太田氏も全てが赤く染められていく。


顔も……。

服も……。

屋上も……。





これからボクは大好きな彼女と共に過ごしていく。


過ごしていくのだ。






とりあえずこの物語はここでいったん終わります。

他の連載が一段落したらまた書きたいと思っております。

次回は「シルヴァニア(ファミリー)編」をやろうとおもってました。


ここまで読んでくれた方がいれば本当に嬉しいです。

お時間を割いてお付き合いいただき、ありがとうございました。

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