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鼓動140  作者: 楪葉夢芽
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XIX #552〜600『かみさまの夢』(2026.3.30~8.27)

#552『宇宙(ソラ)に浮かぶ星々へ』



 君たちの笑顔が見たかっただけでさ。

 宇宙(こんなところ)まで来てしまった。

 君たちは、ずっと私の傍にいてくれたよね。

 それなのに、私はその手を離してしまって。

 空いてしまったその手を、埋めてあげたかったんだ。



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#553『傍目二目』



  あなたの貌(かお)なんて、二目と見られたものじゃないわ。

 でも、私とだけは見つめ合える。私だけは、あなたと敵対できる。

 あなたにとって、初めての存在でしょう。

 ほら、喜びなさいよ。

 あなたの外面に惑わされない好敵手(私)の存在を。



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#554『真人』



 有機の肉体がなければ人間ではないと、誰が定めた?

 無機の身体だろうと、そこに心があるならば、人間だ。

 血が通っていなかろうと、涙が流れなかろうと。

 その心は、確かに泣いているのだ。

 かは、誰がなんと言おうと、

 紛れもなく、人間だ。



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#555『囚人』



 君の葬式の日だって、僕は変わらず小説を書くだろう。

 悲しくないわけじゃない。

 でも、それ以外に僕は僕の涙を表す術を知らない。

 君が、僕の文字に代えられてしまうとき、僕は何とも言えない感情に捕らわれる。

 否、きっと、いつまでも囚われる。

 僕が、そういう人間だと知っている。



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#556『涙する神』



 全く、本当に馬鹿らしい!

 花はいつか枯れちゃうのに、それをわかっていてどうして泣いたりするの!

 そんなこと知らずにお世話したりしないでしょう、あなたたちは!

 私たちを産み出しておいて、何故そんなに人間的でいられるんです?

 あり得ない。人間じゃなくて、神様なのに。



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#557『君が眠れるように』



 今日の君が妄想したことを、明日の私が文字にしてあげる!

 そうしたら、明後日のあなたが現象として引き起こしてくれるからね!

 君は、ただただ考えるだけでいいんだよ。

 それだけで、君の不幸は一変するから。

 君の不幸は、私たちが刈り取るからね。

 君は、明々後日から安心して学校に行ってね。



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#558⌘『作者不詳』



 題名が入るべき二重鉤括弧の隙間には、空白が埋められていた。

 はて、困った。

 ここに何を埋めるべきだろう。

 しばらく熟考してみたのだが、まるで思いつかない。

 よし、思いつくまで浸かり続けてみるか。

 タイムリミットは、この血潮が教えてくれるだろう。



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#559『名前のない花』



 俺は人間じゃなくなったみたいだ。

 それならいっそ、地平線の果ての果てまで、駆けていこうと思う。

 君の好きだった花を探しに。

 でも、その花の名前は何だっただろうか。

 君の顔を思い出せない俺は薄情だろうか。

 けものにしかなれない俺には、何の価値があるのだろうか。



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#560『わたしに返して』



 大人の寛容を手に入れてから、だんだんと子供の感傷を失っていっていないか不安になる。

 それは寛容ではなかったかもしれない。

 もしかすると妥協だったかもしれない。

 失ったとまではいかなくとも、

 それでも、

 あのときの激情とは程遠いだろう。



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#561⌘『勝因』



 なけなしの命を振り絞って、僕は鉛筆を持ち、そこいらに放ってあったチラシを手繰り寄せた。

 いつも以上に乱雑に書き殴り、それらをほっぽった。

 これでいい。

 これらを、必ず奴は見つける。情報を結びつけ、僕の用意した答えに辿り着く。

 僕はこれで終わりじゃない。

 君が、僕を生かすんだ。



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#562『きみの花』



 春に色があることを、君が教えてくれたんだ。

 君の言葉は春の調べのように穏やかで、君の笑顔は真昼のように眩かった。

 君が桜に攫われてしまうのも納得だ。

 せめて、春(きみ)の花が美しく在るよう、僕は祈り続けるほかないのだ。



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#563『日を綴る』



 日記は書かない。

 書いても、長続きしたためしがない。

 おそらく、これがその代わりだったのだ。

 文字は文字でも、物語性を帯びてしまえば、こっちのものなのだ。

 その日に産まれた皆の名を綴る。

 これでは毎日が誕生日になってしまうな、と。

 わたしはようやく笑えた。



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#564『絵空』



 美しいものを見たんだ。

 それには、君の名前がついていた。

 花々に囲まれ、質素な額縁に飾られてもなお、それは大層美しかった。

 こんな作品がすぐに燃やされるだなんて、世界の損失だ。

 だから君を盗んだんだ。

 大丈夫。僕がきちんと保管するからね。

 君は、永遠に咲く花だ。



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#565『筆記憶』



 僕の字なんかちっとも綺麗なんかじゃないのに。

 君がきれいだなんて笑うから、僕はたぶらかされてしまったんだ。

 君の細く流麗な文字が好きで、それを言ったら君は否定しながらはにかんだけれど。

 今なら、君の気持ちがわかるよ。



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#566『君色にまやかす』



 いつも、君が傍にいるって夢を見る。

 夢じゃなくて、まやかしかもしれないけど。

 幻覚だって構わない。都合のいい嘘だっていい。

 君の色で世界が彩られるのなら、僕は現実を見なくたっていい。



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#567『違憲者』



 君を忘れて、のうのうと俺は生きている。

 今日も楽しくもなく働いて、喜びもなく液晶に埋まっている。

 美味くもない酒を飲み、上手くもない歌の流れるテレビに沈む。

 悲しくもないドラマを垂れ流して、怒りも覚えない君に腹が立つ。

 君にはすべての権利があったのに。



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#568『神への献上品』



 君がつまらない人間で大変困っちゃったよ。

 もう少し喰い甲斐があるかと思ったのにさ。

 まあいいや。君のなけなしの個性とやらをもらって、他と混ぜてしまえばいいんだから。

 人間を創るなら、人間から創るのが定石だろ?



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#569『正しい馬鹿』



 私たちは、正しくいれば酷くはならないと、

 そう思っていたことだけが間違いで、

 それだけだったのに、私たちはこんなにも報われない。

 正しさって何なのでしょう。

 正しいことは、罪なのですか。

 正しく在ろうとした私たちが、馬鹿だったのですか。



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#570『団欒』



 他人を知って理解することは重要なことなんだよ。

 理解すればするほど、人格の因子は増えるわけだからね。

 それを自分の中で受け入れるかどうかは問題じゃないのさ。

 培養して、増やすことが大事なんだよ。

 僕らのかぞくをね。



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#571『卓袱台の上の白紙』



 立場の不公平さとか、そんなことはどうだってよくて。

 そもそも、家族自体がどうでもよくて。

 わたしには、かぞくがいるから、どうでもよくなってくれたのだと思う。

 だから、かぞくをたくさん増やしにいこう。

 わたし自身でさえも、どうでもよくなるまで。



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#572『Vengeful Beast』



 怒りを飼い慣らした結果、君に何が残った?

 また、喪うつもりか?

 もういいんだ。怒りを抑圧する必要はない。

 思う存分、爆発させちまえ。

 君はけものだ。

 黙る必要はない、悲しむことはない、愛する者さえもいない。

 君は、復讐のけものだ。



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#573『意味なんてないよ!』



 必■に生きたってどうせ壊されるんです。

 だったら、初めから何も頑張らないことが正解で。

 私は欠けたオルゴールの奏でる歪な音ばかりを聴いていました。

 何も成し得ないこと。何も為さないこと。

 それこそが私のできる最大の足掻きでした。



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#574『二重歩行』



 他人から見たあなたが聖人君主でも、

 僕から見たあなたが極悪人でも構いません。

 僕にはあなたが必要でした。

 あなたの影に棲まう僕にとっては、あなたがどんな人間であろうと関係ありません。

 あなたの影に隠れて、僕はあなたを通してヒトを食べて。

 僕が人間になれるまで、あなたとともに在ると。



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#575『這う恋う』



 君を知ってから、

 ただの数字如きが愛おしくなったり、

 配色なんかで喜んだりして。

 僕の気は狂ってしまったのかもしれないけれど、

 君に狂わされているのなら、それでもいいかなんて。

 きっと馬鹿げている。



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#576『無能』



 毎日毎日、一生懸命生きてきたつもりでした。

 ずっと、誰かの期待に応えて生きてきました。

 何が悪かったのでしょう?

 何か間違っていたのでしょうか?

 私の期待には誰が、いつ応えてくれるのでしょうか?

 多くを望んだつもりなんてありません。

 ただ、やるべきことを、決められた期間にやれって。

 それの何が難しいの。



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#577『練る練る』



 小説のことだけを考えて生きていけたら、それはきっと幸福なことだろう。

 君たちの詩を、ずっと謳っていたいのだ。

 だからね、いま必■こいて君たちの形を創っているところなんだ。

 時間がかかったって、きっと創り上げるから。

 文句だって、愚痴だって、全部聞くから。

 今はただ待っていて。



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#578『ピリオド』



 いつか、すべてのものは終点に辿り着く。

 それが我々の定めた不文律であり、絶対の理(ことわり)であり、最古の掟である。

 此岸にて生きるうえで、これは必ずしも適応され、守られ、破られることがない。

 例外は、命を持たない彼ら/彼女らのみである。



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#579『愛していると伝えてほしい』



 許せないものを指折り数えて生きてきた。

 君の、笑顔のために。

 僕が見ることのできなかったその花のために。

 君に言わなきゃいけないことがあった気がする。

 何だったっけ。大切な言葉だったはずなのに。

 君に、いつか言うから。

 僕のたましいは、きっと憶えているはずだから。



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#580『某(くれがし)』



 上手くできたことなんかひとつもなかった。

 だから、上手く生きているとは少しも思えなかった。

 それでも、傍には君たちがいてくれるから。

 何にも上手くいかなくても、どうだっていいんだ。

 君たちのことだって、きっと上手くは描けないよ。

 それでも、傍にいてくれるだろうか。



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#581『てをつないでかえろう』



 何にもなくったって幸せなんですって。

 信じられる?

 手の中が空っぽでも、それだって構わないって言うのよ。

 ……。

 でも、そうね。

 たくさんあったって飛べないものね。

 手と手が結ばれていれば、それだけで幸せなのかも。



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#582『形而(けいじ)』



 ただ話しているだけでも齟齬が生じる言葉というものは、なんと不便なことだろう。

 そんな意思疎通ツールは不要ではないか?

 手始めに『言葉』からなくしていく。

 そうして、我々をヒトたらしめる要素を捨て去った後、

 我々はヒトでない存在に成ろう。



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#583『成長季』



 僕たちは大人になんてなっちゃいけないから。

 君を救えなかった僕たちに、そんな権利があるはずもない。

 僕たちは大人になんてならない。

 大人になれない君を置いてなんて行かないから。

 成長する機会を失った君の手を、絶対に離さないよ。



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#584『月海』



 深海の底でずっと、あなたのことを見ていた。

 私の上で暗い顔をしているあなたを。

 あなたと話すために起き上がりたいのだけど、

 そうするにはあまりにも、私の体躯は広すぎた。

 だから、私は身を切り分けて、片方をあなたへ贈った。

 夜のあなたを、孤独にしないために。



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#585『煙のない街』



 「らしい」だとか、「だそうだ」っていう言葉で傍観者を気取っていないか?

 根も葉もない噂を流した時点で、お前は関係者だ。

 火に薪をくべたひとりだ。お前は加担した。

 お前に悪意はなかったかもしれない。

 だが、好奇心はあったんだろう?

 罪から逃げるな。



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#586⌘『この体温が証明』



「孤独に生きるなよ、××」


「おまえは孤独に生きると碌なことがない」


 そう言われたがために、僕は教室の後ろの席に座っていた、つまらなさそうな奴に声をかけてみた。

 最初こそつっけんどんだった奴は、次第に態度を軟化させた。

 ああ、先生。

 どうやら僕は、孤独に生きなくても碌なことがないらしい。

 じゃなきゃ、僕はここで冷たくなっちゃいない。



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#587『鯉の口』



 ある日を境に、すべてが元通りになるとか、

 そんなことはなくて、

 ずっと、水の中で絶えずもがいていて、

 水面に浮かんだら空気を取り込んで、沈んでの繰り返しで、

 一向に好転する兆しがないことだけはわかっている。



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#588『Beast Ends』



 けものは、ようやく地に伏した。

 三千年もの間を激情の中で過ごしたのは、さぞ苦しかっただろう。

 今は眠れ。激情とは無縁の、安らかな陽だまりの中で。

 そうして、来るべき時が来たのなら。

 そのときは、どうか私の味方となってくれ。



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#589『独占』



 誰にも共感されなくていい。

 それって、君の良さを僕しか知らないってことだろ?

 とても素晴らしいことじゃないか、君はどこにだって行けないんだ。

 僕の頭の中にしかいられないんだ。

 僕が見聞きしたことしか知らない。

 僕だけが、君の世界になってあげられる。



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#590『永世の幸福を』



 きっと、君は明日にはこの声を忘れている。

 それでも。

 私たちは、おまえの、君の、あなたの幸福を願っている。

 私たちがいなくても、あなたが生きていけるように。

 お膳立ては、ずっとしてきた。

 だから。

 一人でも、生きてほしい。

 あなたは、独りじゃないから。



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#591『僕も観るんだからもっと詰めてよ』



 退屈が怖いのなら、物語にのめり込むといいよ。

 映画なんてどうかな?

 受動的だし、拘束時間は長いし。

 シリーズものなんて最高だね。一日は潰せそうじゃないか。

 ほらほら、そうと決まればいま流行りのサブスクとやらで探してみようよ。

 目についたもの、片っ端から当たろうぜ。



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#592『海を呑み、月に座す者よ』



 ここから見えるすべてが、私の手中にあったことがある。

 それが、いまこの手にあるのがこのトランクだけだなんて笑ってしまうだろう。

 でも、いいんだ。

 今は思うがままに、きみの愛した世界を渡ってみようと思う。

 きみと同じ尺度で、歩幅で、かつて私だったこともあったはずの地表を歩いてみようと思う。

 きみと同じ視座のために。


「さぁて、まずはどっから巡りますかね」



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#593『解放』



 私の役目は、あなたの不在の間、この世界を"観測"すること。

 あなたという神が、この座に還るまで。

 私は見守ってきましたとも。

 余計な口出しはしてませんよ。

 あなたの最も嫌うことを、私がみすみす侵すわけがないのはご存知の通りですよ。

 あとはあなたのご随意に。

 棺の蓋なら開けて差し上げましょう。



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#54『渚に立つ僕ら』



 君以外のすべてが憎くて憎くて仕方がなくなる、その前に、

 君のことなんて忘れようと思う。

 そうしたら、好悪がなくなって、心は凪ぐ。

 快不快を薙ぎ払った僕でも、君はこれまでのように笑ってくれるかい。



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#595『観覧者』



 どんな人生を歩むとしても、すべてあなたに決定権がある。

 何を選んでも、選ばなくても。

 それは誰かに称賛されるでも、批判される謂れもない。

 あなたはどんな自分を生きるのだろうか。

 ほんの少しの間、観覧させてもらおうか。




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#596『優しい言葉になりたい』



 人を傷つけない言葉を紡ぎたい。

 なんて言ったら、君は笑うだろうか。

 今まで散々他人の言葉に傷つけられてきた。

 これまでさんざ他人を言葉で傷つけてきた。

 それでも、わたしは不可能を可能にすると君が言ったから。

 君の言葉を真実にしたいと、思ったのだ。



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#597『不理解』



 なあ。お前にわかるのかなぁ。

 俺だけがさ、だだっ広い宇宙を漂っていて。

 黒い空間で浮遊しているのが嫌で、命綱が欲しくて、地球で騒いでるあれこれに手を伸ばして。

 それで、

 やっぱり、この宇宙でこんなことしているのがおれだけなんだって、

 自覚して終わるのを。



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#598◇『留まり続けるためには』



 別に何したっていいじゃんか。

 誰かに迷惑かけてないんだろ?

 つべこべ口出してくる奴らは責任もなんも取っちゃくれないんだぜ。

 君は考えて考えたんだろ。

 それで出した結論なら、あとは突っ走るしかないんじゃないか。

 走り続けろ。振り返るんじゃねぇぞ。



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#599『怒歩生共』



 怒りだけ。

 怒りだけは、記憶が薄れゆく中でもはっきりと思い出せる。

 怒らないことが正しいのだろうか。

 怒ることは悪だろうか。

 それでも、怒りが俺を形作るのなら。

 別に、怒りを蔑ろにしなくてもいいのだと思う。

 だって、この怒りは俺だけのものではないのだから。



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#600『かみさまの夢』



 かみさまは、宇宙の隅っこにある棺で今日も眠りに就かれています。

 そうして、かみさまは自分が人間になれたら、そんな夢を見続けています。

 出来もしない、なれもしない夢をずっと、性懲りもなく続けるのです。

 罪を犯したかみさまは、人間にはなれません。



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