7/11
誕生日
いつからだろう。
誕生日が、嬉しくなくなったのは。
カレンダーに印をつけることはなくなった。
当日になって、スマホの通知で思い出すくらいでちょうどいい。
「おめでとう」というメッセージが数件届いて、
その一つひとつに、少し遅れて「ありがとう」と返す。
昔は違った。
誕生日は、何かが起きる日だった。
プレゼントがあって、ケーキがあって、
今日だけは特別だと、はっきり分かる一日だった。
今は、特別にしなくても困らない。
むしろ、普段通りで終わってくれた方が助かる。
年齢を口に出すと、場の空気が一瞬止まる気がするからだ。
増える数字を、数えたくなくなった。
減っていくものを、無意識に比べてしまうからだ。
それでも、誕生日が嫌いになったわけじゃない。
ただ、祝われるより、静かに通り過ぎてほしくなっただけだ。
一日が終わって、いつもと同じように風呂に入り、
いつもと同じように布団に入る。
日付が変わる前に目を閉じる。
特別なことは、何もなかった。
でも、今日も無事に終わった。
誕生日が嬉しくなくなったのは、
生き延びてきた時間が、ちゃんと重なってきたからだ。
そう思えるようになったのも、
たぶん、最近のことだ。




