表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いつから  作者: 仙道 神明


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/11

生きた証

いつからだろう。

「いつからだろう」と、考えるようになったのは。


変わったことを、ひとつずつ数えるようになった。

大盛りを頼まなくなったこと。

夜更かしをしなくなったこと。

知らない番号に出なくなったこと。

約束を先送りにするようになったこと。


実家に帰らない正月があって、

親の背中が小さく見えて、

誕生日を静かにやり過ごし、

妻と手を繋がなくなった。


そのどれもに、はっきりした境目はなかった。

ある日突然、変わったわけじゃない。

気づいたときには、もうそうなっていた。


昔は、「いつからだろう」なんて考えなかった。

今しか見ていなかったし、

先のことも、深くは考えていなかった。


振り返るようになったのは、

たぶん、立ち止まれるようになったからだ。

走り続けなくても、大丈夫だと思える場所に、

いつの間にか来ていた。


変わったことを数えるのは、

失ったものを嘆くためじゃない。

ここまで来た道を、確かめるためだ。


若い頃は、前しか見ていなかった。

振り返る必要がなかったし、

振り返る時間もなかった。


今は、歩く速度が少し遅い。

立ち止まることも増えた。

先の景色より、来た道の方が、

よく見えるようになった。


「いつからだろう」と思うたび、

その答えは、たいてい曖昧だ。

でも、それでいいのだと思う。


人生のほとんどの変化は、

始まりも終わりも、はっきりしない。


気づいたときには、もうそこにあって、

気づかないうちに、通り過ぎていく。


それでも、こうして振り返れるということは、

ちゃんと時間を生きてきたということだ。


終わりが見え始めた今、

思い出すのは、

大きな成功でも、派手な失敗でもない。


大盛りを頼まなくなったこと。

夜を引き延ばさなくなったこと。

誰かと、手を繋がなくなったこと。


そんな些細な変化の積み重ねが、

この人生だった。


「いつからだろう」と考えるようになったのは、

人生が、ちゃんと自分のものになったからだ。


そう思いながら、目を閉じる。


変化を数えられるのは、

ちゃんと生ききった証だから。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ