表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いつから  作者: 仙道 神明


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/11

腹八分

いつからだろう。

定食屋で“大盛り”を頼まなくなったのは。


券売機の前で、指は一度だけ「大盛り」のボタンの上を通過する。でも、結局押すのは「並」。それがもう、ずいぶん長い間の習慣になっていた。


昔は違った。腹が減っていようがいまいが、とりあえず大盛り。食べきれるかどうかは問題じゃなかった。残すという選択肢が、そもそも頭になかったのだ。


理由をつけるならいくらでもある。

胃もたれするとか、午後眠くなるとか、夜に響くとか。

でも本当は、たぶん知ってしまっただけだ。無理をすると、あとで自分が困るということを。


ラーメンの汁も、全部は飲まなくなった。

「体に悪いから」と言いながら、レンゲを置く。昔の自分が見たら、きっと怒るだろう。あれだけ「スープが本体だ」と言っていたくせに、と。


それでも不思議と後悔はなかった。

満腹になるより、ちょうどいいところでやめる方が楽だと、身体が先に覚えてしまったのだ。


大盛りを頼まなくなった日を、正確には覚えていない。

最後にスープを飲み干した日も、きっと覚えていない。


ただ、確かなのは。

そのどちらも、何かを失った瞬間ではなくて、

これからの自分と折り合いをつけ始めた、最初の日だったということだ。


並盛りの定食は、今日もちょうどいい。

少し物足りない気もするけれど、それくらいが、今の自分には一番うまい。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ